「不安でたまらない人たちへ」

「不安でたまらない人たちへ」(ジェフリー・M・シュウォーツ 著 /吉田利子訳/草思社)

→音恐怖症である。騒音廃絶活動家でもある(苦笑)。
音にひどく敏感。拡声器を嫌悪している。音楽を流す物売りも大嫌い。
1年前くらいまえにかかった病である。
病気なのかは実のところ不明。自分勝手なだけかもしれない。
いくら調べても、この音恐怖症、騒音過敏症について書かれた書籍はない。
うるさい哲学者、中島義道の著作は、病気をかえって悪化させる禁書だと思っている。
わたしも中島義道のように何度も騒音元と喧嘩をした。無益な闘争であった。

1年前に突然、罹患(りかん)したのである。
ならおなじように突如として治ってもいいはずである。
病識はあるのだ。じぶんがおかしいとわかっている。
ふつうのひとは騒音などたいして気にしていない。かつてのわたしもそうであった。
どうしたらむかしに戻れるのか。

だが、問題ではないか。この症状にまだ病名すらついていないのである。
「わがまま」「神経質」「耳がいい」「キチガイ(かる〜く)」。
さしあたってはこのような表現が一般では使用されていると思われる。
いかにすればこの困った状態からぬけだせるか。日夜、あたまを悩ませている。

本書はアメリカの一般向け医学書。OCD対策の実践マニュアルである。
OCDとは「Obsessive Compulsive Disorder」。
日本語は「強迫性障害」。かつては「強迫神経症」とよばれていた。
手を何度も洗わないと気が済まない。
カギや蛇口を何度もたしかめる。
物事が偶数でないと気になる。
順序だてた個人的な儀式を正確に行なうまで外出できない。
こんな症状で知られる。あのサッカーのベッカムもOCDだという。

わたしの病気もOCDではないかと、この書物に救いを求めた。
読み始めてすぐに気づく。これはアメリカ版の森田療法である。
森田療法は、大正時代に精神科医の森田正馬(まさたけ)が創始した神経症の治療法。
アメリカでの神経症の治療は、薬物療法と精神分析がメイン。
この書籍が画期的だったということは、
ようやくアメリカが日本に追いついたということである。

森田療法と、本書の四段階方式を比較する。

【森田療法】
1.不安が生じる。
2.この不安を「あるがまま」にする(強迫行動をしない)。
3.不安を「あるがまま」にしながら「目的本位」で実践する。
4.「不安常住」とあきらめ、成功体験を積み重ねる。

【米国流四段階方式】
1.不安が生じる。
2.この不安はOCD(脳障害=医学的疾患)なのだとラベルをはりかえる。
3.関心の焦点を移し、建設的な楽しい活動をする(15分間、不安に耐える)。
4.不安が実際は無意味であると価値の見直しをしていく。


アメリカと日本のちがいがおもしろい。
比較してわかるのは、アメリカの科学万能主義と成功哲学流儀である。
森田療法では不安の原因を追究しない。
かつての米国は、この不安を解明するためにフロイトの泥沼にはまったわけだ。
ところが、いくらフロイト流の精神分析をしてもOCDは治らない。
ここで不安を「あるがまま」にしないで科学をもちだしてくるのはいかにもアメリカ的。
OCD状態にある脳を調べると、通常の脳とは異なるという結果がわかった。
フロイトがダメなら科学にすがるのがアメリカである。
科学を信じているものほど、この実践的治療法は効果があると思われる。

不安が生じる。
この不安をOCDと名づけることで、不安を軽減しようという作戦である。
客体化するとい言いかえてもいいかもしれない。
不安にOCDとラベルをはる。乗り越えるべき敵の登場である。
ハリウッド映画の世界ではないか。
この敵を倒すためには、関心の焦点を移す。たとえば趣味の世界へ没入する。
最後は価値の見直し。ポジティブという言葉がふさわしい。
前向きで多趣味なアメリカンビジネスマンは万病を排するとでもいうのか(笑)。
おっと、笑っている場合ではない。
この米国流四段階方式はマクドナルドで育った現代日本人には、
なまじ森田療法などよりよほど効果があるかもしれない。

「だいじなのはどう感じるかではなく、何をするかである」(P41)

森田療法と米国流に共通するポイントである。
感じる不安を、森田は「あるがまま」に、米国流は「O C D」とラベルをはる。
そのうえで行動を重視しようではないかというのである。

米国流を実践してみる。

1.騒音が聞こえてくる。いらいらする。文句を言いたい。
2.これはOCDだ。脳障害なのだとラベルをはる。克服すべき対象である。
3.15分間、騒音を我慢しながらそれまでの行動を継続する。
4.騒音で命まで取られるわけではないことに気がつく。騒音を無意味化する。


うん、これだ〜! さっそく試してみなければ。
本書でおもしろかったこと。
15分間の我慢をできたら、自分にご褒美をあげるといいらしい(P138)。
著者はヨーグルトやアイスクリームを推奨している。甘党なのだろうか(苦笑)。
このやりかたもギブアンドテイクとでもいうのか。なんともアメリカ的である。

(参考)「OCD研究会」↓
http://www.ocd-net.jp/index.html

COMMENT

- URL @
09/25 17:21
管理人のみ閲覧できます. このコメントは管理人のみ閲覧できます
Yonda? URL @
09/25 21:30
ピープルさんへ. 

管理人のみ閲覧可能のコメントにお答えしていいものか。
毎回、迷います。
不都合がございましたらご指摘ください。削除します。

わたしの病気はストレスゆえの神経過敏。
表現志望者なら、かえって好条件とのご指摘。
なるほど、そうかもしれません。
この騒音恐怖症は、栄光への第一歩かも!
新たな視点でした。
慰められ、かつ、励まされました。
ありがとうございます。
ピープル URL @
09/25 23:18
+に捉えて貰って嬉しい. ご返事、ありがとう

Yonda?さん、初めて書き込んだので防衛本能が働き限定閲覧にしてしまいました。

マルセル・プルーストは、宿泊しているホテルの部屋以外に、それを中心とする前後左右の部屋を貸りて執筆に励み『例の長い長いヤツ』を書き上げたそうですね。
ピープル URL @
09/25 23:30
. 前後ではなく上下だった。

あとは、言わぬが花。
Proustと同じ悩みを持つ、あなたよ。

Yonda? URL @
09/26 06:19
ピープルさんへ. 

へえへえへえ。プルーストがですか。
神経質なひとって、はたから見ると笑えますよね〜。
本人はたいへんなのでしょうが。
いえ、たいへんなのでした。
思わず、本人であることを忘れていました……。
あや URL @
05/30 11:26
. comment
わたしも騒音恐怖症です。
騒音が聞こえると動悸がします。
いてもたってもいられません。
幼いころからです。
克服したいですね。
Yonda? URL @
05/30 23:51
あやさんへ. 

ああ、ここにも同志が!
騒音、耐えられませんよね。
わかります、わかります。
わたしはいつか治ると信じています。

あやさんのご回復、祈っています。
もし改善なさったらご一報くださいませ。
励みになりますから。
コメント、ありがとうございます。








 

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