「売る力 心をつかむ仕事術」 (鈴木敏文/文春新書)

→日本初のコンビニ、セブンイレブンの創業者にして会長のベストセラーを読む。
もっともセブンイレブンだけでパートやアルバイトをふくめると30万人。
関連物流会社やベンダー(商品協力会社)関係まで数に入れたら
少なく見積もっても百万人、
正確に計算したら数百万人レベルの労働者がセブン周辺にはいるのではないか。
セブンに食わせてもらっているのなら会長の本くらい読めよと思うけれど、
本書はベストセラーとはいえ、それほど売れてはなさそうなので、
信者に本を買わせるという面では創価学会の池田名誉会長のほうが
セブンの鈴木会長よりも上になろう(それがいいのか悪いのかはわからない)。
おっさんのわたしは少しまえまでコンビニは高くてまずくて危なくて、
スーパーのほうがよほどいいと思い込んでいた。
ところが、いま当方にとってはかなりの高給が運よく舞い込んできたので
セブンの商品を買ったら意外や意外、
これが想像以上にうまいのだから世の中はわからないことだらけである。
個人商店ファン(商店街が好き)はスーパーができたとき、
あいつらは人間味がないと嘆いたことだろう。
その商店街が消え、スーパーの時代が来る。親の洗脳かわたしはスーパー派閥だった。
スーパー好きは、コンビニなんて便利なだけで高くてまずいと思っている。
実際はそれほどコンビニ購買経験がないのにもかかわらずだ。
行ってみたら買ってみたら食べてみたら、
スーパー程度の安さでスーパーよりもうまい商品はいくらでもあったのである。
むろん得手不得手はあり、
コンビニがなにをしてもかなわないのが生モノの魚介類だろう(刺身)。生肉もそう。
コンビニ(セブンイレブン)のよさを発見したのは、この齢でさえ新鮮だった。
日本ではじめてコンビニを創った人は
どのようなことを考えているのか興味を持ち本書を読む。
ローソンもファミリーマートもセブンイレブンの真似といえば、
そういえなくもないのかもしれない
(実際は経済界は不勉強ゆえどうだかわかりませんけれど)。
コンビニ業界「ひとり勝ち」の鈴木会長はどうしてこんなに運がいいのですか?

「既存の常識や過去の経験にとらわれない行動が、
普通だったらなかなか出あえない幸運に結びつく。
多くの人が妥協するところを妥協せずにきわめようとする行動が、
そう簡単には手の届かない運を引きつける。
自分のビジネス人生を振り返ってみると、その連続だったようにも思います。
ビジネスは能力や努力だけではなく、運にも左右されます。
その運は偶然の部分がかなりあります。
しかし、過去の経験や既存の常識を超えた挑戦や努力をすることで、
普通に行動していたらめぐりあえないような
幸運も引き寄せることができるのです。
世のなかを見渡すと、大きな成功をなし遂げた人たちはたいてい、
「運がよかった」といいます」(P241)


日本に一店もコンビニがなかった時代には、
この国でセブンイレブン(コンビニ)を開業して成功する確率はゼロパーセントだったのだ。
言い換えたら、未知数。わからない。
本当に新しいことは過去の統計がないから確率も期待値も計算できない。
いまコンビニとフランチャイズ契約してどうなるかは、
ある程度の情報で推測できるともいえるが
(正確にはこれまたやってみないとわからない)、
鈴木会長がセブンを開業したときの成功確率はおそらくゼロパーセントであった。
みんながみんな、過去のパターン(いまでいう統計←これがわたしは大嫌い)から
どうせコンビニなんかやったってこの国では成功しないと批判的だったことであろう。
日本コンビニエンストストアのパイオニア(開拓者)である鈴木会長はいう。

「経験的に[統計的に]「いい」と思われることはみんながやるから、
結局、競合になってしまい、ますます厳しい状況になる。
みんなが「いい」と思うことなどやる必要はなくて、
むしろ、「そんなのだめだろう」と思うようなことに意味がある。
みんなが賛成することはたいてい失敗し、反対されることはなぜか成功する。
それはわたしの経験に限ったことではないようで、
これまでお会いした[成功者の]方々も同様の経験をお持ちのようでした」(P88)


演劇が主流だったときには、映画なんてだめだろうと思われていた。
日本でも映画業界が斜陽になったとき、
映画人はそれでもテレビには行きたくないと多くのものが思っていたという。
いまはテレビも雑誌も斜陽だが、
そういうマスコミ人はあれをバカにするがパイオニアの鈴木会長はそうではない。

「本格的なネット時代の到来するなかで、確実にいえることは、
「ネットを制したものがリアルも制する」ということです。
ネットとリアル、両方の動きを見ると、
それがすでに現実のものとなろうとしています」(P186)


ネットとはひと言でいえば、無料文化である。
わたしだって一銭にもならないのに、このような駄文をそうと知りながら書いている。
断じてまったくゆめゆめお金がほしくないわけではないが、
それほど物欲がないというのもこっそり白状する秘密である。
ほしいものがない。これってみなさまのかなりの本音ではありませんか?
繰り返すと、ほしいものがない。
商売人がいちばん恐ろしい、この「ほしいものがない」は大チャンスなのかもしれない。
自分が本当にあればいいと思うものを、
自分のあたまで考え周囲に提供したらどうなるか?
おにぎりを最初にコンビニで売り出したのもセブンなら、
高価格帯(200円以上!)おにぎりをはじめて売ってみたのもセブンだそうだ。
どちらも売れに売れた。同業他社からさんざん真似をされた。

「このようにセブン-イレブンには数々のヒット商品がありますが、
もし発売前にアンケート調査などを行い、
「こんな商品が出たら買うか」と質問していたら、
「買わない」と[お客様が]答えたであろう商品も少なくありません。
それが、商品となって店頭に並んだ途端、お客様は手を伸ばすのです。
消費が飽和したいまの時代は、消費者は商品の現物を目の前に提示されて、
初めてこんなものがほしかったと潜在的なニーズに気づき、答えが逆転します。
現代の消費者は「いうこと」と「行うこと」が必ずしも一致しない。
消費者自身にも具体的なイメージをもって
「こういう商品がほしい」という意見がない時代なのです」(P117)


このたび偶然にたまたまセブンイレブンに興味を持って商品を食してみた。
これがうまい。この価格帯でこれほどうまいものがあることを知った。
そうなると、ほかのものを食べてみたくなる。
しかし、そのためにはコンビニ食品は高いから金が必要だ。
どうしたらお金を得られるのか大金持の鈴木会長に聞いてみよう。
各分野の成功者との交流もひんぱんにしているセブン会長はいう。

「「目先の百万円の売り上げのために、将来の一億円を失うことがあってはならない。
その点はこだわりをもってやってきました」
目先の百万円のために、将来の一億円を失ってはならない。
Francfrace[←なにこれ?]が便座カバーを置かないという話はとても教訓的です。
人間は、得られるはずの長期的な利益が多くても[1億円!]、
実感できるまでに時間がかかった場合[5年、10年、15年!]、
その[目先の]時間によって大きさが割り引かれてしまい、
目先の短絡的な利益[先々の1億円よりもいまの百万円!]のほうを
大きく感じてしまう傾向があります」(P205)


この鈴木会長の教えを信じて預貯金をすべて溶かすどころか
借金さえするであろうセブンオーナーがいるいっぽうで、
本当に実際に儲けている店主もいるのだから(いるいる!)、
まったくまったく本当にセブンイレブン創業者のいうことは「正しい」。
なにより運や偶然の存在を深々と認めているところが鈴木会長の偉いところだ。

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