見てる人は見てる

生意気にも有料放送ジェイコムに加入してるので、
新日本プロレス大阪城ホール大会をライブ視聴する。
まさかふたたびプロレスに感激するとは思わなかった。今日のあれはやべえ、事件だ。
30年以上まえからプロレスは見ているので、わかるものはわかる。
まず本当に痛がっているのか、演戯で痛がっているのか。
本当にやばい事態になっているのか、それとも演出なのか。
レフリーやセコンド、カメラマンの表情を瞬間的に見逃さないのがポイントだ。

プロレスはスポーツではなく、ヤクザ的エンターテイメントだからおもしろい面もある。
プロレス技なんか敵味方ふたりで協力しないとかからないものが多いし(いまはとくに)、
かけたほうが痛い技なんかたくさんある(リング外に飛ぶやつ)。
リング内は先輩後輩の日本的濃ゆい人間関係の修羅場である。
鈴木みのるなんて見るからにヨボヨボで
若い衆が本気になったらひとたまりもないだろうが、
日本的権威(おれは業界の先輩!)が後輩レスラーを委縮させる。
だれかモヤシみのるを場外へ向けてポイっと投げてやればおもしろいのだが、
それは業界の暗黙のルールに反する。
いまはヨボヨボでシワシワの鈴木みのるもかつては若くて強い時期が(きっとたぶん)あり、
しかしそういうときに先輩の顔を立ててきたからいまだに業界で生き残っているのである。

30年以上も見てきて、プロレスに似た下のほうの実社会経験も経ると、
あのいんちき格闘技商売のおもしろさも怖さも、そこらの新参ファンよりはわかる。
いま新日本プロレスがブームといわれて久しいが、
いやいや見てきた(ジェイコムを見ないと損)感想はどこがおもしろいの?
優等生みたいなあんちゃんがポンポン飛び跳ねているだけじゃないか。
劣等生キャラも茶髪ロン毛イケメン風ばかりでだれがだれだか区別がつかない。
わたしは馬場猪木世代には乗り遅れ、天龍革命世代だから、闘魂三銃士以降の、
ヒョードル.をまえに亀になったキリストの永田さんやチショー疑惑のある中西選手でも、
(ファンとしては新人時代から見てきているので)どこか後輩のような気がしている。
みんなあの永田や中西、テンコジよりも個性が弱くなって、
ここまでプロレスも(演者の人間味のようなものが)
薄まったかという感慨のようなものがあった。

今日、新日本プロレスの大阪城ホール大会をライブ視聴して、
たしかに新日本ブームは起こるべくして起こっているような気がした。
考えを改めた。要するに、めちゃくちゃおもしろかったのだ。
KUSHIDAとかいうちっこい若いジュニアのあんちゃんがいるじゃないですか(34歳か)。
あの優等生キャラというか、模範社員キャラがいかにもいまふうで嫌いで仕方がなかった。
今日、KUSHIDAを見て、生きのいい若い衆がいるとたいへん好ましく思った。
ライブ視聴のまえに急いで録画していてまだ見ていない、
スーパージュニアの決勝戦を見たが、KUSHIDAにはなにかが降りていた。
ふつう相手レスラーのことを考えて、あまりきつい技はかけられないのだ。
自分がされたらいやなことは他人にできないだろう?
だが、試合終盤、KUSHIDAは相手外人レスラーの腕を変なかたちで決めていた。
相手がタップ(ギブアップ)しているのに、技をとかないのである。
海野レフリーもあわてていたのがおもしろかった。

こうやってプロレスラーは格の差を相手に身体で教えるんだ。
あと相手を威嚇する方法は(男くさい話だが)、
相手の危ない技をあえて逃げないで正面から受けること。
プロレスの技なんて格闘技ではないから逃げようと思ったらいくらでも逃げられる。
しかし、そこで男を魅(み)せてあえて相手の見せ場のために危ない技を受けてやる。
これは当事者間の一瞬の呼吸がうまくハーモニーしないと大事故になる。
相手と自分を信頼していたら、驚くような危ない技も観客に披露できる。
これが抜群にうまいのが、いまは引退した天龍源一郎というレスラーだった。
あの人は相撲あがりで身体が頑丈だから相手の危ない技を正面から受けることができた。
プロレスの技は逃げ腰ではなく、堂々と正面から受けるとかえって怪我をしないもの。
自分が相手の技を正面から受けてやれば信頼関係が生まれ、
相手にも自分の危ない技を受けてもらえ観客は盛り上がってくれる。

いまの若きKUSHIDAに話を戻そう。
今日、KUSHIDAは場外へのリング内からのパワーボムみたいな技を受けていた。
一度は受けるのを拒否したが、二度目ではきちんと自分から受けていた。
あんな危ない技は日本国憲法で禁止してもいいくらいなのだ。
しかもあれは自分から飛ばなければ成立しないボランティア技である。
こぶたグリーンの故・三沢さんが一発でも受けたら何回でも死んでいたという技。
そのうえKUSHIDAは4月におなじ技を受け、脳異常を起こしていたというではないか。
ああいう技を受けるまえにKUSHIDAは相手に腕ひしぎ逆十字を完全に決めている。
ありえない角度に相手の腕が曲がっていた。社会人ならやってはいけないことだ。
そういうことをあえてやり、しかも自分も場外パワーボムを受けてやる。
KUSHIDAは今後カリスマ化するような気がしてならない。
むろん足のひっぱりあいがあり、どこで失速するかわからないが。
プロレスラーはどこまで観客を熱くさせる試合をしても、
一試合いくらのファイトマネーの金額は変わらないのである。
にもかかわらず、お客さまのためにどこまでやるかだ。

天龍の引退試合の相手、オカダ・カズチカも今日給料以上の仕事をしていた。
調べてみたらオカダ・カズチカは29歳か。
いまだからあんな無謀をやれるのだろうが、
あんなにあたまを打っていると将来どんな後遺症が出るか恐ろしい。
相手外人レスラーも、あの試合に見合うだけのギャラはもらっていないだろう。
激しい試合をして評価されると、観客もレスラーもさらなる進化を求めてしまうのである。
同料金でもっと危険な試合をするようにという暗黙のプレッシャーがかかる。
何度もあたまを打つって怖いことだぜ。
なんでもオカダは4月、先輩レスラーの柴田を硬膜下血腫に追い込んでいるとのこと。
開頭手術をしたらしいが、柴田は40歳近いだろう。
怪我をして欠場して、どこまでギャラをもらえるものか。
控え室のオカダを見たら真っ当な社会人っぽかった。
そこまで客の期待にこたえなくていいんだぞ。
オカダ青年、死ぬなよ、殺すなよ、と思った。
しかし、見ているサイドとしてはより危険度の高い試合のほうがおもしろいという矛盾。

いまのプロレスは2、30年まえと比べて段違いに危険度が増している。
だから、おもしろいと今日思ったが、
むかしのプロレスはそれほど実質的危険度が高くなくても、
危ない空気はあったし、いまよりおもしろいレスラーが何人もいた。
在日とか貧困とか吃音とか、そういう負の部分がレスラーを輝かせているところがあった。
前田が長州の顔面を後ろから思いっきりチョン蹴り(朝鮮キック)とか
やばすぎる世界なわけで。
プロレスのおもしろさは、グーパンチとかヤクザキックという命名にあるのだろう。
ヤクザキックをする蝶野さんがじつはとてもいい人で奥さんにあたまが上がらないとか。
そういえば今日、蝶野さんは新幹線の終電に間に合わないとか、
そういうとびきりセコイ経済的理由で試合途中解説席から抜け出していた。
あれだけ熱い大会はつぎいつあるかわからないんだから、
早朝新幹線でも飛行機でも自腹を切れば男が上がったのに、
まったくヤクザキックの蝶野は……。
オカダ・カズチカもKUSHIDAもヤクザキックの蝶野を見習えよ。
死ぬな、殺すな。以上、古参プロレスファンからのアドバイスでありエールである。
いや、いや、違う。そうではない。そんなことはない、そんなことはない。
もっと、やれ。もっと危ないことを。もっと過激に、もっと自由に疾走そして飛翔せよ!

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