死んでもいいから

西村賢太のようだけれども、多汗症の気がなくもないのである。
気にしていたが、気にしてもしようがないので、気にしていないふりをしていた。
本音ではいちばん気にしていた、わたしのいちばんの弱点だった。
そういう人のどうしようもならない身体上の弱点を笑いものにするのは、
わたしの感覚では女がするものであった。
毎日、時給850円の職場でみなさまから「ふつうの人」の感覚を学んでいる。
わたしの汗っかきをバカにして笑いものにしていじめてくるのは男なのである。
男性3人が休憩室で、わたしにも聞こえるように、
これ見よがしに「土屋って汗っかきできもいしくさいよねえ」と大声で雑談していた。
ほう、そう来ましたか、と瞬間思ったものである。
さらに驚いたのは、その瞬間に休憩室にいた老若男女全員が、
あたかも同意したかのように大声で一同笑したことである。
たとえれば、創価学会の池田大作がなにかを言って、みんな大笑いするあの感じ。
ふーん、とも、おお、とも思った。やはり人間ってこんなものなのだなあ。
異質な人間がひとりでもいたら、みなで排除しようとする。
ひとりで面と向かっては言えないことでも、群れて集団でならなんとでも言える。
「人間なんて、そんなもの」
――はわたしが山田太一ドラマから独学(誤読)したゆがんだ人間観である。
まあ、人間ってそんなものだよねえ。
本当のところわたしは汗っかきだから、
いちばん気にしている(指摘されたらいちばん傷つく)本当のことを、
おおやけの場でみなからあざ笑われても、まあ人生そんなもの、人間そんなもの。

むかしは若い医者が嫌いだった。
そして、女の医者は目を合わせたくないほど苦手だった。
人は変わるものでいまは若い女医先生が大好きである。
なんでかって、こちとらもうおっさん(高齢者)だから、
「この薬がほしいので出してください」とけっこう高圧的に言えるからである。
やはり読書経験の豊富(ちなみにこれはなんの意味もない)が悪影響して、
顔のふしぶしに他者を不快にさせる威圧感が出ているのだろう。
臨床経験が少ない女医など、わたしにかかれば赤子の手をひねるようなもの。
「汗をストップさせる薬」というものがあるのである。
劇薬と思い込んでいる医者も多く、医療処方されるのは難しいとも聞く。
むかし某所で処方していただいたことがあるけれど、たしかに副作用が非常に激しく、
薬で副作用なんて感じたこともないタフなわたしもクラクラになるくらいの
ダメージがある(口が渇く、ゆえに話せない、あたまが痛くなる、注意力散漫)。
しかし、その薬は西洋医学の結晶とも言うべきもので、
本当によく効くのである。もう名前を出しちゃおう。プロバンサインだ。
プロバンサインはめったに出してくれないぞお(ネットで見た感じ)。
若くてお美しい女医さんだったら、こちらの「こわもて」で一発解決である。
血圧とか尿酸とか、そんなくだらねえ症状で通っている近所の病院の
(医院長ではなく)週1回の通院医の若い美人女医に「プロバンサインをください」。
あなたにほかの選択肢はないんです。ただ一択、「プロバンサイン」。
お薬辞典を調べる女医にたたみかける。
「1日何錠までOKですか?」「4です」「でしたら4でお願いします(ふつうは多くても3錠)」
有無を言わせぬ命令形である。
さすがに若い美人女医よりもわたしのほうが「偉い」だろう? え、違う?

とにかく、プロバンサインは副作用がすごいのである。
これをのんでいたら絶対に身体に悪いし、早死にすると思う。
でもさ、あはっ、わたし、べつに長生きしたくないから、これ最強。
汗対策のため朝食も昼食もとらずに(なにか食べると効かなくなる)、
空腹でプロバンサインを3~4錠一気にのんで時給850円のアルバイトに行く。
たしか1日のマックスは4錠だが、バイト中にもがんがんプロバンサインを服用する。
1日8錠くらいのむこともあるのではないか。
もちろん、医学的にはアウトだが、べつに死んでもいいから。
「あいつ汗くさい」「きもい」「そばに近づきたくない」
と(女ではなく)男集団から陰口をこちらに聞こえるように言われたのがショックだった。
これはかなりむかしの話でいまさら恨んでいるどうこうではない。
へーえ、人間って大人になってもそんな子どもっぽいいじめをするのかあ。
それに同調して、あたかも新興宗教のように、みんなで本当にみんなで大笑いして、
ひとりぼっちの人間を追い詰めるんだ。たいへんな社会勉強になりましたねえ。
バイトに行く日にプロバンサインを大量服用できるのは、
休日にはまったくのんでいないから。
そのうえ、若年女医や利益重視の薬局の問題もからんでいて、
詳細は書けないけれど大量処方が可能なのである。
とはいえ、プロバンサインをのんでさえも、きついところに振られたり、
こちらの体調が悪いと、汗をかいてしまうことがある。
本当に職場のみなさまにはご迷惑をおかけして申し訳ないことだと思う。
読者さまにプロバンサインは絶対、絶対におすすめしない。
なぜなら、あれは絶対に身体に悪いから。
たぶん寿命が縮まるし、変な病気になる確率も高まるだろう。
わたしの場合、まあ死んでもいいから。
お盆休みで暇だったのでカウントしてみたが、
わたしが死んでも悲しむ人は五本指で足りるのであった。

COMMENT

abc URL @
08/17 16:25
東洋医学的アプローチの方が。. たぶん東洋医学的に言うと、
体の陰陽のバランスが少し
くずれているのだと思います。
太極拳や鍼灸、食事のバランス
などが良いのではないでしょうか。
yonda? URL @
08/20 08:50
. 
キミのご主人さまはきもくないしくさくないです!
そんなこと言うひとは、ぼくはゆるしませんからね。
Yonda? URL @
08/23 15:04
yonda?くんへ. 

ああ、懐かしいなあ。
昨日、小谷野敦さんからメールが来て驚きました。
うちのヨンダくんは最近、元気ないです。
新潮社からも切られてしまったし。
Yonda? URL @
08/23 15:14
abcさんへ. 

早くこの世から消えたいという自滅願望がございまして。
アドバイス、ありがとうございます。








 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/4224-f6304a73