FC2ブログ

「泣ける太宰 笑える太宰」

「太宰治アンソロジー 泣ける太宰 笑える太宰」(宝泉薫編/彩流社)

→38歳で死んだ太宰の小説を43歳のわたしが、
こりゃ、おもしろいとべそをかきながら読むのも、なんだかなあ。
こいを、しちゃったんだから。

おもしろい、としか言えない。
言葉のテンポがよくて、独特の語感が心地よく、真似したくなるが決してできない。
「お伽草紙・カチカチ山」とか、語り口調が見事な芸になっている。
恥ずかしながら「トカトントン」を読むのは初めてだったのだが、
「トカトントン(虚無感)」が聞こえてくるのは男で、あれは女には聞こえてこない。
さらに恥ずかしいことを書いちゃうと、
「トカトントン」は43歳のわたしにも聞こえてくる。
死ぬ直前にエッセイ「如是我聞」で、
自作をけなした「小説の神様」志賀直哉を激烈批判しているのだが、
まるで現代のネット匿名掲示板に書かれたもののような子どもっぽさがあり、
38歳になって実名でこういうことを先輩作家に向けて書く幼児性に恐れ入る。
いや、そういう破綻した部分が傑作を書かせたのだろう。
40歳まで生きるのを神が許さぬ作家であった。
神様が、太宰に、こいを、しちゃったんだから。かなしくて、べそをかいちゃう。

「……トカトントン、あなたの小説を読もうとしても、トカトントン、
こないだこの部落に火事があって起きて火事場に駈けつけようとして、トカトントン、
伯父のお相手で、晩ごはんの時お酒を飲んで、
も少し飲んでみようかと思って、トカトントン、
もう気が狂ってしまっているのではなかろうかと思って、これもトカトントン、
自殺を考え、トカトントン。
「人生というのは、一口に言ったら、なんですか」
と私は昨夜、伯父の晩酌の相手をしながら、ふざけた口調で尋ねてみました。
「人生、それはわからん。しかし、世の中は、色と慾さ」
案外の名答だと思いました。そうして、ふっと私は、闇屋になろうかしらと思いました。
しかし、闇屋になって一万円もうけた時のことを考えたら、
すぐトカトントンが聞えて来ました、
教えて下さい。この音は、なんでしょう。
そうして、この音からのがれるには、どうしたらいいのでしょう」


金持になっても勲章をもらっても女にモテても有名になっても、トカトントン。

COMMENT

巡礼者 URL @
08/01 03:01
. 享年43の文学者

ジェーン・オースティン
山田美妙
上田敏
島木健作
武田麟太郎
若山牧水
直木三十五
佐藤亜有子








 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/6429-2d749348