「大学病院の不健康な医者たち」

「大学病院の不健康な医者たち」(米山公啓/新潮OH!文庫)

→大学病院の助教授医師から売れっ子ライターに転身した著者の自伝めいたもの。
自分がいかに有能な神経内科医で、
しかし上からにらまれ、いかに大学病院から追い出されたかを、
多少被害妄想過剰とも言えなくもない視点からつづったルポである。
とはいえ、完全に医師国家資格を捨てるわけではなく、
細々と診療はつづけ医師という世間的高身分は
ちゃっかりキープしている世渡り上手の作家で医師の先生さまによる内情暴露本。
いかに自分が「仕事ができる」やつかを強烈にアピールしているのが、
あるいは読者によっては鼻につく著書かもしれない。
禁煙ファシズムの先駆者でもあるので喫煙者には「敵」として存在をご認識いただきたい。

病気を治すっていったいどういうことなんだろう。
病気のなかには医者が勝手に病気をつくって大騒ぎして、
治さなければとんでもないことになると投薬治療しているものも多いのではないか。
個人的には患者に自覚症状がない病気は、果たして病気なのかという疑問がある。
高血圧とか高脂血症は、ぶっちゃけ自覚症状なんてほとんどないでしょう?
あれらは数字のうえでの異常にすぎず、
その異常というのも医者のお偉いさんが勝手に決めた基準値からもれているだけである。
頭痛とか痛風とかぜん息とか、実際に苦痛のある病気とそうでないものがある。
わたしなんかも高血圧で薬を飲んでいるが、
高血圧で痛いとか苦しいとかそういう自覚症状はまったくなく
(もっとも文豪の三浦哲郎レベルの高血圧になると明確な自覚症状があるらしい)、
「薬は身体に毒で早く死ねる」という裏情報をどこか信じて服薬している。
一度痛風をやったことがあり(あれは死ぬほど痛いぞお)、
尿酸値を下げる薬は降圧剤とは異なり、ありがたく服用している。
血圧を下げる薬は飲み忘れても気にしないが、
尿酸値の薬はそういうあつかいではない。

いま重度の顔面神経麻痺でメチコバールを処方されているが、
現在の希望はこの定番薬しかなく、絶対に飲み忘れないぞと誓いながら、
効いてくれと祈りながら1日3回体内に摂取している。
あんがい飲んでも飲まなくても変わらないのかもしれないけれど、
そう考えてしまうとあまりにも「あんまり」なので。
医者サイドもメチコバールがもしなかったら困ることだろう。
重度の顔面神経麻痺患者をまえにして、
「治らないことも多いです」と本当のことを言って、なにも薬を出せなかったら、
医療者としての無力感におそわれ、
善良な医師ならこころを病むこともあるのではないかと思う。
ちなみにわたしはまだギリギリで高脂血症とは診断されていないが、
それでも(血液検査でわかる)コレステロールは高めである。
高脂血症も患者サイドに自覚症状がない医者がつくった病気だが、
いざ高脂血症と言われたらいまさらこだわりはなく薬をもらうつもりである。
著者は精神科医の春日武彦氏とは異なり、積極的に投薬治療を行なう医者の模様。
以下はまったくの正論だと思う。
医者の健康指導は意味がなく、そんなことをする暇があったら投薬しろよ!

「高脂血症の治療はどんな方法でもいいから、
とにかくコレステロールを正常値まで下げることなどといくら言っても、
実際に正常値にならなければなんの意味もない。
だから[大学病院の]健康管理部で薬を出してしまおうということになった。
コレステロールを下げるには、一日一錠薬を飲めばいい。
しかしそのために大学病院のあの混んだ外来で、
三時間も待たされ通院するのはばかげている。
近くの医者を紹介しても、「まずは運動とダイエットです」という、
また振り出しに戻るような指導しかしてくれない」(P127)


薬が嫌いな人って思いのほか多いような気がする。
「薬は毒」というのは、かなり本当のことなのだろう。
長生きなんて絶対にしたくない当方はこれからもせっせと医者に通い、
大量服薬に励もうと決意を新たにしたしだいである。
しろうとくさい文章が不快なところもあったが人は肩書だから、
大学病院助教授まで登りつめた著者の本を批判するつもりはない。
著者の本は数冊読んでいたようで、
以下にリンクをはった本のほうが数段おもしろかった。

(関連記事)
「医学は科学ではない」(米山公啓/ちくま新書)←名著!
「「頭がいい」とはどういうことか」(米山公啓/プレイブックス・インテリジェンス)

COMMENT

ラマ URL @
09/13 11:53
. 「しろうとくさい文章が不快なところもあったが人は肩書だから」の一文に苦笑した。170冊以上の著書がある米山と、一介のブロガーの土屋と、どちらが素人なのかはわかりきった話。「おれは本当は米山なんかより文章がウマイんだよ! ただ肩書がないだけなんだよ!」という土屋君のルサンチマンが透けて見えるような気がする。

もっとも、土屋君の文章が素人離れしているのは事実だ。才能の無駄遣い。モッタイナイね。まとまったものを書いて、どこかの出版社に持ち込んでみればいいのに。








 

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