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「悦楽王」

「悦楽王 鬼プロ繁盛記」(団鬼六/講談社文庫)

→病院で日給クラスの高額料金を支払い、
心霊写真のようなCT画像を見せられて、
「僕は素人なんで、そんなことを言われてもチンプンカンプンです」
と2歳年下の外科医に物申し損をした気分でお会計をして、
あとどのくらい打てるのか出玉いくざんと銀行に寄ったら、
残金が微量ながら増えており、そういえば働いていたっけ?
と過去を振り返り、お金、お金と鼻歌を歌いながら、
すっかり気分をよくした僕は赤羽の立ち飲み屋「いこい」に行き、
今冬最初となる「あんきも」「白子」(200円!)を注文しながら、
吃音症のため同様に好物の「なめろう」は頼めず、
しかしながらひさびさの酒を愛するつまみと満喫したのであります。

「あんきも」や「白子」「うに」「塩辛」は好みがわかれる。
大衆魚の「さんまの刺身」のようなわかりやすさがない。
刺身の「かつお」がまずいなら「まぐろ」もどうだかって話。
「たこ」は唐揚げにするのがいちばんうまい。
酔いどれ気分で生きてきて、
気づけば余命が推し測られる健康状態になったが、
人生最後に行き着くのは快楽や悦楽である。それが生物学的正解である。
動物の答え。アニマル・アンサー。
ブログの記録を見ると、
先日まで某電脳大手通販会社の倉庫で働いていたようだが、
そのときはおそらくそれが快楽であり悦楽であったのだろう。
「あんきも」「白子」「うに」だった。
倉庫は快適だった。
絶対、こいつ人を殺したことがあるだろうという面相のおっさんが、
仕事もできないのに300円も多く時給を取っているこちらに怒鳴ってこない。
若い女の子が時給1200円のトレーナーで、
いまの地位にそこまで疑問を抱いていない。

ああ、窮屈だ。パーッとやらないか。
パーッとやらないかというのがSM作家の団鬼六である。
パーッとやろうぜ。
尿酸値や肝機能なんて気にせんで、
レバ刺をたらふく口楽しながら、あたまがバカになる酒をしこたま口悦せよ。
ア○ゾン川口喫煙倶楽部では
ちかぢか飲み会が開かれるそうだが、それでいい。
酒でも飲み散らかして不満を言ってパーッとしよう。
倉庫のうえのほうだって、大した給料を取っていないし
(ア○ゾン研究家の大学生のMくんいわく5、6百万)、
あいつらだってエスカレに縛られまくりで、
自分の意思なんか通らない。
だから、わたしのようなクズもうえからのエスカレで働けたのだが、
それはちょっと大きな声では話せないことかもしれない。
ア○ゾン労働は快適だったが、それがいいのか悪いのかわからない。
変なやつがいないのである。
SMのパイオニア、団鬼六はいう。

「奇人変人に興味を惹かれるという事は
それだけ私は真面目人間が嫌いだという事になる。
世の中には性的な変人も多いが。
心理的な変人はさらに多いのである。
しかし、そうした変人の中にこそ豊かな人間性が感じられることがまた多いのだ。
そうしたアブノーマルな部分を掘り下げていくと、
人間とは一体何かという不可解さが生じ、
奇怪な密林地帯に彷徨(さまよ)った感じになるのである」(P26)


大衆、庶民は奇人変人ではないから大衆、庶民なのである。
大衆、庶民が好きなのは「男はつらいよ」の寅さんこと渥美清。
一部では東南アジアへの
ロリ買春悦楽三昧で有名だった変態性欲者(児ポ相手にだけは言ってもいい)、
渥美清とSMポルノ作家の団鬼六は交友があった。
「男はつらいよ」の渥美清は、
よく団鬼六の大豪邸、庭つきの広いお屋敷に来て、
近隣の庶民、いわゆる大衆を呼び集めて説話をしたという。

「渥美清はそうした近所の人々に所望されれば、
寅さん映画撮影中の珍談も語ったが、
近所の人達の生活体験というものを聞きたがった。
寿司屋や酒屋、ソバ屋などの苦労話を聞くのを好み、
また、聞き上手であった。
なる程、わかる、とうなずき、
そして次には面白い合いの手を入れて、一座をわかした。
そうした庶民の生活体験や生活感情が、
彼の芸の肥やしになるのかも知れない。
渥美清は、こうして見知らぬ人々をむしろ歓迎するように集めて、
賑やかに騒ぐのが好きなようで、また一方では、
たえず隔離された寂しさを求めているようなところがあった。
渥美清の喜劇の本質というのは、
そんなところにあるのかも知れない。
だから、『男はつらいよ』の寅さんが、
彼の生涯のはまり役だったともいえるだろう」(P130)


――と、このように団鬼六は渥美清を評しているが、
SM作家のほうは寅さんからなんと言われたか。
渥美清はSMポルノ作家の団鬼六にこう言ったという。

「文学作品とか芸術作品といったものは別にあなたがやらなくたって、
この世にやる人はワンサといますよ。(……)
正直いって、僕だって寅さん映画が売れるから次から次に出演しているんです。
そんな役者でいいのかと自分で疑問を持った事は何度もあります。
自分の可能性を自分が狭(せば)めているんじゃないかと思いました。
しかし、役者とは大衆に支持されるものなら、
どんどん出演すべきだと思います。
大衆に悦ばれ、支持されるものに出演するという事、
これは役者冥利に尽きるものです」(P124)


求めるものは快・楽・悦。だから、求めるものは快・楽・悦。
マゾ的な快楽も悦楽も当然あっていい。あってしかるべきである。
朝7時まえから川口駅前で行列するのもある意味、快楽、悦楽である。

COMMENT

雲海酒造 URL @
01/19 16:04
. 「出玉いくざん」の意味がわからん。タイポ?
Yonda? URL @
01/19 16:57
幾山. 

幾山
雲海酒造 URL @
01/19 17:16
. 解説サンクス。でも「いくやま」と読ませるのが普通かもね。

「アルペンの幾山(いくやま)なみのつたはりて奥処(おくが)を知らぬ山のかたまり」(茂吉)








 

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