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「酒井法子 孤独なうさぎ」

「酒井法子 孤独なうさぎ」(渡邉裕二/双葉社)

→このたび2009年の酒井法子薬物事件関連本を4冊すべて1日で読んだ。
最初に読んだのは、
芸能ジャーナリストとして酒井法子を24年担当していた著者のもの。
のりピーと個人的関係もあった人らしく比較的に好意的な内容である。

ヤクザの娘くらいしかのりピーの事前情報はなかったが、
こうして調べてみるとぞくぞくするほど魅力的なのである。
ヤクザとか犯罪とか自殺といったストーリーの厚みがめっぽうある。
宮本輝の描く世界というか、冗談ではなく読んでいて人間の不可思議な宿命、
どうにもならない宿業が酒井法子という華やかな存在に顕現していて、
胸の底から言い知れぬ嗚咽(おえつ)が込み上げてくる。

正確な名前や情報を出してもいいのだが、そうするとわかりにくくなるので、
それは別のもっと詳しい本の感想として書くとして、
簡単なわかりやすいアウトラインを紹介したい。
のりピーこと酒井法子の父親は九州福岡のヤクザの組長だった。
酒井法子の法の字は父が尊敬する組長の名前から取られている。
父親はのりピーが生まれたとき刑務所の中にいた。

酒井法子の生みの母はのりピーが2歳のとき、娘を捨てて別の男と逃げてしまう。
ヤクザの父の実家はお寺だったのだが、そこに放置されたという。捨て子よ。
で、のりピーは埼玉県狭山市のおばさんの家に預けられる。
出所してきたヤクザの父親は格好いいのである。
そもそもイケメンでもてるし、ムショ上がりはハクがつく。
早速、二度目の結婚をして、7歳のときのりピーは福岡の実父のもとに引き取られる。

この二度目の結婚で弟と妹が生まれている。
のりピーは異母弟をかわいがったという。
この弟は長じて少年院への入退所を繰り返し、父とおなじようにヤクザになったという。
それでもテレビでのりピーを見ると、法子お姉ちゃんが出ていると喜んだという泣ける話。
泣けない話もあって、この弟はのりピーが逮捕される数週間まえ、
おなじ覚醒剤取締法違反で逮捕されている。
ヤクザの父親も福岡で覚醒剤の「しのぎ」をやっていたという噂もあり、
もしそれが本当ならば、禍々しい宿命の恐ろしさを感じないだろうか。

「ヤクザの基本はヒモから」と読んだことがあるけれど、
酒井法子の父親はカタギの仕事には就けない任侠の世界を生きる男だった。
博打も女遊びも好きだったことだろう。
わずか2年で2番目の妻とも離婚する。
のりピーはせっかく懐いた2番目の母の元を離れ、
また狭山のおばさんのところに行かされる。
3年後にヤクザの父親にまた新しい女ができたとかで、福岡に呼び戻される。
のりピーにとっては3番目の母だが、彼女はこの母にも懐いた。
この3番目の母とはとくに馬が合ったらしく芸能界に入ってからも仲良くしている。
薬物事件の逃亡劇につきあったのはこの3番目の母。

のりピーが偉いのはふつうこんな家庭環境だったらぐれるはずだが、
どの家でも「いい子」でいること。その反面の闇とか恐ろしすぎる。
中学時代ののりピーがヤンキーだったとか万引き常習犯だったという噂はガセだろう。
ソフトボール部で体罰教師にしごかれていた。
中学生になったら父親の職業の意味、暴力団、ヤクザという言葉の意味も知るだろう。
父親は組長だから舎弟とか若い衆、不良少年が家におおぜいたむろしているのだ。
そんな闇の中で過ごした酒井法子は光の世界、芸能界にあこがれを持つようになる。
松田聖子が好き。あんなふうにあたしも輝きたいの。
きっとこの泥の中から蓮華のように光り輝いてみせる。

オーディションに応募して紆余曲折あったがサンミュージックに所属する。
このとき14歳。寮の同室は飛び降り自殺をした岡田有希子。
なぜ芸名ではなく本名の酒井法子にしたかは諸説あるが、
福岡で酒井法子といえば、「ああ、酒井組のお嬢さんね」
と言われるくらい有名な存在だったらしい。ばれる危険がある。
しかし、光り輝く酒井法子を、かつて自分を捨てた生母や、
かつての部屋住みの若い衆に見てほしいと考えたのだったら浪花節でこれまた泣ける。

18歳の酒井法子が活躍中、福岡でヤクザをしていた父親が廃業。
母親の実家のある山梨に場を移し正業を営もうとする。
娘の出世を邪魔にしないためという説がいちばん人情噺になる。
しかし、長らくヤクザだった人がカタギの仕事はできなかったのか。
謎の交通事故死を遂げる。ブレーキをかけたあとがなかったという。
酒井法子の告白本で本当のことは見当がつくが、ここでは書かない。

22歳、大ヒットドラマ「ひとつ屋根の下」で女優としても大ブレイク。
このドラマをきっかけに人気脚本家の野島伸司と交際を開始する。
著者いわく、のりピーが喫煙を始めたのは野島と付き合いだしてからとのこと。
いままでのりピーを管理していたのは、
サンミュージックの溝口マネージャーだったのだが、ここから三角関係が始まる。
彼はいわば酒井法子の育ての親。
溝口マネージャーといえば、かつての岡田有希子のマネージャー。
岡田有希子が飛び降り自殺をする瞬間を見た人でもある。
タクシーで出社するとき、ビルから飛び降りるものを見た。
近づいてみたら自分の担当する岡田有希子だったという。自責の念はいかほどか。

のりピー27歳、野島伸司と破局。
傷を癒すかのように大物実業家の御曹司でサーファーの高相祐一と交際開始。
このことは溝口マネージャーもサンミュージックも把握していなかったという。
そして酒井はすぐに高相の子を宿し、デキ婚を発表するわけである。
この約半年後に溝口マネージャーは、
岡田有希子が投身自殺するまえにこもっていたトイレで首つり自殺する。
これは元カレの野島伸司が「星の金貨3」に
のりピーの出演を打診してきたからだという説がある。よりを戻したいわけである。
サンミュージックの社員としては利益を考え受けなければならないが、
酒井法子個人のことを考えたらどうなのか。
溝口マネージャーが首つり自殺したのは回答期限前日だったという。

ここからはおなじみ(?)の高相祐一との転落ストーリーになるわけだ。
さて、以上お読みくださった方は、話のおどろおどろしさにぞっとするのではないか。
捨て子、たらい回し、ヤクザ、自殺、交通事故死、また自殺、そして覚醒剤。
リアルな仏教因縁話を見せつけられたような迫力がある。
ちなみに上記した内容は、
これから紹介する他の3冊の関連本から知り得たものも入っている。

本書で知って驚いたのは、芸能記者とタレントはかなり関係が深いのか
(むかしの言葉でいうとズブズブ)。
のりピーグッズを富士山で売るという提案は著者が仕掛けたものという。
毎月1500万の売り上げがあったというが、
それを売っていたのが著者の親戚の山小屋だった。
富士山なんかに店をつくったせいで落石で死亡したのりピーファンもいたという。
著者はのりピーいちばんのお気に入りの記者だったらしく、
のりピーからいろいろプレゼントしてもらったと書いている。
花粉症のときになぜか高いプロテインを約10万円相当もらったという。
カシミアのセーターをもらったことがある。
こういうことがあったら酒井法子を持ち上げる記事を頻繁に書かざるを得ないだろう。
それを大人の著者はそう取らず、
のりピーは「仕事を超えた「情」を見せてくれる。あれにはしびれた」と表現している。
おそらく著者にも酒井法子に対して仕事を超えた「情」があったのだろう。
そういうのは悪くないと思う。

ちなみにのりピーの左足首のタトゥーの模様は、
「蓮の花の画」と「サンスクリット語(古代インド語/梵語)」とのこと。
泥の中から咲いた孤独な蓮華の花、酒井法子、のりピーの輝きはまばゆい。

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