「阿含の教説」

「阿含の教説」(雲井昭善編訳/「仏教聖典」平楽寺書店)

→阿含経(あごんきょう)の成立時期はかなり早いと見なされているため、
大乗仏典などと異なり釈迦の実際の教えがかなり入っているとされる。
で、お釈迦さまの教えだからありがたいというのは間違えで、
釈迦の説教は非常につまらない。このひと言に尽きる。つまらないんだ。
正しいことを教えられたって、それができないからみんな苦しむわけ。
我われはいつも将来の不安におびえ、過去の失敗をくよくよ思い悩むものである。
過去になにかをしていれば、いまもっとうまく行っていたのではないかと悔やむ。
そのうえ、これからいったいなにをしたら将来うまいこと行くか迷う。
釈迦は正しい真理を言う。言うのはかんたんなのである。

「過ぎ去ったことを悲しまず
来(きた)らぬことにあこがれず
現在によって生存させるとき
その顔色は浄まる。
来らぬことを貪ぼり求め
過ぎ去ったことを悲しむとき
愚かな人びとはそのために
刈りとられた緑の葦(あし)のように萎(しぼ)む」(P205)


これってバカになれってことでしょ? 廃人のすすめと言ってもいいのかもしれない。
統合失調症(精神分裂病)発症後に人格レベルの下がった人とかが理想なわけ。
精神病院のベッドで日がな笑顔でいる人なんか本当はブッダなのかもねって話。
ニコニコしていたらいいんだけれど、ニヤニヤされたらちょっと気持悪くて困るけれど。
釈迦の言っていることはまったくそうで将来の心配をしてもどうにもならないんだ。
貯金なんていくらあったってハイパーインフレが起こったら終わりなんだから。
資産を不動産や株式、ゴールドに分散しているから大丈夫って、それはまやかし。
酔っぱらった車がドーンと来たり、地震がガーンと来たら計算高い人生もその場で終了。
アハハ、いざとなったら生活保護があるさと気楽に構えていたらいいのかもしれない。
いまのバイト先に生活保護受給中の人がいるけれど、けっこうかんたんに取れるらしい。
あの人に悩みなんてないのかもしれないなあ。
過去のことはどれも取り返しがつかないから悩むだけ無駄なのだが我われは悩む。
自死遺族とか一生後悔しつづけるわけだから、
このブログを読んでいるよい子の少年少女は軽々しく自殺なんかしちゃいかんよ。
でもさ、これは経験から言うけれど、
自死遺族に過去のことを思い悩むなと正しいことを言っても意味がないんだ。
やたら世間のみなさんはそろって「正しい」ことにこだわっているようだけれど、
「正しい」助言や意見って役に立たないというか、むしろ有害でさえあるのではないか。

うちの職場の最高責任者のお名前は「正(ただし)」さんなんだけれど、
親からそんな名前をつけられたら困っちゃうよねえ。
名前がよかったのかまだお若いのに会社では出世頭でみなから慕われている。
さてまあそれはそれとして「正」だけではなく、「真理(まり)」とかもそう。
「真実(まみ)」とかも、いまは少ないだろうけれど、つけられたらウゲってなる名前かも。
阿含経でさあ、釈迦が一丁前に他宗批判をしているんだ。
このエピソードはジャータカにも出てきたから、
当時インドで愛された説話だったのかもしれない。ちょっと話を都合よく変えて紹介する。
ある国の賢い王さまが正しい真理とはなにかと議論をふっかけられたことがあったという。
王さまはお鼻が長いあのゾウさんを宮廷に呼び寄せた。
そしてその巨大なゾウに真理という名前をつける。
それから王さまは国中から百人の盲目の人をお城に召集する。
さらに王さまは百人の盲人をゾウのところに連れていった。
あるものはゾウの足をさわり、あるものは鼻を、またあるものは耳をさわったという。
その後、王さまは百人の盲人にゾウとはどのようなものか説明させた。
それぞれゾウのさわった箇所が異なるので百人百様でまったく意見が異なった。
しかし、それぞれ「正しい」のである。
どの意見も正しく「真理」という名前のゾウのことを説明しているのは間違いない。
賢い王さまは論敵にこう答えた。正しい真理というものはこういうものであると。

賢い王さまではなく愚かな中年パートのわたしが話を引き継ぐと「現実」もそうだと思う。
みんなそれぞれの「現実」を見聞きしていて、
それこそ本当の唯一の「現実」だと思っている。
ところが実際の「現実」は千人いれば人の数だけ様相の異なる「現実」があるのだろう。
信じられないような悲惨な「現実」も、ありえないようなラッキーな「現実」もある。
「あいつは現実を知らねえ」なんて子どもに説教する親の知っている「現実」なんか
ぜんぜん大したものではなく、人間の想像を超えるような「現実」はいくらだってあるはず。
テレビや新聞にだまくらかされてひとつの「現実」があるような幻想を
我われはいだかされているけれども、「現実」はそうではないかもしれない。
だれも巨大なゾウさんのような全体の「現実」は
わかっていないという可能性も大いにありうる。
正しい「現実」は「真理」同様、人間にはわからないというのが正しい「真実」かもしれない。
しかし、我われはある国の盲人のようにどうしても自分の見聞きしたものだけが
本当の正しい「現実」や「真理」であるかのような思い込みを捨てることができないわけだ。
そして、わかったふりをしたがる。
あたまが固い新聞やテレビが大好きな老人がさあ、
自分は若いもんより「現実」を知っているとか思っちゃう。
あいつらにはうんざりげんなりしちゃうよねえ、お釈迦さま。

(参考記事)
「経典のことば」(中村元訳/「原始仏典」筑摩書房)
「長老の詩(テーラ・ガーター)」(早島鏡正訳/「原始仏典」筑摩書房)
「長老尼の詩(テーリー・ガーター)」(早島鏡正訳/「原始仏典」筑摩書房)

COMMENT

東方不敗 URL @
05/16 23:16
ミリンダ王の問. そりゃ、ミリンダ王も悩みますわ。
東方不敗 URL @
05/16 23:19
ミリンダ王の問い. そりゃ、ミリンダ王も悩みますわ。
Yonda? URL @
05/17 10:34
東方不敗さんへ. 

白痴に近いほど人は幸福に接近できるのでしょう。
東方不敗 URL @
05/17 13:39
Yonda?さんへ. >白痴に近いほど人は幸福に接近できるのでしょう。

涅槃に入ると恍惚感に包まれるんですかねぇ?

どうなんでしょ?
Yonda? URL @
05/17 23:05
東方不敗さんへ. 

不幸のどん底ってヒリヒリするような快感がございますですよ。
安定とか社会的信用とか捨ててみるのも一興でございますでね。
東方不敗 URL @
05/18 00:01
Yonda?さんへ. >安定とか社会的信用とか捨ててみる

「男はつらいよ」見たことないんでしたよね?Yonda?さんに見てもらいたいなぁ。
寅さん、ノマドワーカーみたいで惚れますよ。

あと、ボブ・ディランの「ライクアローリングストーン」を思い出しました。
Yonda? URL @
05/18 21:11
東方不敗 さんへ. 

機会があったら見てみます。
東方不敗 URL @
05/18 23:08
Yonda?さんへ. 寅さんになんてこと言うんだ ゆるせねーよ。

でも、高学歴には、な~んも反論できないんですよねぇ。

男はつらいよ。








 

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