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「百万円と苦虫女」

なんの事前情報も得ず、
ただジェイコムの番組表を見てなにげなく視聴した2008年作品。
まったく期待しないで見たのがよかったのかもしれない。
友人がいないため携帯電話を持たない短大卒の子(蒼井優)が、
家を飛び出して海や山や地方都市とふらふら気ままに移住して、
ゆる~くそこで働いてはめんどうくさくなって出ていっちゃう物語。
これはたぶんこの監督にも女優にも人生で1回しか撮れない大傑作だと思う。
女性目線で新しい女性像を実に巧みに、そして美しく描いている。
蒼井優の映像作品をはじめて見たがこの子はこの時期、神に愛されていた。
若いころの田中裕子によく見ると似ている(ドラマ「想い出づくり」時代)。

どうせ女だし友達もいないし短大出で仕事もないし、
それなりに男は寄ってくるけれどめんどくさいなあ、
と思いながら、こういうものかなあ、なんて思いながら。
困ったような顔をし男友達と軽い気持でセックスをしちゃう。
でも、振られたかなあ、なんて思うと、また苦虫をかみつぶしたような、
しかし諦観微笑をしながら町を出ていく。
こんなものだなあ。
こんなもんかよ。
こんなんじゃないのに。
という気張ったところのあまりない女性の自然体を
蒼井優は実にうまく表現している。矛盾を苦虫顔でうまく出している。

10年まえに見たらくだらないと怒ったが、
いまはこの作品の現代的でしかし永遠の美に打ち震える。
どうしようもないけれど、でも笑っちゃおうという蒼井優がすばらしい。
これは男性目線ではなく女性目線。
携帯も持っていない孤独な、
自分に自信があんまりない女性っていいよなあ。
人間関係めんどうくさいって、ふらふら放浪しちゃう蒼井優の、
たとえれば川に流れる水っぽい感じ。水臭いのではなく、水そのまま。
口からそっと入ってくる無味で無防備な天然水みたいな女性の魅力を、
この作品の映画監督と蒼井優はうまく表現している。
これはもう一生に一度のミラクルムービー。

そのままを味わえ、としか言えない。
視聴後、予告編を見たらひどいのよ。
この映画はこうして見ろと言語で定義している。
言葉のちからは強いから、その言葉の枠内で映画を見ちゃうとダメね。
そうじゃないまっさらなこころで見ると、
蒼井優のナチュラルなビューティー、少女的なためらい、
どうせ男性社会なんだろうファックユー!
というふてぶてしい静かなたたずまいが、
まったく自然に男性のこころにも入ってくる。
言語以前のなにか新しいものをこの映画は描いている。
圧倒的に女性にしか支持されない映画だろうが、僕はこの作品が好きだ。
静かな怒り、恥じらい、ためらい、不敵、やさしさが丁寧に描かれている。
女性運動の新たなちからにはならないが、
そこがかえって男性性を消していて、
なんかあきらめた感じの蒼井優がいい。
でも、笑っちゃおうっていう最後のノリも。
本当にいい映画を見ましたね。

ふつうに自然体に、なににも逆らわずに自由に生きる――蒼井優。
映画の中にしかいない虚像だろうが、
この作品は新しい女性像をしっかりと描いている。
「ホワイティ―な彼女!」蒼井優の、
戸惑った自己主張のないうっすらとぼけた顔がかわいかった。好きだなあ。

COMMENT

とおりすがりのいちのせ URL @
02/25 13:27
. 例の「10年くらい前の女性監督の映画」って、これですか?
Yonda? URL @
02/25 19:39
とおりすがりのいちのせさんへ. 

そうですけれど、感動をうまく伝えられていません。
そのうえ「私」が思い入れを込めて見たので感動しただけで、
おそらく他の人が見ても「つまらない」と思うような気がします。
ご自分の感動作が見つかるといいですね。
とおりすがりのいちのせ URL @
02/27 09:47
. 映画は(映画じゃなくても)、他の人と感覚が違っていてショックを受けることってありますよね。(それが原因でケンカしたりねぇ)
今はツチヤさんの映画評に影響を受けているだろうから、忘れたころに、私も観てみたいと思います。
Yonda? URL @
02/27 15:50
とおりすがりのいちのせさんへ. 

見なくていいっすよ、ほんと。








 

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