「あの人と、「酒都」放浪」

「あの人と、「酒都」放浪 日本一ぜいたくな酒場めぐり」(小坂剛/中公新書ラクレ470)

→一流の読売新聞のお偉いさんであるインテリ記者が、
一流とされる権威どころと大衆酒場をまわったルポを本にしたものである。
取材費もふんだんにあったと思われ、ほんとうにいい本になっていたと思う。
この居酒屋ガイドを真似て酒場めぐりをするものも多数現われるのではないか。
なにせ一流新聞の主任記者が一流先生のすすめる居酒屋に行った報告である。
まったく自分のあたまで考えられない新聞愛読者のような大衆は、
まさにまさにまさしくこういうガイドブック(案内本)を求めているのであろう。
大多数の人間にとって、「他人の評価」がすべてである。
人生でもっとも価値のあるものは「他人の評価」だ。
「他人の評価」を真似て他人の快感を模倣して味わった気分になるのが一般大衆だ。
これは◯◯先生がこうほめていたからいいのよねえ、
と「他人の評価」を再体験するのが目的のために生きている人が大勢いる。
きれいごとをいえば「他人の評価」なんてどうでもよく、
自分の味覚にこそ真実はあるのだが、そういう態度は近所迷惑を起こす。
人生で「他人の評価」こそたいせつなものはないのである。
「他人の評価」の高い会社に勤めているものは偉い。
作家にとっては「他人の評価」たる文学賞をいくつ取ったかが人生の勝負だ。
多くの人の生きる目的は「他人の評価」を得るためだといってもよかろう。
「他人の評価」がすべてだ。自分の考えなんて持つな、言うな、抹殺せよ。
自分ではなく他人を生きろ。「自分の評価」がなんになる?
「他人の評価」を求めるのが人として「正しい」生き方だ。

本書でグッときた箇所を紹介したい。
エリートの読売新聞記者が、居酒屋評論の大御所、太田和彦氏と一流居酒屋に行った。
やはり一流の人は一流で記者さんは
大御所おすすめの「えびしんじょう」を口にして「本当のこと」をいってしまう。
「おいしいですね。豆腐コロッケみたい」
居酒屋評論の天皇陛下、最高権威の太田和彦氏は読売記者をあざ笑ったという。
「豆腐コロッケみたいのと比べられちゃ困る。エビだよ、エビ!」
世間では「他人の評価」が絶対的に「正しい」と思っていたほうがいい。
豆腐なんかよりもエビのほうがうまい、価値があるというのが「他人の評価」だ。
世の中というものは「他人の評価」が網(あみ)のようにはりめぐらされており、
なるべくならそれに逆らわないほうが自分もまた「他人の評価」を得られる。
一流居酒屋エッセイの本書から学んだのは「他人の評価」こそ「正しい」ということ。
世間でおいしい思いをしたかったらゆめゆめ「自分の評価」などするなかれ。
すべて「他人の評価」に従って他人のあたまで考え、
他人の目でものを見て、他人の耳で情報を聞き、そしてそして、
いかに他人の舌で酒をのみものをくらうかがこの世で勝利するためのテクニックである。
「えびしんじょう」を食べて「豆腐コロッケみたい」といってはならない。
エビは豆腐よりも偉いしうまい。なぜなら「他人の評価」がそうだからである。
「自分の評価」など捨てろ。「他人の評価」に盲目的に従え。
じつにいい人生指南書を読んだという満足感でいっぱいだ。
酒好き必読の書。ここに正義が書かれているから、あえていいたい。絶対に読め!

COMMENT

美杳 URL @
09/15 01:50
. 他人からの評価はとかく移ろいやすいものですから、そんなものを人生で最も大事だと考えている人はほぼ確実に不幸になるでしょう。どんな分野でも高い評価を得るのは難しいが、それを維持するのはもっと難しい。文学賞を獲ってもその後消えてしまった作家など無数におります。そのことは、一応は有名大学の学歴を獲得したのにその後どんどん没落していった土屋さんが一番よく知っているのではないですか。

このブログ全体から不幸のオーラが漂っていますが、私に言わせれば土屋さんはまだまだ不幸の度合いが足りない。一度もっと本格的に不幸になってみればいいのです。たとえば投獄されるとかね。

そうすれば、日常生活のごく単純なこと、たとえば自由に散歩できること、酒が飲めること、古本屋めぐりができること、そういった生活がいかに恵まれているか実感できるでしょう。人生で最も大事なことは、多分そういう平凡なことです。
Yonda? URL @
09/21 19:14
美、香さんへ. 

池田さんみたいに投獄されたら美 香さんと親しくできるのでしょうか?








 

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