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「幻肢痛」

「幻肢痛」(小谷野敦/「文学界」2月号)

→最新の純文学とやらをひさびさに読む。ストーリーラインは3つ。
1.煙草をやめたはいいけれど、結局、ニコチン中毒は治らないという愚痴。
2。血便が出たので痔か大腸がんかえんえんと迷い、
思い切って内視鏡検査を受けるが結局がんではなかった。死にたくないよう。
3.著者が関係した人たちへ日々感じた不満の吐露。

病院通いは長いけれど、夫婦で一緒に来る老人というのがわからなかったが、
なるほど、こういう不安を感じて来るのかという発見があった。
ひたすら著者が20歳以上年下の奥さまに依存しているのである。
死への恐怖、病気への不安が強いからだろう。
わたしはずっと孤独だったからわからなかったことでもある。
緊急入院は2回したけれど、
姉の手伝いを入院時に借りただけで、あとはぜんぶひとりでこなした。
板橋中央総合病院で入院中、左腕に点滴をつけながら、
寒空の中、屋外にて右手だけで洗濯をしたときの悲哀は忘れられない。
たった2泊3日の入院で大騒ぎする著者の弱気は日頃見せる尊大な態度とは大違い。
笑ったと書いたら失礼になろう。

大腸内視鏡検査をしてから、結果が出るまでの、
「大腸がんではないか?」という極度の不安は子供のようで、
奥さまにママのようにすがりつく老醜はあわれこの上ない。
憫笑を禁じ得ないというやつだ。
経験していないからだろう? と言われるかもしれない。
いな、である。わたしの場合はもっとひどかった。
板橋中央総合病院の鈴木医師から「8:2でがんだね」と言われおなじ検査をした。
著者の病院は痛み止めを打ってくれたそうだが、
板中はいきなりぶちこんでくるので、痛みで泣き喚いた。
で、著者とおなじように3週間の結果待ちである。
「8:2」でがんとか言われているわけだ。
結局なにもないと言われても医者への恨みは消えなかった。
しかし、あのくらいの不安であまりにも大仰に嘆き過ぎでは?
どうしてそんなに長生きしたいのか、まるでわからず。

どこまでも他人には厳しい男のようで会う人、会う人への不満を書き連ねている。
「自分がルール」の人なのだろう。あまり関わりたくない人も少なからずいよう。
感謝はしないが、クレームだけは一丁前。
他人の立場からものを見られない人のようだ。もうこの年齢では治らないだろう。
たとえば、自分の講義遅刻は謝罪しないで、学生のホチキスとめ忘れには大幅減点。
精神科に通い、強い睡眠薬のハルシオンとサイレースをダブルで飲んでいるのか?
こういう人もおられると今度、うちの主治医に話してみよう。
それにしても、血便以外にも些細な疾病を気にしすぎている。
生きづらいんだろうなあ。いちいちネットで調べているが、
あれは調べれば調べるほど不安が増すからやめたほうがいい。

新人賞に出したら、まず下読みに落とされるだろう。
なぜなら、だれも赤の他人の健康にあまり興味を持たないからだ。
みんな自分のことで手いっぱいなのだよ。
「もてない男」の末路は以下である。

「久しぶりに性的な夢を見て、
その時ふと目覚めて自分が勃起していることに気づいた。
病気になってからは絶えてないことだったから、
昼間試してみたら射精した
(もっとも勃起なしの射精ならいつでもできた)」(P183〉


まだ印税が入るのだろうか?
貧困恐怖がときおり語られるが、ひんぱんにタクシーに乗ることに驚いた。
住居以外にも埼玉に書庫専用のマンションを購入したとのこと。
あれほど嫌っていたロレックス修理屋だったお父さまの実家を売った金でだ。
ネットで高額購入した1等席で、
歌舞伎を奥さまと見に行くさまは、まるで現代の文化貴族夫婦。
つくづく不遇ぶるのが好きな人である。
もう奥さまに完全に依存しきっており、愛妻がいなくなったらなにもできないようだ。
奥さまの葵さんが若い男と好き合い逃げてしまい、
ひとりきりで「勃起なしの射精」をみじめにも繰り返す――
本当の絶望を味わった著者の私小説を次回は読みたいものである。

ニコチン中毒者による吹けば飛ぶように軽い闘病物の悪口身辺雑記であった。
最後にメッセージを送りたい。

「煙草、吸っちゃいなさいよ!」

どうせいつ死ぬかわからない。小谷野敦さんも刺される危険性がないとは言えない。
宮台真司のように空手をやっていないでしょう? いつどうなるか?
ヘビースモーカーの倉本聰なんて90歳近いのにまだ生きている。
どのみち死ぬのだ。好きなように生きたほうがいい。依存症は治らない。
さてまあ、健康や長生きを目指す作家がいてもいいが、
それを書いたとしてだれが興味を持つのか?
最後にどうでもいいわたしのことを書くと、
サイレースもろもろをのんでも中途覚醒してしまい、
ノンアルコールビールを飲みながらこれを書き飛ばした。
今朝9:30に5回目のコロナ・ワクチンを歩いて3分の病院に受けに行く。
どうやら名作を読んだ興奮で眠れなくなったようだ。
しかし、生に執着する老醜というのは実にけがらわしいものだ。そこをうまく描いている。

せっかく「文学界」を買ったのだから他の最新純文学も読んでみたい。

COMMENT

ふふふ URL @
01/19 10:06
. 奥さまの葵さんが土屋ケンジという男と逃げてしまい、
ひとりきりで「勃起なしの射精」をみじめにも繰り返す─
そういう展開が見たいので
ヨンダ先生、がんばってください。
Yonda? URL @
01/20 21:44
ふふふさんへ. 

いやいや、葵さんが僕なんかに振り向いてくれるはずがないじゃないですか!
ふふふ URL @
01/21 10:49
. 小谷野敦さんのようなチンチクリンの年寄りも、本来なら葵さんが振り向くような男じゃないでしょう! 顔も身長も土屋先生のほうが上ですよ!








 

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