「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」

「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」(木暮太一/星海社新書)

→これはもう本当にいい本で雇われ労働者は読んでみる価値があると思う。
今日、会社に持っていって事務所に置いておいたら、
社員さんたちみんなで回し読みをしてくれないかなあ。
あんまり大きな声では言えないけれど、パートはみんな疑っているんだよね。
午後の社員って事務所でくっちゃべってるだけじゃないかって(笑)。
わたしは絶対にそんなことはないと思っているけれど。
とはいえ、ある本を読んでもどこまで内容を理解できるかは人それぞれ。
読み込むパワー(体験、知識)に欠けていると本書の価値はわからないと思う。
いまの会社に1年パートとして雇っていただけたから、この本のよさがわかる。

バイト先で社員を見ていると、社員の気持になってしまうのである。
この人たちはなにを考えて生きているのかわからない。
というのも、自分に正社員経験がないから。
「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」――。
本書のキモはある問いである。
どうしていくら努力しても給料は上がらないのか?
パートだけではなく社員も給料は上がらないのかと驚いた。
著者は日本の会社ではがんばっても給料が上がらない仕組みを解説する。
答えは、日本の給与形式は成果主義ではなく必要経費方式だからである。
明日また会社に来て働いてもらうための必要経費として給与は支払われている。
このため、年齢が上がるとそのため必要経費(子どもの学費等)が増えるとみなされ、
「どうしてあのおじさんたちは働いていないのに高給なの?」
という疑問が若い社員のあいだに生まれるわけである。
年齢が高い社員は毎日の必要経費が高いから給料も高いのである。
会社として社員に求めているのは、明日もまた会社に来てくれること、その一点。
そのために給与は支払われていると考えたほうがよい。
会社に利益をもたらしたから、その分として給料が与えられているわけではない。
一般に給料が高いとされる職種は極めてストレスも高いため、
そのストレスを解消するための必要経費が高いから高給与なのである。
したがって高収入の仕事に就いてもあまり貯金は残らない。
東南アジアの日系企業現地採用の人の給与が激安なのは、
かの国での生活維持必要経費が極めて安いからである。
医者の給料が高いのはストレスが高いのもそうだが、
スキル習得費が高いがためである。
何回もおなじことを繰り返したほうが理解も深まると思うので、
著者の言葉を借りてみよう。

「わたしの昔の職場には、「あのオジサンたちはなんにも仕事をしていないのに、
自分たちよりも給料が高いのはおかしい」
というような不満を言う若手社員がいました。
でも、くり返し説明しているように、
給料は成果を出しているかで決まるわけではありません。
その「オジサンたち」の生活費が高く、
「明日も同じ仕事をするために必要な費用」が高いから、給料が高いだけなのです」(P84)


日本の会社員って理不尽な人生を味わっているんだなあ。
うちの会社はある程度まで残業代がつくらしいけれど、
サービス残業なんてやらされたら。
結局、企業が利益を上げるとしたら人件費を切り詰めるのがいちばん楽なのである。
原材料費を下げろと言っても、必要な機械を安くしろと言っても限界があるのだから。
人間を奴隷のように酷使すればするほど会社の利益が上がるのだけれど、
おっさんはそんな酷使されたら壊れてしまうので(うつ病→ドロップアウト)、
いまは若い社員が必要以上に奴隷あつかいされ、
おっさんが高給を取っているのだろう。

「企業にとっては、労働者が1日働き終えたあとにへとへとになっているのが
「好ましい状態」です。個別の企業で程度の差はあれ、
これは資本主義社会のなかでは必然の流れなのです」(P124)


これは言っちゃいけないガチンコ発言だよねえ。
労働者をへとへとに疲れさせたら彼は考えることができず、食べて寝て、
翌朝また出社してくるしかないのである。
現状への不満も気づかないほど労働者はへとへとにさせるのが好ましい。
新しい知識や技術なんて習得されたら困るって話になるわけだから。
わたしがバイト先できつい作業をいやがるのはへとへとになりたくないから。
メインは読書や映画鑑賞、その感想をここに書くことなので。
へとへとになったらあたまが働きませんよ。

おなじ仕事をしていても給料の高いところと低いところがあるじゃない?
あれは大企業だから給料が高いとかみんな思っているが、そうではない。
会社の利益が多く上がっているほど給料が高いとか、そんな連関性はない。
ではなぜ給料が低い会社があるのか。
これに対する回答が、なんていうか、それを言っちゃあおしめえよというか。
本当のことなんだけれど、虚を突かれた。

「会社の利益が少ないから、社員の給料も少ない」のは、
「給料が少なくても他社に転職しない社員がいるから」です。
利益が少ないといっても、「そんなことは関係ない。
自分たちは給料を高くしてもらわないと他に行くぞ」という社員ばかりであれば、
給料を上げざるをえません。
昇給ができない企業はそこで廃業するしかないでしょう」(P91)


わたしはいまの会社は利益が上がっているけれど、
社員の給料は少ないのではないかとにらんでいる。
あれだけコストダウンしてパートの入れ替わりが激しい(使い捨てともいう)会社だ。
絶対に利益は上がっていると思うのである。
パートの給料が上がらないのは、
まあ致し方ないが社員の給料は上げてやればいいいのに。
会社の上のほうが血縁でコネコネしていそうだから、そのへんが関係しているのかも。
よくわかりませんけれどね。
あの社員さんたちが決して高くなさそうな給料にもかかわらず、
いまの会社で働いているのは、
「自分たちは給料を高くしてもらわないと他に行くぞ」と言わないからなのか。
日本の会社ではいくら社員が努力して利益を上げても
給料の変わらないところが多いのか。ちょっぴりボーナスをもらうくらいで。

努力すればするほど労働者の価値は下がっていくというのはよくわかる。
うちの職場なんてひどい話で、「速くやれ、早く帰れ」の世界だから。
1分でも早く仕事を終わらせ、1分でも早く帰れって社員が言ってくるの。
がんばればがんばるほど給料が下がるという奴隷制かなんかですか? みたいな。
いやあ、読者さまはご存じないでしょうが、下のほうにはすごい世界もあるんですぞ。
これはもう努力するほど労働の価値が下がるの典型ね。ここまでの典型はない。
一般的な会社員の話に世界を広げると、
社員ってさ、みんなでみんなを洗脳しあうじゃない?
業績を上げよう、とか。これは優秀に見られたいという承認欲求のためなんだけれど。
みんなが業績を上げようと努力しちゃうでしょう?
サービス残業とか、家でまで仕事をするとか。
そうするとそれをやらない人が「使えない」とか言われちゃうわけ。
みんなが努力するから自分も努力しなければならず、
みんなが精一杯努力しているとだれかの努力が目立たなくなってしまう。
ラットレースとか、そんな表現を著者はしていたけれど。
ノルマとか決めて競争させるのが
経営者にとってはいちばんおいしい奴隷からの労働搾取方法なのだろう。
もっと上を目指そう、もっと速く。
よし、みんなの努力でこれができた。なら次はもっと上を目指そう、もっと速く。
これを命令しておいしい思いをするのは汗をかかないトップである。

では、どういう働き方をしたらいいのか。
著者の提示するのはふたつの働き方である。
1.楽しく働こう
2.「積み重ね」のある働き方をしよう。
まず1から説明する。
会社の利益はこうなっている。「売上-経費=利益」
これを個人に当てはめてみようと言うのである。
「仕事の満足感(楽しさ)-労力・疲弊度=自己内利益」
あんまり細かく書くとみなさんが考えなくなっちゃうから、まあストレスって話だよね。
ストレスが多い仕事はどんなに給料が高くても割に合わないってこと。
2の「積み重ね」とは、
働いているうちにどれだけ自分の知識や技術が蓄積されるか。
バイト先に本業が携帯ショップの販売員の人がいる。
携帯は毎年変わるから知識の「積み重ね」はできないんだよね。
接客技術は、まあ向上するかもしれないけれど。
著者は「労働力を投資する」という新しい考え方を持ち出している。

「自分の労働力を投資し、土台を作るために考えるべきことは、
「目先のキャッシュ」を追い求めないことです。
残業代、インセンティブなど、目の前に見える「ご褒美」につられてしまうと、
どうしても長期的な視点がないがしろになってしまいます。
自分の労働力が投資できる仕事とは、その経験が「将来の土台を作る仕事」です。
一方で、目先のキャッシュを追い求める仕事とは、
時給は高いが「将来に何も残らない仕事」です」(P241)


「労働力の投資」とは貯蓄ではないから、無駄になってしまうこともある。
株に投資した場合でも、価格がどんどん下がっていくこともある。

「労働力を投資するときも、まったく一緒です。
将来のためと思って行動しても、まったく役に立たず、
その日の労働が無駄になってしまうことも多いでしょう。
そのとき、「やっぱりあのとき、もっと日給が高い仕事を選んでおけばよかった」
と後悔するかもしれません。
でも、それで「労働力の投資」をやめてしまえば、
いつまで経っても土台はできません。
永遠に全力でジャンプし続ける働き方になってしまうのです」(P240)


もしかしたらいま自分は労働力を投資しているのかもしれない。
いまのバイト先はいろいろな人が働いているからおもしろいのである。
笑いのネタのようなものを取ってくるとヤッタゼエとか叫びたくなる。
あんまり上のほうの社会じゃないから、知らない発見があっていろいろおもしろい。
それに時給850円で働いたことのある人って少ないでしょ?
いろいろな人がいて本当におもしろいんだけれど、意外と知られていない。
正直、金銭的には見合っていないけれど、土台を作っていると考えたら。
それともこの労働力の投資は将来まったくの無駄になってしまうのか。ギャンブルっす。
成功者の著者は10年積み上げれば、
ひと角のものになるとか書いているけれど本当かなあ。
わたしなんか10年近く読書感想文を書いてきたけれど、なにか積み上がってますか?
評価してくれる人なんているのかしらねえ。

最後に偉ぶりたいから、著者の認識の過誤を指摘しておこう。
宝くじで1000万当たった。
1.今日、全額もらう。
2.毎年、100万ずつ10年かけてもらう。
著者は2のほうがいいと書いているが、わたしは1のほうがいいと思う。
なぜなら自分が死んでしまうリスクがある。
そのうえハイパーインフレの危険性がある。
ねえ、ぼくってあたまがいいでしょう(笑)。

では、これはどうか。
1.1年間死ぬ気でがんばって、向こう10年間、
毎年100万円の収入を生み出す資産を作り上げた。
2.1年間死ぬ気でがんばって、1000万稼いだ。
著者は1を選んだほうがいいと書いている。
ぼくはさあ、1も2もいやだな。死ぬ気でがんばりたくなんかない。
死ぬ気でがんばって結果うつ病になってしまったら、
どんなにお金があっても人生が楽しめなくなってしまうではありませんか。

最後にちょっと批判したのはご愛嬌。
しっかし、この成功者もおれより年下なんだよなあ。まいっちゃうぜ。
ともあれ、考えさせられるとてもいい本でございました。
みなさん、この長文感想を読んだら満腹で、もう買いたくなくなっちゃうね。

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