「知識ゼロからの経済学入門」

「知識ゼロからの経済学入門」(弘兼憲史・ 高木勝/幻冬舎)

→いまふたたび経済学に興味を持ったのは、
職場のメイト(契約社員)Yさんの影響かなあ。
何度か「カネがない」という自虐アピールを休憩室で耳にしたし、
かといって悪い人ではなく気の弱い善人のせいで損をしているというか。
わたしはYさんを(も!)大好きだが、
日本経済はどうしてこのような労働者を生み出してしまったのか。
そんな素朴な中学生のような関心から絵本のような本書を読み、
自分のあたまで考える(←これが中高生にはできないこと)。

もしかしたら世界史上最大の悪人は「経済学の父」アダム・スミスではないかしら。
彼は経済世界なんて放置しておけば競争の論理が働き、
それぞれ利己的に自分勝手に動くだろうから全体経済はうまくいくと言った模様。
だれだって200円のマドレーヌと100円のそれがあったら後者を買う。
だとしたら、より価格を下げたほうがアダム・スミス経済社会では勝者になる。
けれども、200円のマドレーヌを100円にするためには、
どこかの生産費用を削らなくてはならないわけでしょう?
いちばん楽にできる経費節減は人件費。
労働者を酷使すればするだけ競争経済社会では価格を下げることができ、
結果としてお客さまの役に立つ。
会社は労働者の賃金はできるだけ安く抑えたいし、
早く終わらせて早く帰したほうがいい。
そんな労働者にカネがあるかと言ったら、あるはずがない。
稼いだカネでは自社のマドレーヌでさえ食えないという羽目におちいる。

低賃金労働者は本心では10円、100円の金に血まなこになっているのである。
経済の仕組みもなにも知らないパートのおばちゃんの正義は安いこと。
あたしゃ安いもんしか買わんからという理由で自分の労働力も激安販売する。
安いことや早いことはいいことだってテレビも言っている。
もっと早くしてもっと自分たちの給料を下げようと新人にビシバシ注意する。
あたし、間違ってないから。
だって、あたしのほうがベテランだし馴れているから仕事が早いもの。
もっと仕事を早くしようと周囲をピリピリ威圧して、そのぶんみんなの収入は下がる。
おかげでマドレーヌの値段は下がるが、おばさんは3000円のマドレーヌセットを
買う余裕がふんだんにあるかと言ったらそうではない。
人間を自由に競争させるとひどいことになることを、
低賃金職場で働いたことのない経済学者は身をもって知らなかったような気がする。

経済の自由放任主義のアダム・スミスに反旗をひるがえしたのがケインズである。
経済は自由放任よりもある程度、国家で統制したほうがいいのではないか?
いまの話で言えば、自由放任にすると過労死する東大卒女子が出ちゃうわけでしょう。
だったら、そこは国家的にある制限を設けたほうがいいというのが革命児ケインズ。
人間のエゴ(我欲)を肯定して自由競争経済にすると、
残業代ゼロ、商品偽装OK、違法解雇さえ無問題のハチャメチャ世界になってしまう。
アダム・スミスの言う「神の見えざる手」が通用するのは神のいる国だけではないか?
国家がある程度、市場に介入して計画性のもとに経済をコントロールしたほうがいい。
これが自由競争バンザイのアダム・スミス、
「経済学の父」に反抗した革命児ケインズの主張である。

経済は競争させるといいと思いついたものはデーモンではないか?
職場でピリピリした古株に叱られた薄給のパートさんが、
スーパーで1円でも安いものを探し回り、
レジの人のわずかな不手際に怒りを爆発させる――悪循環というほかない。
このパートさんがどうして働いているのかといったら子どもの塾費用のため。
子どもも子どもで子どものころから競争を迫られ、いい大学いい会社を目指し、
競争は善だという思い込みから同僚とあつれきを起こし退社して、
ひきこもりやニートになったら親はたまらない。

去年イギリスが抜けたらしいけれど、ユーロをつくったのは、
為替リスクや関税障壁をなくし、自由競争経済を活発化させるためらしい。
埼玉県の菓子アソート(詰め)倉庫でも、みんな競争しているところがある。
それもみんなが楽しむためではなく、お互いを苦しめるために。
で、お互い苦しめあって早く帰って、人生カネじゃないと強がる。
スーパーでは50円の違いに大騒ぎするくせにさ。
しかし、まさにその貧乏根性が職場環境とも連動しているのだが。
あるおなじ派遣会社のママさん労働者いわく、「人生はカネしだい」――。
カネを学問するのが経済学で、
その父とも称されている人が自由放任や競争を奨励しているのは、はてまあ。
いや、わかるのよ。ケインズのように国家の統制を入れれば入れるだけ、
民と官との賄賂(わいろ)や癒着(ゆちゃく)が増えてよくないという面もある。
でも、どうして賄賂や癒着がいけないのかという理由も、
自分のあたまでとことんまで考え尽してみればわかると思うが、わからない。
あの八百屋さんでむかしおまけをしてくれたから行こうというのも賄賂でしょう?

おカネがないなら創価してしまえばいいではないかというのが錬金術。
わたしが尊敬するスウェーデンの狂人であり文豪のストリンドベリは、
一時期執筆もしないで友人知人に借金ばかりして、
結局のところ結果が出なかった錬金術研究に取り組んでいたことがある。
ストリンドベリがいくら机上で研究しても発明できなかった錬金術を、
われわれ優秀な日本人はいくつも発案実用しているのである。
本書に指摘があったので、ああ、そうかと膝を打ったがバブルは錬金術の最たるもの。
みんなの価値観に従って生きているわれわれ日本人は、
土地の価値はうなぎ上りに高騰し下がることはないと挙国一致で盲信した。
大企業は土地を買いあさり、銀行はその土地を担保に企業に融資をしまくった。
企業は資産が年々なにもせずに増えるのだからプラス。
銀行も企業から多額の利子をもらいうるおった。
企業はカネがあるからいけいけゴーゴーでおもしろい遊びができた。
大企業の社員がカネをばらまいてくれるから、
末端の飲食店もいい思いをしたことだろう。

快楽がかりに消費(物品やサービス購入)であるとするらなば、
GNP(国内総生産)の高い国のほうが幸福なのだろう。
GNPはいままでどんな経済入門書を読んでもよくわからなかったが、
本書のおかげでようやく(間違っているかもしれないが)理解できた気がする。
たとえばマドレーヌ。あれの原材料はいくらなんだろう。
小麦粉やらなんたらで10円だとする。
それを工場で国籍さまざまな労働者がマドレーヌにするくらいで30円くらいになるのか。
(このとき10円のものを30円にしているから20円の付加価値=生産価値が発生する)
マドレーヌはそのままでは売れないからビニールパック詰めする。
このあたりでマドレーヌを買えば40円くらい?(付加価値10円)
マドレーヌはそのままで売ってもいいが、
見栄えのいい箱に入れると価値が上がるので箱詰めする(付加価値10円?)。
まあ、輸送費なども付加価値になっているのだが、
そこまで計算すると面倒なので飛ばす。
50円のマドレーヌを店頭でお客さんに売るきれいな女性がいなければならない。
(接客の人件費は高そうだから付加価値を20円で計算。残りの10円は会社の利益)
かようにしてこのマドレーヌは80円で販売される。
この場合のGNPは70円。なぜなら10円のマドレーヌが80円になっているから。
お給料というものは、この付加価値からそれぞれの役割に支払われているわけである。
とするならば、GNPが高い国(好景気な国、よくカネを使う国)ほど豊かな国になる。

坊主、丸儲けって言うけれど、あれはまったくの正解。
葬式の読経ひとりカラオケはともかく戒名にいたっては原価ゼロだから。
あと覚えておいても悪くはないことは価格のつかないものもあるってこと。
国宝級の芸術品には価格がつけようがないでしょう?
価格がつかないってことはゴニョゴニョ、ルノアールっていくら?
基本的に南無妙法蓮華経や南無阿弥陀仏は
現世における数字(価格、年収、偏差値)を否定しているからうまく利用すると儲かる。

狂人ストリンドベリの弟子を自称する我輩としては錬金術へ興味が尽きない。
おカネがないなら創ってしまえばいいのだから(低劣なカラーコピーとかではなく)。
だれか影響力の強い人がこれがほしいと絶叫したら創価できる。
みんなもそれをほしくなる。まあ、これは広告やCM、ステマの基本構造だけれど。
しろうとがなにを言うのかと笑われるかもしれないが、
国債もすばらしい錬金術だよね。
あるかどうかわからない未来を担保にして現在カネを集めるんだから。
あれを考えた人はまさに錬金術師だと思う。
国債なんかいつ便所紙以下になるかもしれないのに、よくみんな買うよねえ。
国債破綻は10年後かもしれないし、20年後かもしれない。
寿命との勝負っていうか、逃げ切れたら勝ちみたいな錬金術ワールド。

商売の基本はアダム・スミスやケインズに教えてもらうまでもなく、
安いものを高く売ること。その価格差が言ってみればGNP。
書店のみならず古本屋にも今年に入ってから一度も顔を出していない。
古本屋はあこぎだけれども、神保町の古書店街とかいまどうなっているんだろう?
古本屋は安く買いたたいて(100円)高く売る(4500円)の、まるで商売の基本。
でもさ、いまはネットがあるから、そこまで乱暴はできないでしょう?
古本屋の場合、コネ(仕入れ客)や古書知識(情報)を売っていたわけである。
わたしは古本世界を味わった最後の世代だからおいしい思いをしたと思う。
いまスマホを持っていたら面倒くさくて古本屋街になんか行けないと思う。
バブルの発端ともなった不動産業も、相変わらずいかがわしくておいしい商売。
聞いた話だが、不動産って売ったり買ったりするとき、
セールスマンと交渉すると売るときはどこまでも高くなるし、
買うときはどこまでも安くなるらしい。
きっと本来、不動産なんて価値のないものだからなのだろう。
ちかぢか来る東京大地震でみんな廃墟と化すのに、
よく不動産業で生きていけると、その営業根性にはただただあたまが下がります。
石ころをいかに創価して宝石に変えるかが錬金術の秘訣であろう。



銀座、お銀座の、マドレーヌはおいしいでございますことよ♪



これも聞いた話だが、ショコラがいちばん入れやすいらしい。

COMMENT

信濃町 URL @
03/27 17:38
. 東京大地震が近いのはその通りだが、「浮間舟渡」などという、いかにも地盤の脆そうな場所に住んでいる奴にそれを言われてもねえ。

もっと安全な場所に引っ越したまえ。たとえば信濃町とか。








 

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