「医学部の大罪」

「医学部の大罪」(和田秀樹/ディスカヴァー携書)

→いちおうは医師の国家資格をお持ちの東大の和田さんの医療批判本を読む。
東大ならぬ早稲田のほうのスーパーフリーな和田さん(性犯罪者)は、
まだ出所していないのかなあ。
東大の和田さんも早稲田同様、発言がスーパーフリーでよろしい。
本書で知ったが、スーパーフリーな発言をするとたいがい干されるらしい。
独特なガン治療理論で有名な近藤誠医師っているじゃないですか。
本書で知ったが、あの医師は慶應の医学部を首席で卒業。若くして留学。
スーパーエリートコースを歩んでいたらしい。
それが88年「文藝春秋」に「乳ガンは切らずに治る」を発表したことで大転落。
医学部教授たちににらまれ、結局ずっと講師のまま出世できずに終わったらしい。
当時の教授たちが引退した15年後、
近藤誠医師の乳ガンへの考えは「正しい」ことが認められ、
医療現場でも乳房を切らない手術が主流になったという。
どうしてこういうことが起こるのか?

「五〇歳で教授になった人は、その時点では知識も技術も一流なのでしょう。
その一流の知識と技術を認められて教授になったのでしょう。
ところが、年々医学は進歩する。一五年もたてば、当然古くなります。
それまでの常識が覆されたり、
自分が名を上げた技術が否定されたりすることもあるでしょう。
ところが、教授になった人のほとんどは、それを認めないのです。
そりゃそうでしょう、自分の医療、自分の手術の正当性が覆されたりしたら、
おまんまの食い上げ、メンツも潰れます」(P79)


若かりし近藤誠医師は「もてない男」の小谷野敦塾長とおなじで、
世間というものを知らなかったんだなあ。
でもまあ、後年「正しい」ことが証明されたのだから恵まれているとも言えよう。
近藤誠氏のようなケースもあることを考えると、
著述家としては売れっ子だが、
医者としての腕は定かならぬ東大の和田さんの主張も「正しい」のかもしれない。
なるほど、と思ったところがある。
血液検査でわかるコレステロールというものがあって、
さらに善玉コレステロール(LDL)と悪玉コレステロール(HDL)に分かれる。
善玉が低くて悪玉が高いと
動脈硬化になりやすいというエビデンス(統計結果)も出ている。
しかし、最近になって悪玉コレステロールにも別の価値が見いだされるようになる。
悪玉コレステロールが高い人は動脈硬化になりやすいがガンにはなりにくい。
著者の専門の精神科領域でも、
悪玉コレステロールが多いとセロトニンが脳に運ばれやすく
「うつ」になりにくい傾向があることがわかってきた。

「つまり、LDLコレステロールは、血管とか心臓にとっては「悪玉」でも、
免疫とか脳には「善玉」らしいのです。
これは、じつは非常に示唆に富んだ発見です。
すなわち、総合診療医の発想から言えば、これは本当に悪玉か善玉かという判断は、
全部プラスマイナスしたときにはじめて決まるわけであって、
循環器の医者だけに決めさせることはできない、ということだからです。
コレステロールに限ったことではありません。
どの臓器の検査データも、じつは、一筋縄でいくものではありません。
たとえば、GOTは、一般には、肝機能を見るために用いられるわけですが、
心筋梗塞のときも値は上がります。
肝臓の専門医が、「このデータがこんな値だから、まずい」と、
肝臓だけに限って言うべきことではないのです。ひょっとしたら、
この値が高いほうがよい別の身体の部分もあるかもしれないのですから」(P56)


これはものすごい革新的な「正しい」ことのような気がしてならない。
なにかの数値が悪い(?=標準値から逸脱している)おかげで、
身体の別の部分がよくなっていて、全体としてうまくいっていることは多いのではないか。
変に一部を治療する(=標準値に戻す)とかえって全体が狂ってしまうというか。
作家の三浦哲郎はものすごい高血圧だったらしいけれど、
そのおかげでハイテンションで創作ができたかもしれないわけだから。
最新の薬で血圧を下げていたら、フラフラしてなにも書けなくなっていたかもしれない。
わたしも薬で血圧を下げているけれど、
エビデンスとしては脳卒中になる確率が10%から6%になるくらいらしい(132頁)。
薬で血圧を下げていても脳卒中になる人は6%なる。
痛風と関係しているとされる尿酸値を下げる薬は絶対に服用したほうがいいが、
降圧剤は人それぞれでいいのだろう。
わたしは塩辛いものを気にせずがんがん食べたいし、
薬をたくさん飲むとかえって早死にできるっていうから(これはマジみたいよ)、
それにせっかく国保も払っているので血圧を下げるジェネリック薬品をのんでいる。
けっこう長く血圧とはつきあってきたが、血圧管理は意味がないのひと言。
塩分をたくさん取っても低いときは低いし、
どんな運動を日々していても高いときは高く、
そしてこれが重要なのだが血圧が高くても低くても自覚症状も痛みもなにもない。
三浦哲郎くらいの高血圧(200近い)になると頭痛が出るらしいけれど。
しっかしさあ標準血圧の基準だって年々、根拠もなく変わっているんだ。
まあ、高血圧(基準値以上)を増やせば薬が多く売れるから、そのへんはゴニョゴニョ。

治せば(標準=平均に戻せば)いいってもんではないのだろう。
うつ病なんかも下手をすると、
治したらかえって動脈硬化を起こし心筋梗塞になってしまうかもしれないわけで。
脳梗塞で半身不随になるのとうつ病はどちらがいいのかわからない。
うつ病を治しても心筋梗塞で死んでしまったら、どちらがいいのかって話。
部分と全体という話をすれば、うつ病というのは全体としてどうなのだろう。
だれかがうつ病になって社会から落ちこぼれるから、
その空いた枠に出世できた人もいるわけでしょう。
いままで夫が仕事中毒でうんざりしていた妻が、
配偶者のうつ病のおかげでいっしょにいる時間が増えて嬉しいということもありうる。
説教が好きながんばり屋のお父さんのことを大嫌いだった息子が、
父のうつ病をきっかけに発奮することだって絶対にないとは言えない。
これまでふんぞり返っていた父親がうつ病で寝たきりになったら笑っちゃうよねえ。
子どもの人格障害とか迷惑きわまりないけれど、
それで夫婦仲がうまくいっている可能性もある。
東大の和田さんの意見を拡大化してまとめると、
悪玉といわれる要素があるからよくなっている部分もあり、
そして悪玉が存在するおかげで全体としてプラスマイナスがゼロになっている、
という見方もできなくはないということだ。
先日、近藤誠医師のいた慶應大学病院で血液検査をしてもらった。
GOT(肝機能)が基準値よりもちょっと高かったけれど、
どうしろとも慶應大学病院の医師は言わなかった。
GOTが高いせいでもしかしたら全体としてバランスが取れているのかもしれない。
まさかお医者さんがそこまで当方のことを考えてくださったわけではないでしょうが、
あるいはあの先生は相当の名医ということもありうる。
前回の投薬のおかげかどうか悩んでいた異様な吐き気も取れたし。
そのぶん悪くなっているところもあるんだろうけれど(それがGOTとは言わないが)。

東大の和田さんのみならず、いろんな医者がぶっちゃけトークで言っているが、
長生きしたいなら医者にかかるなっていうのは真実のような気がしてならない。
わたしは長生きしたくないから医者にかかっているところがある。
それともうひとつの通院している理由は、苦しみがいやだから。
痛いとか吐き気がするとか眠れないとか、
そういう生活レベルの苦痛を除去するために医者にかかるのはいいのではないか?
本当のことを言えば、そういう苦痛も放置しておけばどうにかなる。
そこで軟弱にも医者にかかって薬を飲むと早死にする確率が高まる。
しかし、当方にとって早死には望むところなのでお医者さんもお薬も大好き。
苦痛なんかさ人生修行とか思わないで、さっさと薬で取っちゃえばいいじゃん。
20代のころ頭痛で心底苦しんでいたが
ロキソニン(痛み止め)をのんだらその瞬間に痛みが消えたのには悲しくなった。
おれの頭痛ってもっと重いものであってほしかった、みたいなさあ。
いまは頭痛は治ったが、ほかに悪いところが出てしまっている。
きっと本当のところ、そういうものなんだろうな。
パーフェクトはありえないというか、パーフェクトを目指したら死ぬっていうか。
健康のことなどいっさい考えないのがいちばん健康なのだと思う。
「そういうことですよね?」と東大の和田さんに聞いたら、イエスと答えてくれるはず。
身もふたもない実験結果を著者は本書で公開している。
なんでも「フィンランド症候群」とかいう名前がついているらしい。

「「フィンランド症候群」についても同様です。
これは、一九七四年から一九八九年までの一五年間にわたって、
フィンランド保険局が行った大規模な調査研究のことで、
循環器系の弱い四〇歳から四五歳の男性一二〇〇人を選び、
しっかり健康管理をする介入群と何もしない放置群に、
六〇〇人ずつ分けて、健康状態の追跡調査を行ったものです。
最初の五年間、介入群は四ヵ月ごとに健康診断を受け、
数値が高い者にはさまざまな薬剤が与えられ、
アルコール、砂糖、塩分の節制をはじめとする食事指導も行われましたが、
一方、放置群のほうは、定期的に健康調査票に記入するだけで、
調査の目標も知らされず、まさに放置されました。
そして、六年目から一二年目は、両グループとも健康管理を自己責任に任せ、
一五年後に、健康診断を行いました。
その結果は衝撃的なもので、
ガンなどの死亡率、自殺者数、心血管性系の病気の疾病率や死亡率などにおいて、
介入群のほうが放置群より高かったのです。
とくに介入群には何人かいた自殺者が、
放置群にはほぼ皆無に等しかったそうです」(P129)


いま書き写していて気づいたが、どうして自殺者はゼロと書けないのだろう。
「皆無に等しかった」というのは文学的表現で統計的数値ではない。
「何人かいた」というのも文学的表現で、
医者なら何人という数値を明らかにしたほうがいいのでは?
このあたりが「フィンランド症候群」の怪しさだが、
真実はそうであってほしいとわれわれが願うことなのだから、
この調査結果はおそらく真実に違いない。
結局さあ、よほどのことがないかぎり医者になんかかからず
「知らぬが仏」を決め込むのがいちばんなのかもしれない。
ある数値が悪いと知っても放置しておいたら自然によくなることもある。
だったら、そんな数値のことは知らなかったほうがよかったとなるわけで。
日本人がいまもっとも恐れているのはガンでしょう。
ガンに対して最適な態度は、和田さんもこれだと賛成している。

「というわけで、結局、ガン検診ではガンが減らせません。
少なくとも、ガンの死亡者は減らせない。
見つけたところで助からないガンを検診で見つけても、
あまり意味がないわけですから。
それどころか、かえってよくない結果になるかもしれません。
ひょっとしたら知らぬが仏の人生を送っていたほうがよかった、
ということになるかもしれません」(P86)


まあ、確率1%でガンが治る人がいれば、
おなじ1%で難病にかかる人もいるってこと。
そこはもう毎年ころころ変わる医学ごときの分け入られる領域ではないのだろう。
南無妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、南無観世音菩薩、南無釈迦牟尼仏、南無南無な~む。

COMMENT

ウハハハハ URL @
02/02 14:33
. 近藤誠は1948年生まれだから「乳ガンは切らずに治る」を発表したとき、もう40歳。

40歳で講師をやっている段階で出世コースからは外れていたというべきでしょう。








 

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