「河合隼雄の万博茶席」

「河合隼雄の万博茶席 しなやかウーマンと21世紀を語る」(河合隼雄・塩野七生・藤ジニー・中山恭子・向井千秋/中日新聞社)

→しなやかウーマンって気持の悪い言葉だよなあ。
心理屋さんの元締めである河合隼雄さんと
各界で成功したしなやかウーマンとの対話集である。
女で社会的に成功した人は男よりもはるかに少ないから目立つのだろう。
河合隼雄は心理療法を女性原理の強い仕事だという。
まず相手を受け入れるのが心理療法だという。

「……女性原理の非常に強い仕事ですね。
「この原理でやろう」ではなくて、来られた人がどう考えているかですから。(……)
その人が酒好きだったら「やめなさい」と言わないですね。
そう言うのは簡単ですけどね。
「酒が好きですか。タバコも好きですか。長生きもしたいですか。
難しいですねー」と(笑)、
そこから一生懸命考えるわけですから」(P19)


だれだって「酒を飲むな」とか「正しい」ことは言えるけれど、できないもんね。
自分はできるかもしれないけれど、相手に「正しい」ことを強制できない。
バイト先のママさんに聞いたらさ、中1の息子さんにお説教するんだって。
もうすぐ期末試験だから勉強しなさいって。
ねえねえ、お母さんは子ども時代、勉強した? 
って聞いたら、してないって笑っていた。
「正しい」ことをはみんな言えるんだよねえ。
けれど、できない。相手にさせられない。
時給850円で一生懸命全力で働いてくださいは「正しい」んだけれど、ちょっとねえ。
「正しい」ことと言うのはイデオロギー(理念)である。
河合隼雄いわく、二十世紀はイデオロギー(「正しい」)の時代だった。

「二十一世紀というのは、
何か矛盾したものをずっと持っていく時代じゃないかと思っているんです。
これが勝負。二十世紀は一つのものをパンとやる。
一つのイデオロギーで頑張るとか、科学で頑張るとか。そういう時代だった。
二十一世紀は矛盾するものを持って倒れないというか。
そういう時代ではないかと」(P103)


はっきりした「正しい」ことを言えない、むしろ言わないのがいいのかもしれない。
そういうとき、日本語はなかなか便利らしい。

「それと日本語はあいまいな表現が多いでしょ。
それを使いながらお互いに探って、答えを出していくような」(P66)


しかし、どう説得したところで酒好きに断酒させるのは難しいよなあ。
勉強が嫌いな子どもに勉強させるのは難しい。
いい師匠につけたらどうかと思うが、これも河合隼雄は否定する。

「師範代の人はね、真剣の勝負をしないんです。
だから、木刀が強くなるんです。それと守るのが強い。(……)
保身ですね。大学の先生は正しいことを言っておられるけど、
新しいことは何も言わないでしょ。
攻めの学問をせずに、守りの学問に入るわけですよ。
そうなるとその人はダメ。
ダメなのに給料もらうから、よけいダメになるんですね(笑)」(P43)


バイト先に大学院に行っている外国人がいて、研究内容を聞いてみると、
失礼ながら、どれもぜんぜんおもしろそうじゃないんだよねえ。
そんなの研究してどうするの? なんの役に立つの? 
とか聞いちゃうけど。苦笑される、そんなこと聞くなよって感じで。
思えば、いまのバイト先は本当にいろんな人がいるなあ。
なかには芸術家くずれみたいなやつもいるのかしら。いたら怖いな。だって――。

「芸術家というのは我々が当たり前に思っていることを、
どこかで外してつくるわけですから。
だから我々は違う世界に入っていける」(P145)


毎日つまらないったらつまらない。
芸術家のような人に違う世界に連れていってもらいたい。
世界ってほんのちょっと見方を変えるだけで輝きが増すのはわかっているんだけれど、
それがなかなか難しいというのか。
そんなことより、人生これからどうしたらいいのか。
資格でも取って就職活動するのが「正しい」というのはわかるんだけれど。
「正しい」ことはわかるんだけれど、もういい年だし、いまさら感があってねえ。
こんな本を読んで感想を書いている場合じゃないよなあ。

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