「立派になりましたか?」

「立派になりましたか?」(大道珠貴 /双葉文庫)

→今年読んだ小説のなかで最高傑作(うん? 何冊読んでる?)。
へらへら笑っている特別学級の子たちの内面ってわからないじゃないですか。
健常者には特殊学級の人たちのへらへら笑いほど怖いものはない。
なにかすごい深遠なことを考えているのではないかと思ったりして。
大道珠貴(だいどうたまき/女性)は特殊な「聖者の行進」をすれすれのラインで描く。
こんな小説を書いてしまったら、それは天才だが天罰が当たるのではというレベル。
何度も読み返して大笑いしたけれど、
この小説で笑ったのがばれたら社会的に罰を受けそうな気がする。
でも、みんな本なんて読まないから大丈夫だと思いたい。
あたまがゆっくりしたへらへら笑っている人たちの内面を、
だれにでもわかる平易な言葉でこれほど軽快に描写できる著者の才能には脱帽。
小説のテーマを問うのは現代文の悪しき習慣だが、
「立派になりましたか?」の主題はおそらく「へらへら笑う」。
へらへら笑っている特殊な聖者たちはもしかしたら最強ではないだろうか?
どんな不幸も不遇も災難もへらへら笑っているのがいちばん賢いのではないか?
健常者の男性が1学年上のトッキュウ(特殊学級)を評した文章がテーマと直結している。
もっとおもしろい描写はいくらでもあるのだが、
著者とは違って無駄な学歴のようなものがあるため、
どうしても深刻にマーカーを引くところを選んでしまう。
わたしもあちら側に行って、へらへら笑いたい。もうめんどうくさいことはいやいや。

「あなたたちは特別なクラスで、狭い世界で、そこだけで生きておられましたもんね。
遅刻しても怒られない、学校に来なけりゃ先生が迎えに行ってやる、
成績はたいして問題じゃない。
まるでおなかいっぱい食べればとりあえずほめられる幼稚園くらいのガキです。
あなたたちは、生きているだけでいい、みたいな保護のされかたで、
ある意味、役立たずなんですけど、
それで学校全体からはほとんど無視されていたわけなんですけど、
いや無視じゃなく、あたたかいようなつめたいような、
哀れみとも軽蔑ともつかないような視線で見られてはいたね。
あなたたちのいるクラスだけぽっかり異次元空間。
でも、見つめていると、ふしぎと、あなたたちって、やっぱり生きているだけでいい、
と思えてくるもんです。
そしてあなたたちを見つめていたら、ぼく自身は死にたくなった。
あなたたちのほうに行きたいなあ、とうらやましかったです。
最初からあなたたちの側にいたら、ぼくも、友達のことで悩んだり、成績を気にしたり、
将来なんになるか考えこんだりしなくても済むんじゃないかなあ。
まわりからも、生きていればいい、
ってなふうに大目に見られるんじゃないかなあ、と。
でもぼくは一応、成績はよかった。よくもないな。中の下だな。
トッキュウには入れてもらえないくらいは、よい成績だった」(P158)


トッキュウ出身の子たちって本当に深みのない薄っぺらいへらへら笑いをするよねえ。
純真とかピュアとも言えるんだけれど、そうではない見方もあっていいだろう。
大道珠貴は知的障害者文学の最高傑作をこっそり書き上げていたのかもしれない。
本当に怖い小説を読んだ。

COMMENT

だし URL @
05/08 19:25
. 養護学校の近所に住む知人から聞いた話ですが、養護学校の生徒はかなり早くから恋人を作って手をつないで歩いたり道端で抱き合ってたりするそうです。知人は女性なのですが、彼らから頻繁に痴漢行為を受けたそうな。痴漢は犯罪だけど周りからどう思われるかも気にならない、自分のやりたいことをやりたいようにできるのは楽しいだろうしうらやましいと思いました。








 

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