他人の目

去年、職場で休憩時間に自嘲しながら副工場長のコカへ、
「わたしなんか知的障害者みたいなもんですから」と言ったら、
上司から真顔で「いや、土屋さんは知的障害者以下だ」と叱られたことがある。
もちろん、録音もしていないし、本人は言ったことを否定するだろう。
で、それで、わたしが怒ったかというと、そういう話ではない。
ふーん、他人の目にはそう見えるのかと、
納得してしまったという謙虚なぼく話(ばなし)。
外面(そとづら)がいいというのか、わたしは異常なほど謙虚なところがある。
いいのか、悪いのか、うーん。
「土屋さんは知的障害者以下だ」
そのあとにコカから言われたのは「自分が土屋さんを育ててみせる」。
「おれは知られていないが人を育てる名人なんだ。
土屋さんをなんとか立派な正社員にまで育てたいと思っている」

――結果はというと、いきなり工場長から退職勧奨をされてクビ。
しかし、会社サイドは退職勧奨を否定して、自己都合退職あつかい。
当然、失業保険もゼロ。
会社によると、わたしが自己都合退職したという証人がなんでも3人いるらしい。
えええ、退職勧奨は工場長との一対一だったのだが。
で、その証人3人のひとりにコカが入っていたのである。
それが社会人のあるべきすがただが、
コカは当たり前のように部下よりもいま現在の自己の保身を選択した。
それを恨んでいるというわけではなく、まあ人間そんなものだろう。
しかし、コカからは無数の人格批判的なお叱りをいただいた。
「土屋さんは人間を信じていないと言うが、それはダメだ。
おれが土屋さんを変えてみせる。もっと人間を信じろ」とかさ――。
そういう熱血上司が部下をあっさり切り捨てて、お偉い工場長や本社には絶対服従。
よけい人間を信じられなくなったというか、
そもそも人間不信だったから確信を深めたというか。

コカが嫌いとかまえの職場に勤めなければよかったとか、そういう後悔ではない。
あるいはある時期が来たら(因縁時節!)、
コカやあのリネン工場には大感謝しなければならなくなるだろう。
コカからは叱られて叱られてそのあげくポイ捨てされたが、
彼を恩人だと思うときがくるのかもしれない。
いや、いまでもけっこう恩人だと思っているのだが。工場長も知的障害者連中も。
お金をいただきながら、いっぱい社会勉強をさせていただきました。
知的障害者以下の我輩は学ぶことがいくらでもあるのである。

COMMENT

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01/15 22:35
. 「身の保身」ってバカみたいな日本語だな。「頭痛の痛み」みたい。








 

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