まずいもののうまさ

もう老人だし、あたまを打って顔面神経麻痺だし、
かろうじて覚えているむかしの記憶を思い返すしか楽しみはない。さみしい。
いまの日本はさ、異常なほどおいしいものを求めすぎているのではないだろうが。
これは酒のみにしかわからないだろうが、
うまいものもいいが、まずいものもつまみになる。
いまの日本のように美味ばかりだと、
むしろその固有のまずさが新鮮でつまみになるって、これわからないかなあ。
まずいものはほんとうはおいしいのである。
おおむかし東南アジアのどこの国だったか、
小さな料理店でメニューに「スキヤキ」とあるので好奇心から注文してみた。
これがまたぜんぜんスキヤキではなく、
白滝ラーメンで、そして特筆すべきはその異様なまずさである。
名前がスキヤキで、このまずさはおいしいぜ、
と腹の底で大笑いしながら、
東南アジアの味の薄いビールをがぼがぼのんだ記憶がある。

いまあえて想像以上にまずいものを食べたい人っていないのかなあ。
どこも美食ばかりグルメになってしまったわが国で、
いまいちばん求められているのは想像以上のまずさではないか。
とはいえ、さすがにわたしも某社の「チョコ焼きそば」には手が出なかったけれど。
おいしいものやうまいものはみな似通っているが、
まずいものはそれぞれまずいじゃないですか?
できる社会人はみなおなじような顔で、
おなじようなトーンでおなじことを話すみたいなさあ。
いま一時期のビートたけしのような顔面破壊状態らしい。
たでくう虫も好き好きで、
まずい顔のよさに気づいくれる女の子も0.1%くらいいるのではないか?
ぎょっとするほどの固有のまずさを持つつまみは新鮮で、
口にするたびに味(感想)が変わるため、
じつのところ酒のみにとっていちばんいい酒肴品は、
どぎついまずさを持つ想像外のものと言っても完全な100%の間違いとは言えまい。
いまおれの顔、やばすぎるし、まずすぎるのかもしれん。
自分の顔が嫌いだから、鏡をめったに見ないのはプラスなのかマイナスなのか。

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