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「読む力・聴く力」

「読む力・聴く力」(河合隼雄・立花隆・谷川俊太郎/岩波商店)

→15年まえはインターネット社会の到来で、
バラ色の未来が訪れるような幻想があったんだなあ。
少なくとも立花隆と谷川俊太郎はそう思っている。
立花隆はとくに集合知のインターネットに愚かな希望を見ていた。
ネットなんてバラ色でもなんでもないけれど、もう引き返せない。
駅のなかをみんなスマホを見ながら、
イヤホンして歩いてる日本を3人のうちだれが想像したか。
グーグルで調べて、ア○ゾンで買って、ツイッターやラインでつながる。
立花隆の脳内お花畑状態は、いまから見ると笑える。
ネットで世界がいい方向に変わると無邪気に信じている。
根拠は要するにインターネットは無限の書庫みたいなものだろうということ。
河合隼雄だけはネットにあまり肯定的ではない。
なにかをネットで検索したら
バーッと結果が出てくることに狂喜する立花隆に対して河合隼雄は――。

「そのときにバーッと出てくるよりも、
自分がどこかで出会うほうが面白いということはないのですか。
(立花隆「それはないではないです。
プライベートな生活では、個人的に出会うのが面白いでしょうね」)
僕はそれで十分にいっているから、何も要らないと思っています。
僕はホームページがないのでホームレスと言っています。
そういうのがなしでも結構面白いと思っているのですが、
やたらあまり出てきて、結局選ぶのだったら、
僕が勝手に人生の中で選んでいるほうが
面白いのではないかというやり方をやっています」(P164)


タイトルは「読む力・聴く力」である。
河合隼雄は「読む力」にも懐疑的だ。あえて「読まない力」を説く。
なにを読むかといえば、文字になった言葉である。
しかし、ケルトのような無文字社会もある。
ケルトは、意図的に文字を持たなかったのではないか。

「なぜかというと、文字ができるということは
便利な代わりに心の働きを限定するところがあるのです。
たとえば山という字ができると、山がわかったように思ってしまう。
この山も、あの山も同じ山だという概念が成立する。
人間の進歩ではあるけれど、そのために感性は衰えるわけです。
一つひとつの山を見て感じとることができなくなってきます。
ケルトはそちらのほうを発展させたのではないか。
だから文字がないのではないかという考え方は面白いと思いました。
アメリカの先住民も文字を持っていないです。
文字によらない感覚はものすごい洗練されていて、
ちょっと見てもそこに何か通った跡があるというのがわかったり、
僕らと全然違う感性を磨く。
それは文字を持たなかったからだ」(P178)


インターネットどころか出版(活字)文化さえ否定している。
いまはすたれた出版文化も全体の歴史から見たら最近のものなのである。
科学文明が紙に文字を大量印刷することを可能にした。
その本も売れない。インターネットだ。
では、さかのぼって見て、本のまえはなんだったかというと、
「話す」「聴く」である。言葉は文字以前は「話す」「聴く」であった。
果たして「聴く力」は、
耳とテープ(ふるっ)に録音するのとどちらがすぐれているのか。
これは「見る力」は、
目とビデオカメラ(ふるっ)のどちらがすぐれているかにも通じる。
河合隼雄は心理屋のボス猿で、
多くのカウンセラーの相談に乗るということをしている。
その役割をスーパーバイザーという。

「僕のところにスーパーバイズを受けに来る人もいますが、
僕がいろいろ言うわけだから
テープレコーダーを持ってくる人は絶対に断ります。
テープレコーダーに覚えてもらうような気持ちなら来るなと言います。
自分で覚えて、自分で忘れて、残るやつがいいのであって、
テープレコーダーは忘れませんからね。本当ですよ。
全部入っているというのはナンセンスです。
僕がいっぱい言った中の、何かがその人にヒットすればいいわけでしょう。
だからそういうときに僕は絶対に使わせないです」(P139)


わたしは観光地に行ってもいっさい写真を撮らない。
そもそもカメラを持って行かない。
旅した海外の光景はほとんど覚えていないが、
現地で聞いたことで覚えていることならある。それでいいのだろう。
現代科学の最先端企業のア○ゾンが倉庫内部を公開したがらないのは、
あまりにも原始的で人力に頼りすぎているのが恥ずかしいからだろう。
入庫をインバウンドと言葉を入れ替えても、
やっていることはほかの倉庫とそう変わらない。
ただし言葉を英語に変えたら、
いまの若い人には受けがいいのかもしれない。
ア○ゾンとそのレビューは古本屋文化と出版業界の一部を消すだろうが、
それはかつて出版文化が無文字社会にやったこととおなじだから、
それゆえ、いいとも悪いともかならずしも断定しがたい。

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