「黒い手帖」

「黒い手帖」(矢野絢也/講談社)

→副題は「創価学会「日本占領計画」の全記録」。
元公明党委員長による創価学会の暴露本である。
矢野絢也は公明党議員を辞めたあと1993年に月刊誌「文藝春秋」に手記を発表する。
12年後の2005年になってそのときの記事が創価学会上層部で問題化する。
矢野絢也は議員時代黒い手帖に毎日あったことをメモしていた。
「文藝春秋」の手記は、この黒い手帖を元にして書いたと本文で書いていた。
公明党委員長もなれば、創価学会の表に出せない裏もいろいろ知っている。
それらがすべて矢野絢也の黒い手帖に書かれてある。
学会員は池田名誉会長を筆頭に人間不信で疑心暗鬼になるものが多い。
秘密を知られているかと思うと人間は不安がふくれあがるもの。
こうして創価学会上層部は池田先生をお守りするために
矢野絢也を社会的に抹殺することを決定する。
ある面から見たら美しい師弟愛だが、矢野絢也からしたらたまったものではないだろう。

社会的抹殺とは――。
政治評論家を辞めること。家を売って数億円寄付しろ。
「聖教新聞」等の学会機関紙(誌)による誹謗中傷。
複数の学会員による尾行、盗撮、恫喝、盗聴、嫌がらせである。
矢野絢也に本当の信心があったら、池田先生のためにすべてを耐えるべきである。
池田先生のおかげで矢野絢也は社会的地位と財産を得たのだから。
しかし、矢野絢也と言えば悪人相を見たらわかるよう、
自民党議員から公明党で使えるのは矢野だけ、
と喜んでいいのかわからない(それだけ腹が黒いということだから)
評価を受けている優秀な人物である。
2005年から3年間、学会からの攻撃に耐えたが2008年に造反する。
学会からすれば本物の「恩知らずの裏切り者」になったわけである。
まあ、それ以前に矢野絢也を「恩知らずの裏切り者」とさんざん誹謗したのは学会だが。
学会員は「恩知らず」という言葉を好むが、それは彼らが恩義を重んじているからだろう。
恩義というのはほとんど金のことが多く、
創価学会という組織は上に行けば上に行くほど恩(金)にこだわるようになる。

あの鬼のような顔をした矢野絢也でさえ創価学会は怖いのである。
青年部男子幹部5人から吊し上げを喰らったら、あの矢野でさえ謝罪文を書く。
土下座を要求され自分はしていないと書いていたが、
怒れる正義の青年部幹部に囲まれてあんがい土下座したのではないか。
なにしろ青年部幹部はこういう脅迫を平気で口にする。
谷川総という幹部だ(本人は言っていないと訴訟を起こしているらしい)。
「人命に関わるかもしれない」
「息子さんは外国で立派な活動をしている。あなたは息子がどうなってもよいのか」
さらに公明党OB3人にアポなし訪問され恫喝されたら、
すったもんだはあったにせよ結局あっさり黒い手帖を渡してしまう。
創価学会に呼び出されたら、あの強面(こわもて)の矢野が
繰り返し謝罪して寄付100万を求められたらあっさり払ってしまう。
矢野絢也は創価学会の裏を山ほど知っている男である。
氏は暴露本を何冊か書いているが、書いていない黒い秘密はまだまだあるだろう。
このためいまでも矢野は消されていない、という見方も可能である。
いざとなったらあれを公開するからなという秘密保守による自己防衛、逆恫喝だ。
創価学会の裏という裏を知り抜いている矢野絢也がこういうことを書いているのだ。

「正直に告白すれば、一つには学会が恐ろしかったからである。
臆病風に吹かれたわけではない。組織の中枢にいた私は、
学会の裏面を知り尽くしていたが故に、組織の怖さが身に染みていたのだ」(P25)


創価学会に逆らったら嫌がらせ程度ならまだよく、いわれもない罪で逮捕されることも、
片腕切断もあるし、最悪の場合は命を奪われることさえありうる。
あの鬼のような悪人顔をした矢野が震えあがるほど創価学会という組織は怖いのだ。
創価学会の組織行動でいちばん怖いのは日顕もやられた「でっち上げ」だろう。
矢野のまえに池田創価学会から粛清されたのは元公明党委員長の竹入義勝だ。
残念ながら悪だくみは失敗したようだが、池田創価学会は敵に対して容赦しない。

「公明党[創価学会]は竹入氏を相手どって「党の公金を横領した」と提訴したのだ。
党側は、竹入氏が一九八六(昭和六一)年、党本部で五〇〇万円を出金させ、
そのカネを、百貨店で妻に購入した指輪の代金に充てたと主張、
竹入氏に五五〇万円の賠償を求めた。
裁判では、その根拠として、党側が百貨店の店員の証言などを挙げたが、
二〇〇八(平成二〇)年三月一八日、
東京地裁が下した一審判決では「請求棄却」だった。
(……) 竹入氏は仮にも公明党の黎明期より委員長を長年勤め、
党の発展に多大な功績のある功労者である。
その竹入氏でさえ徹底的に貶(おとし)めようとする。
当時から、明日は我が身と思わないわけにはいかなかった」(P72)


ここで注目したいのはいろいろあるが、正義や友情など、どこにもないのである。
矢野絢也もかつての仕事仲間の竹入義勝が攻撃されているときに、
その苦境を知りながら助けに入らなかった。
竹入義勝からお世話になった学会員は大勢いたことだろう。
しかし、彼ら彼女らのだれひとりとして表立っては竹入の味方をしなかった。
多くの学会員は竹入義勝から受けた恩を忘れ裏切ったのである。
それどころか反対に機関紙を信じて、竹入を裏切り者や忘恩の徒だと攻撃した。
なぜそういうことをするかといったら、
いみじくも矢野が書いているように「明日は我が身」だからである。

創価学会の「でっち上げ」は天才レベルで、
学会正義にとりつかれるというのは怖いとつくづく思う。
もうひとつ本書で知った「でっち上げ」を紹介したい。
本文ではいささかわかりにくいので僭越ながら当方が噛み砕いて説明する。
創価学会と敵対しているおなじ日蓮系の妙観講というグループがある。
学会は妙観講を批判するビラを作り、本部道場周辺にばらまいた。
妙観講は学会を訴えたが、今度は学会が報復行動に出る。
妙観講には学会員を脱会させるのがうまいふたりの女性がいた。
ある正義の学会員の女性は、この妙観講のふたりを家に招待する。
説得にしたがったふりをして脱会届にサインをして本尊(偽物か?)をハサミで切る。
このあとで妙観講のふたりを警察に訴え出たのである。
妙観講の女性二人が宅配便業者を装って自宅に侵入。
無理やり脱会届にサインをさせ、強引に本尊をハサミで切断させられた。
創価学会(公明党)と警察上層部は通じているから、
妙観講のふたりが逮捕されてしまうのである。
わたしからしたら日蓮関係の内ゲバはどっちもどっちという感じがしなくもないのだが、
創価学会の暴露本を読んでいると正義や真実の意味が本当にわからなくなる。
新聞や雑誌に書かれていることだから真実とは限らないのである。

「学会による言論出版妨害事件が起きた一九七〇年代の頃からそうだったが、
学会を批判する記事の掲載が予定されると、
学会が事前にその情報を得られる仕組みができあがっている。
出版社や新聞社が伝えなくても、マスコミ関係者には学会員も多数いる。
マスコミ各社、印刷所などに入る学会員を通して情報があがり、
事前にゲラをチェックして、学会が問題ありと判断すれば、じんわり圧力をかける。
露骨ではないとしても、マスコミ各社は、何らかの考慮をするだろう」(P136)


巨大権力団体の池田創価学会にはアメとムチというふたつの武器があるのである。
アメは金(広告費)であり地位(役職)である。
創価学会の言論統制が最初にあきらかになったのは「言論出版妨害事件」。
このとき「創価学会を斬る」の著者に提示された条件は著作の買い取り、
NHK解説委員の就任だったらしい。
あの田中角栄からこの条件を持ち出され、
にもかかわらず蹴った藤原弘達という人には恐れ入る。
氏が死んだときには葬式に多数の祝電(弔電ではない)が寄せられたそうだが、
日々わずかな金と地位を切実に求めながら生きている学会員が
そういうことをしたくなる気持はわからなくもない。
大半はアメで解決するが、アメを受け取らないやつはムチでたたけ。
わたしはちょっとまえまで集団ストーカーなど存在しないと思っていて、
そんなことを言うやつは精神病かなにかだろうとバカにしていたが、
知り合いが経験したらしく、その話しぶりをこの目で見るとどうやら本当にあるようだ。
集団ストカーほど人を追い詰めるものはない。
精神の弱いものは集団ストーカーだけで自殺まで追い込まれるのではないか。
集団ストーカーは証明できず合法ぎりぎりなので、
こういう仏罰を考える創価学会のあたまのよさには毎度ながら感心する。
やり手で強面の矢野絢也でさえ集団ストーカーというムチには震えあがる。

「組織に付け狙われる恐ろしさは、被害を受けた人ではないとわからない。
何人かの尾行役は、たびたび見るのでわかるが、必ずしも彼らだけとは限らない。
私のわからない尾行者もいるだろう。
向こうはこちらの顔がわかっているが、私には見えない。
外に出れば歩いている、すべての人が敵に見えてしまい、常に怯(おび)え、
警戒しなければならない。相手が見えない恐怖ほど恐ろしいものはない」(P151)


電車でいきなり「この人、痴漢です」と手を取り上げられ、
「そうだそうだ、おれも見たぞ」と一斉に周囲が声を上げるかもしれないのである。
女子高生から「やめて」と大声で騒がれ、
ポケットにはなぜか指紋付きの手鏡が入っているかもしれないということだ。
か弱い女性が集団で殴られているのを見て止めに入ったら
逆に自分が暴力事件の主犯にされてしまうかもしれない。
宮本輝先生もいる創価学会のようなすばらしい団体を批判したり、
あまつさえ恩知らずにも裏切ったりするものは「悪」と思って間違いないから、
学会精鋭部隊のみなさんにはこれからも正義の活動に精進していただきたい。
いったいどれほどの人がいままで無罪で逮捕されてきたかと思うとゾッとする。

わたしはこのところしきりに公明党支持アピールをしているが、
これは身の保全のためもあるが(おまえなんか制裁する価値もないから大丈夫だよ)、
本当に公明党議員は偉いのではないかと思うところがあるからである。
どうせ選挙には行かないんだろう、とか、
口では公明党と言っても違うところを書くんだろうと疑われているかもしれないが、
けっこう本気で公明党に入れようと思っているのである。
ちなみにわたしは公明党の政策を知らないし(そもそも政治に関心がない)、
自分の一票で日本が変わるなど信じたことは生まれてから一度もない。
けれども、公明党である。

「公明党議員は、引退したあと、学会に多額の寄付をすることが、
暗黙のルールになっている。(……)
公明党の議員は、学会員の熱心な支持があって当選する。
議員でいられたのは、学会員の応援あってである。
だから、感謝の気持ちを表すために議員時代の蓄財はすべて学会に寄付し、
恩返しするのが当たり前……これが学会の論理なのだ」(P125)


実際、溝口敦の「昭和梟雄録」を読むと、矢野さんの豪邸はすごいらしいし、
日夜身を粉にして活動する青年幹部や庶民学会員が怒るのも
まったくわからないというわけではないが、
しかし同時に人には能力差というものがあるのだから、
優秀なものが少しばかり蓄財するのがそれほど悪いとも思えないのもまた事実だ。
矢野絢也もこれまで多くの人を世話してきただろうし、
学会の友人や仲間もいると思っていただろうが、
みんながみんな手の平を返したときはどのような気持になったのだろう。
学会員は池田先生さえ裏切らなければ、
たとえ恩のある仲間の学会員でさえいくら裏切っても構わないのかもしれない。
これまで数多くのものから慕われ、
そして同時に多くの手下から裏切られてきた池田先生はどのような人なのだろう。

「池田氏は自分と比肩(ひけん)し得るセカンド・マンはつくらないよう用心している。
側近は連帯しないように分断する。
たとえば池田氏は会長など最高幹部には特命を与える。
名誉会長から特別な指令を受けるのだから、特命を受けた人間は、
それだけ自分は池田氏に信頼され、
見込まれている、特別な存在なのだと思い込む。ところが、あるとき突然、
風向きが変わり、洟(はな)にも引っ掛けられないようになる。(……)
もっとも池田氏に深謀遠慮があって、そうしているのかどうか、外からはよくわからない。
特命にしても寵愛(ちょうあい)にしても、
多分に思いつきだと感じさせられることが多かった」(P166)


けっこうこれが真実の池田先生なのかもしれないとわたしは思うのだが。
池田名誉会長はもしかしたらチョーがつくほどのテンネンなのではないだろうか。
思いつきでころころ意見を変える定見がない自由な人だったのではないか。
そのうえ個々の師弟関係で情報が上がってくるから(先生に気に入られたい!)、
なにがどうなっているのか全体がつかめず、
だったらデタラメいいかげんにやってしまえと思っていたのではないか。
なにも考えていないテンネンの人は、とても深い人のようにときに見えるものである。
池田先生はなにも考えていないのに、手下のものがいろいろ考える。
矢野絢也もあたまがいいからいろいろ池田先生からは悩まされたことだろう。

「竹入氏と私は必ずしも一枚岩ではなかったが、それでも
「池田氏に仲がいいと思われると、ろくなことがない」と二人で話し合い、
池田氏の前では、あえて距離を置いている風を装っていたこともある」(P167)


みんな先生から認められたいから池田名誉会長にあることないこと密告して、
結果として先生の人間不信は高まるばかりで粛清がたびたび行われたのだろう。
矢野絢也を総攻撃するよう池田先生にご注進したのはいったいだれか。
一部には、警察ともヤクザとも昵懇(じっこん)の仲である藤井富雄ではないか、
といううわさもあるが、
今度は仕返しとして藤井富雄の息子あたりがねらわれるかもしれないのである。
長々と感想を書いてきたが、
いくら偉くなっても人生全体で見るとあんまり楽しそうではないのだなあ。
裏では上のほうってかなり通じていて、庶民は踊らされているだけなんだろうなあ。
創価学会は怖いから、絶対に敵として見なされたくない。
そうだ、そうだ、矢野絢也は恩知らずの悪党だ。
裏切り者はやっつけろ。それ行け、学会員! わたしは学会員を応援している。

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