「強さの法則 セブン-イレブン by AERA」

「勝ち続ける7つの理由 強さの法則 セブン-イレブン by AERA」(朝日新聞出版)

→世の中の裏側がわかるおかしな意味でとてもいい本だった。
2013年刊行の本書は、
朝日新聞とセブンイレブンがつるんでいる(結託している)証拠物件である。
どちらが古いかといえば朝日新聞のほうだから、
一見するとこの構図はセブンが朝日に借りをつくったようにもとられかねない。
しかし、それは視野が狭いというもので、
セブンが自社でこの本を大量購入したら朝日への貸しになるため、
実際のところこれは新勢力のセブンによる朝日への「みかじめ料」になろう。
朝日はこういう本を出して利益を上げてしまった以上、
新聞や雑誌、出版局の本でセブン批判の記事を出したら恩知らずになってしまう。
40間近になってようやくわかったのは、
上のほうはおそらく損得利害でかなりのところつながっているということ。
朝日新聞の「正義」なんていまどき信じているほうがクルクルパーかもしれない。
むかしは得になるから戦争礼賛記事を出していたけれど、
いまはそういうことを書くと経済的に損になるから
あたかも平和絶対主義をよそおっているという話。

こんな宣伝本、コマーシャルブックはだれも実際には読んでいないと思う。
わたしはブックオフオンラインからこのアエラムックを買ったが、
スリップ(売上票)が挟まれたままであった。
おそらく本書はセブンが朝日に発注して、
できたものをセブン関係者がほとんどすべて買い上げたのだろう。
食品開発でよく知られているセブンイレブンのお家芸である。
正義派ぶって批判したいわけではない。
こういう処世をうまくしたらセブンも朝日も共存共栄をたもつことができるのだから、
それはそれでいいのではないか。

このたび、だれも読まないような宣伝ブックを当方は何回も繰り返し読んだ。
なぜなら、いまのわたしにはこの本がおもしろいからである。
本などいつ読むかによって感想はいくらでも変わるのだろう。
1ヶ月まえにはさらさら興味をいだかなかった本がいまはとてもおもしろく感じる。
大成功者で大勝利者のセブンイレブン鈴木会長はこの真理を熟知なさっている。

「世の中は必ず変化すると思って日常を過ごしているだけです」(P6)

セブン会長がおっしゃるように世の中における常識も正義も真理も、
かならずといっていいほど変化するのである。
「変化」こそ常識、正義、真理といっていいのかもしれない。
過去と現在との「矛盾」こそが世間常識、社会正義、絶対真理。
一貫した行動を取る人のほうがおかしく、
人間とは矛盾しているものだという見方のほうがどちらかといえば「正しい」。
人間は矛盾しているということをどれほど知っているかが勝負を分けるのだろう。
本書にセブンイレブン取締役常務執行役員にして、
商品本部長でもあられるK氏のインタビュー記事が掲載されている。
写真を拝見すると、とてもお人柄がよさそうだ。
本書で会長のご子息以外でこれほど重んじられているのはK氏だけである。
おそらくセブンイレブンの出世頭なのではないか。
「自分のあたまで考えよう」「人真似はするな」の会長発言で知られるセブンの、
商品本部長のいうことはまったく鈴木敏文氏とおなじ口真似といってもよい。
だれからも好かれそうなセブンの出世頭はこういっている。

「例えば、1工場で弁当を一日3000個ほど作りますが、お客様が手にするのは1個。
万一、その1個がたまたま出来が悪ければ、
そのお客様はもう二度と来店してはくださらないでしょう」(P27)


これはセブンイレブン会長の本にかならずといっていいほど書いてあることだが、
少しでも自分のあたまで考えられる人が読んだらこれは嘘でしょう?
書いていないけれど、セブン弁当がまずくても当方は再訪しているし。
いちばん残念だったのは、ものすごい期待をしていた「金のビーフシチュー」。
4百円も取るってなにさまよと思いながら購入、試食してみたら、これはないだろう。
開発者には本当に申し訳ないが、見かけがいいだけで味はクズと思った。
むろん、この感想が「正しい」わけではなく、売れているのならそちらが正義だろう。
わたしは「金のビーフシチュー」で立腹したにもかかわらず、
しかしけれどもだが、セブンが好きだからまた行く。
まずいものが一食でもあったらもうその店には行かないなんてありえないでしょう?
むしろ、まずくて当たり前というか。
わたしの買うものなんて安いものばかりだから、うまいものがあったら例外的に感動する。
買った食品の6割うまければそこの店は上質といえるのではないだろうか。

本当のことをちょろっといえば、まずいのも楽しいよねえ。
えええ、こんなに高いのがこんなにまずいのという発見も楽しい。
おれの舌はここまで世間とずれているの? と笑う楽しみがまずい食品にはある。
だって、そのまずいものをうまいと思った企業重役が絶対にいるのだから。
「外れ」があるから「当たり」の感激があるっていうかさ。
「当たり」ばっかだったらつまらないじゃありませんか?
セブンイレブンの重役さんは優秀だから、みなさんこのくらいわかっておられるのである。
お金を払ってまずかったらもうその店には絶対に行かないなんて、ないない、ありえない。
しかし、セブン会長は建前上、そう発言しているから追従しないと出世できない。
「自分のあたまで考えろ」なんていうトップの発言を真に受けて
鈴木会長を批判しようものなら、その瞬間にセブンイレブンから追放されることだろう。
そしてそして、この矛盾が正しく、まさに人生の真実なのだろう。
上役の言葉を真に受けず、いかに真意をお察しできるかが勝負の分かれ目。
いやね、べつに勝負で負けるのも味があると当方は思うけれど。

ここだけの話、「自分のあたまで考えろ」という指導は、
上役にとって都合がいいのかもしれない。
社会人にとってミスほど恐ろしいものはないのである。
もし自分がこうしろといって部下がその通りにしてミスをしたら、それは自分の責任になる。
部下になにも指導を出さず「自分のあたまで考えろ」といっておけば自己責任。
そんなことはまさかないだろうが、たとえセブンの店主が激務で自殺しても、
それは自分のあたまで考えた結果なのだから自己責任だ
と創業者は罪悪感をいだかないでいられる。
会長が「自分のあたまで考えろ」と毎回口を酸っぱくしていっているのだから、
セブン関係者で病気、発狂、借金苦で自殺したものは全員自己責任。
会長の言葉をそのままオーナーに伝えた本部の店舗指導者も
罪悪感などいだかないで済む。
トップの「自分のあたまで考えろ」ということは、
自分のあたまで考えた結果として自己主張は消してトップに従えということだ。
本当に自分のあたまで考えたら、上には逆らうなという結論に行き着くはずである。
会長さまのご発言「自分のあたまで考えろ」の意味は「会長に逆らうな」ということ。

セブンイレブン食品はたしかにおいしいような気がするけれど、
はてまあ、さてさておいしいってどういう意味だろう。
上役がおいしいというものは、絶対においしいのだろうか。
おいしいってどういうこと? 
この疑問にセブンほど誠実に向き合った企業はないのではないか?
以下はセブン関係者の発言の引用だが、だれの言葉だかはわからない。
いや、正確にはわかりにくい。
よく見てみたら、吉岡秀子という(お抱え)ライターの書いたことのようだ。
セブンイレブンのおいしさとは――。
以前、セブン会長がたまたま自分の口に合わなかった冷やし中華があったらしく、
コンビニ接客経験ゼロの創業者はその一件で大騒ぎをしたという。
「おいしさ」とはなにか?

「めんに限ったことではないが、人によって「おいしさ」はあいまいなため、
セブンの開発では糖度や粘度など、味を数値化するという手法を取っている」(P71)


引用文のあとを読んだら、結局は数字ではなく会長の舌が絶対とのこと。
「会長プレゼン」ですべてが決まる。これが真実であろう。
大げさだがわたしは全人生試食経験をかけて
「金のビーフシチュー」は価格と釣り合わない、つまりまずいと思うけれど、
いまや朝日新聞社も支配下に入れた鈴木氏の味覚のほうが「正しい」。
会長はセブンに一食でもまずいものがあれば、もうその客は来なくなると主張しているが、
そんなことはなく、どれだけまずいものがあっても生きているかぎり、
これからセブンに行くことは(興味を持ったため)おそらくこれまで以上にあるだろう。

お客様は矛盾していると考えたらどうだろう。
あるいは、もっといえば人間は矛盾している。
しかるがゆえに、もっとも矛盾している企業トップこそお客様人気ナンバー1の
フランチャイズを運営できるのかもしれない。
矛盾しきったことを書くと、古いものほど新しいし、新しいものほど早く古くなる。
セブンの鈴木会長は、おいしいものほど飽きるとよく書いてるけれどあれは本当?
実際は新しい食べ物ほど飽きるのが早くなるのではないか?
だって、うなぎとかうにとかあんきもとか、素材そのものは飽きないもの。
飽きられるのはおいしいからではなく、その場しのぎの新しさのせいかもしれない。
よしんば、こう書いたとしてもセブンの鈴木会長は偉いのである。
いちばん最初にコンビニでおにぎりを出そうと考えたのも、
当時はゲテモノだったツナマヨおにぎりを商品化したのもセブン会長なのだから。
ツナマヨおにぎりは新しかったにもかかわらず、古典的定番商品になっている。

セブンの商品は1年で70%変わるという。
もしかしたらそれこそ真実なのかもしれない。
その場その場で、かりにあるとすれば商売の正法なるものは変わりうる。
人は新しいものを好む。だが、新しいものほど早く古くなる。
古いものほど新しいと評価されることがある。
矛盾していると怒るのはおかしくて、その矛盾こそ世間的常識的に「正しい」。
人は矛盾したおのれの「真実」のようなものを生きるしかないのかもしれない。



*そうそう、セブンの「ひとくちスモークチーズ」は泣くほどうまかったっす。

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