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葛藤だけがドラマか?

シナリオ・センターとかいうシナリオを書いたことがない親子ふたりが経営のみならず、
講義まで日本各地でしているおかしな学校がある。
そこでバカのひとつ覚えのように教えられたのは、ドラマは葛藤。
葛藤がないシナリオはダメ。
このドラマ(シナリオ)は葛藤があるからいい。
このシナリオはこうすれば葛藤が強くなりよくなる。もっと葛藤を強くしろ。
ドラマは葛藤だとアリストテレスも言っている(じつは言っていないのだが)。
山田太一作品が好きなわたしはドラマは葛藤だけではないと何度も主張したが、
アリストテレスが言っているんだぞ(だから言っていないって)、
お偉い新井親子三代が間違っているはずがない、と押し切られた。

シナリオ・センターの言い分も一理あるのである。
難しいことは理解できない労働で疲弊した多数の大衆は、
わかりやすい葛藤ドラマを求める。
ほら、「正義は勝つ」、みたいなさ。「犯人はだれか?」とか、そういうの。
生活の細かな味わいを描いた山田太一ドラマよりも、
そちらのほうが視聴率が取れてしまうという現実がある。
「ドラマは葛藤」を無意識的に実行しようとしたのか、
シナリオ・センターとは壮絶な大喧嘩をやらかして強制退学処分となった。
これはとてもわかりやすいドラマでしょう?
シナリオ・センターは正義で、悪魔の犯人は土屋で、そいつを追放してドラマ終了。

あれから10年近く経ったし、もうそういうドラマはいやなんだよねえ。
ちなみに創価学会へ入信すると、そういう大衆的なドラマを体験できるわけ。
学会は正義で、池田先生はヒーローで、裏切り者はたとえば矢野絢也。
われわれ善人みんなで連帯して悪人を打ち負かし大勝利した、みたいなあれよ。
最近の学会作家・宮本輝の小説のテーマは「善き人たちの連帯」らしいけれど。
「正義が悪を打ち負かし大勝利する物語」とか、もうそういうのは生きたくない。
わたしはもうすぐいまの職場を去るが、
葛藤(対立)とかわかりやすい大衆ドラマを味わいたいわけではない。
わたしが正義で職場が悪だとか、わたしが悪魔的犯人で、
当方が去ることにより職場が改善したとか。
先日、ロッカールームでダメ元で若僧が10歳以上年上のSさんにあいさつしたんだよ。
そうしたら「おはようございます」ってきちんとあいさつを返してくれて、
「えええ? Sさんからそんなあいさつをもらえるなんて!」
とふざけて言ったらその場にいた数人はみんな笑っていた。
こういうのも立派なドラマでしょう?

わたしとSさんはもう最初から相性がダメで、
おかげで数々のおもしろい体験をできたのだが。
いまでもSさんはダメだけれど、好きな部分もあるわけよ。
そういうのは無言でも伝わると思うけれど。
人間って善とか悪とか、好きとか嫌いとか、敵とか味方とか、単純に割り切れないよねえ。
長期間、ある人といっしょに働くと、
その人のびっくりするくらいのよさも発見することがあるのだろう。
いい人だと思っていた人の腹黒さを見てしまいがっかりすることもあるだろうが、
そういう生活の小さな発見を巧みに描いたのが山田太一ドラマであった。

ラブコメディーなんてどうだろう?
じつはツッチー(わたし)は職場の女性だれかにひそかな思いを寄せていた。
しかし、それを伝えられず失恋して職場を離れていくみたいなドラマ。
これは(たぶん)「男はつらいよ」パターンなのだが、あれもまた大衆ドラマでしょう?
わたしは申し訳ないが、(一作しか観ていないが))「男はつらいよ」シリーズは苦手。
でも、山田太一ドラマのシナリオは難しすぎて、名優ではないものには演じられない。
あれ? 考えてみれば、なんかおかしくない。
なんでわたしが通勤に1時間近くかかるところに毎朝7時半に家を出て行っているの?
そのあいだに近場の高時給アルバイトがいくつもあったのにどうしてスルーしたの?
もしかしたらわたしは無意識的にだれかに恋心をいだいているのではないだろうか?
小心者の当方は当人に声をかけられないのではないだろうか?

学会員とメンタリティが似ていて噂話とか大好きだから。
○○さんが○○さんのことを好きって言っていましたよ(これは事実)、
と当人に伝え、いまの職場でラブコメディーを起こそうとしたこともある。
いまの職場でいちばん感謝しているのは数々の噂話を供給してくれたAさんかもなあ。
職場に貼りだされたシフト表を見たら、わたしが抜けたあと、
Aさんに5日連続できつい力仕事の「供給」が入っていた。
いまの時期はゼリーが入ってくるらしい。
ゼリーの重さは今日冗談半分で持ってみて知ったが、あれは人を壊しかねない。
じつは先月でお別れだと思って、
Aさんと北戸田のサイゼリヤで赤ワインをふたりで3リットルのんだ。
そのときタイミングが悪く、当方のベルトが壊れたら、
Aさんが自分のしているものをくれた。
返さなくてもいいと言ってくれるので、いまでもたいせつに使っている。
葛藤ばかりがドラマではない。

COMMENT

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04/05 23:56
葛藤て、. 人の内面で起こるものなのではないデスカ。
だれか対だれかではなく。
山田太一ドラマにはそれが溢れていませんか。








 

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