「創価学会Xデー」

「創価学会Xデー」(島田裕巳・ 山村明義・山田直樹・溝口敦・他/宝島SUGOI文庫)

→日本文化論をやるなら巨大権力団体の創価学会は外せないのだが、
これはもうだれも手がつけられない日本戦後史のタブーになっているような気がする。
むかしは貧困層が中心だった創価学会だが、いまでは富裕層も多い。
政治、経済、マスコミあらゆる権力機構の要職に学会員が入ってしまっている。
このためうっかりなにか言うと、へたをすると食い詰めかねないのである。
一夜にして仕事がなくなってしまうような事態も絶対に起こらないとは言い切れない。
末端会員はいい人たちばかりなのだろうが、
現在において創価学会はそれほど怖ろしい権力団体に成り上がってしまった。
果敢にタブーに挑戦した学ぶところの多かった本書でも指摘されていたけれど、
創価学会は敵を作ることで連帯を強めてきたが、
いまはもうほとんどの敵に勝利してしまっているのである。
政治も創価学会の集票力をもはや無視することはできないから、
あの団体はもう完全に日本を牛耳ることに成功したのではないかと思われる。
最後の問題は名誉会長の池田大作氏の死後どうなるか、である。
アンチ学会は池田大作氏の死亡を
いつかいつかと舌なめずりしながら待っていることだろう。
しかし、わたしは現在87歳の池田大作氏は死なないと思っている。
少なくともこの文章の書き手よりも早く死ぬことはなかろうと思っている。
なぜかは「死」とはなにかを考えればわかる。
「死」とは医者が死亡診断書を書くことなのである。
というのも、創価学会にはおかかえの優秀な医者が複数いる。
老いさらばえた池田先生の煩悩肉体を冷凍保存でもなんでもしてとりあえずストップして、
その状態で医者が死亡診断書を書かなければ名誉会長は永遠に生きられることになる。
少なくとも100歳まではこの手を使えるからあと13年は死なないと思う。
こちらはあと13年生きていられる自信がないから、
とってもゲスな興味があるけれども池田大作さんの死を見ることはないだろう。

創価学会ウォッチャーとでもいうのだろうか。
わたしは下世話な関心から創価学会のことがとても好きである。
たぶん浅い学会員さんよりも創価学会のことに詳しいだろうし、
かなりの深い学会員さんよりも教学を妄信的にならずに勉強しているつもりだ。
学会員の好きな勝った、負けたをやりたくないから論争からは逃げるけれど。
絶対に折伏(しゃくぶく/勧誘)しないと約束してくださるのなら、
社会勉強として座談会やらなにやらを見学させていただきたいくらいである。
世知長けた学会員さんは損得勘定に細かい。
学会員さんは損をすることをとにかく嫌う。
彼(女)らが熱心に選挙活動やら財務(上納金)をするのはみな功徳のためである。
ならば、返報性の法則を期待してまずこちらから差し出そう。
忙しい学会員さんは、こんな本を読む時間はないでしょう?
お読みにならないでもいいようにわたしがおもしろいと思ったところを紹介する。
学会員さんのみならず人間は権威に弱い。
有名どころの田原総一朗の言葉から。
田原は池田大作と田中角栄の共通点をこう説明する。

「田中さんと池田さんの共通点というのは、
世の中は不条理で矛盾だらけだということを知っていたところだったと思います。
インテリは、世の不条理を論理で処理しようとする。
でも両人は、世の中が論理なんかで整理できるもんか、
理屈は後からくっつけるもんだというスタイルです。
エネルギッシュで明るくて、困惑するような事態になっても笑い飛ばしてしまう。
典型的カリスマです。おそらく、そういうものを
庶民が求めているということがわかっているんでしょう」(P26)


創価学会の問題点はなにか。
インタビューで創価学会の功罪を問われて田原総一朗はこう答えている。

「罪の方から先に言うと、ものを考えない人を大量生産してしまったということでしょうか。
ものごとについて、どうすべきなのか、どうした方がいいのかを考えず、
信じればそれでいいというのが宗教ですから。
キリスト教だって、マリアが処女のまま懐妊し、キリストは死後に復活したなんて、
どう考えても理屈に合わない。
だけど、そうなんだと信じるところから信仰は始まるんです」(P33)


自分でものを考えるのは苦しく、ものを考えないでいられるのは楽なのである。
しかし、どうして楽をしちゃいけないのかってなるとわからなくなる。
朝日新聞が好きな人だって(朝日新聞信者は学会員より嫌いかも)、
自分のあたまで本当にものを考えないで済むために読んでいるわけだから。
人間は好きなことをするのだろう。
人は群れることを好む。みんなでおなじことをするのは楽しい。
偉い先生からほめられるのは嬉しい。
このあたりの人間心理から創価学会は発展していったのだろう。
たぶんある種の人間には創価学会ほど楽しいものはないのだと思う。
さて、学会でいちばん強いのは婦人部らしい。
本書では与那原恵による婦人部のルポがもっともおもしろかった。
ライターが拾った女性の元学会員の言葉に
「やべえ、やべえよ」と笑いがとまらなかった。
女って男と違って理屈ではなく本音で生きているところがあるんだなあ。

選挙になると休みなんてまったくとれません。
何百件という数の電話をかけたり、家を訪ねていったり、
その結果を毎日報告して、指導もされる。
適当にやっているふりなんてできないし、そんな気持ちもまったくなかった。
やはり競争心があるし、学会もその心理を巧みに利用していたのでしょう。
選挙活動に励めば、自分の御利益になるし、功徳を積むことになると信じていた。
(……) 自公連立……政治のことなんてまったくわかりませんよ。
『聖教新聞』しか読まないんだから。
私たちに考える時間なんて、与えられませんからね。
でも、選挙活動には感激があるし、学会員ならではの連帯感もある。
仲間と一緒に物語をつくっていける。
困難に立ち向かう物語。それは人を酔わせます」(P152)


池田先生の正体をこれほどうまく言い表した言葉をわたしは知らないかもしれない。

「池田のカリスマ性といいますけれど、
それをつくり上げているのはじつは池田自身ではなく、
女性たちひとりひとりなんですよ。
本だって大したこと書かれていないのはわかっているんですけど、
それをあえて深読みしている私たち。池田は矛盾だらけの話をしていますけど、
それにもすごい意味があるんじゃないかって都合よく解釈する。
自分が時間もお金も捧げた人は、偉大な人物でなくてはならない。
俗悪な男であってはならない。
そういう個々の意識が池田をカリスマにして、
実物以上に肥大化させているんです」(P156)


元学会職員は以下のように語ったことになっている。
ちなみに、わたしはすべてライター与那原恵の
実体験に基づく創作ではないかと疑っているが。
このライターさんは脱会者ではないだろうか。
とにかく、記事のうえでは元学会職員が語ったことになっている。

「学会には、いろんなドラマがあるんですよ。
誰が誰を裏切った。あそこに秘密のグループがある、こんな企てがあるとかね。
親しい人だけに秘密を打ち明けたつもりでも、
意外な人物が把握していたなんてこともよくある。
どこで誰がつながっているのかわからない。
男女の色恋沙汰から暴力沙汰まで、ものすごく複雑怪奇なドラマがたくさんある。
さまざまな情報が錯綜している。表向きの連帯感とは別の、裏に渦巻くドラマ。
そう、まるで大河ドラマ。いつ終わるともしれない大河ドラマですよ。
ドラマは延々と続く。私はそれに疲れてしまったけど、
そのドラマが学会員を興奮させるのもよくわかる」(P158)


わかるわかる。学会員さんって噂話とか人の悪口が大好きで人間くさいんだ。
むかし学会員のキャバ嬢に池袋でラーメンを奢ってもらったことがあるけれど、
人の悪口がとまらなくてひるんだ記憶がある。
ゴミ清掃車に乗っている人と当時はラブラブだったらしい。
で、なんかその次の男は難病で死にゆく中年らしく、
彼を看取るという自己陶酔にうっとりしているところをネットで見かけた。
悪口を言っていた人ともすごい仲良さそうにしていて人間力つえええ、と思った。
きっと創価学会に入ったら毎日がドラマっぽくなるんだろうなあ。
山田太一ドラマのようなものではなく、もっと俗っぽい安っぽいドラマでしょうが。
わたしはおもしろい人生を経験したいから創価学会に入ることができたら
いちばんいいのだろうが、群れるのがとにかく苦手だから無理だろう。
群れて別の群れと対立するとか、絶対にできないって思う。

「学会の会員たちは、強い人間関係で結ばれており、
熱心な活動家であればあるほど、学会員以外の人間関係をもっていない。
家族や親戚一同が皆、創価学会の会員であれば、脱会も難しい」(P200)


べつに孤独な時間もまたいいじゃないかと思うけれども、
群れたがる人にとっては孤独ほど恐ろしいものはないのかもしれない。
孤独であると見られることをとにかく嫌う人たちがいるのである。
友人や知人の数を自慢する手合いである。
いまの職場でもいつも群れている人たちというのがたくさんいる。
とはいえ数が多い意見のほうが「正しい」ことになるのだから、
人が群れるのは間違っているわけではなくサバイバル戦略として理に適っている。
とすれば、たったひとりでわたしに向き合ってくれたあのキャバ嬢は勇気があったんだな。
学会員さんはすぐ囲もうとしてくる気がする。
自信のなさの裏返しなのだろうが、よく大きな声を出す人が多いような。
そうしてやたら人情家ぶりたがるのだから学会員さんはおもしろすぎるぜ。

根本の問題に入ろう。池田大作はどうして偉いのか?
創価学会二代目会長の戸田城聖の弟子だからである。
では、なにゆえ戸田城聖なる男は偉いのか?
池田大作が小説「人間革命」でとても偉い人として描いたからである。
この権威の循環(自作自演)をわかっている人は少ないが、
わかっている人はそれをうまく使うし、
相手のそれ(にせ権威)を指摘しないでうまく利用しようとするだろう。
古くは空海がやったことでもある。
自分は中国で偉い坊さんから最高の仏法を教えられたとうそぶいて
日本で大出世をしたのが弘法大師の空海である。
その中国のお寺に行ったことはあるが(西安の青龍寺)、
うさんくさい坊さんが寄付金を寄越せと迫ってくるので、
いまから思えばまさしく空海の学んだ寺である。
わたしが空海や池田大作先生の真似をしようとするならば、
ストリンドベリや一遍が使えるのである。
マイナーなストリンドベリや一遍を天才と称し上げて、
自分が彼らについていちばん詳しいとうそぶけばひと角の権威になれるかもしれない。
自分で賞をつくって自分に章を与えるような行為は人間くさくてたまらなくないか。
どうしてか池田大作さんを嫌いになれないところがある。
こんなことを白状しちゃうと反対にアンチ学会の人から嫌われてしまうのかもしれないが。
池田大作さん、おもしろいよなあ。

「戸田が偉大な指導者として崇められてきたのも、
池田の小説『人間革命』があってのことである。
池田が戸田を師として崇めることで、戸田の地位は高まった。
もしそれがなければ、戸田は、
最終的には必ずしも成功を得られなかった実業家であり、
酒を飲まなければ演説もできないアル中にすぎなくなってしまう」(P297)


いい弟子を持つのがいかに重要かということだろう。
イエスの正体はきちがいの浮浪者だったのだが、
弟子がみんなで神格化して、
後年十字軍を結成するような危険なキリスト教を作ったのである。
乞食シャカの無欲は廃人ゆえだったのだろうが、
弟子たちが勘違いしてこの人は偉いのではないかと教祖にしてしまった。
唯円は師匠の親鸞を理想化して威張りたいと思っていたのかもしれない。
にもかかわらず、おいしいところはみんな親鸞の子孫の蓮如に
持っていかれてしまったのだから運のないお気の毒さまな男である。
こう考えると、師匠と弟子はただなれあっているだけとも見ることができる。
大学教授なんかちっとも偉くはないが、
アカポス(大学での仕事)の人事権を持っているから弟子は敬うのである。
博士号も師匠から認められないと取れない。
さらに弟子にもうまみがあって、あの教授の弟子だと言えば威張れる。
本当は師匠も弟子も偉くないのだが、
師匠も弟子も威張りたいからお互い群れてなれあっているのかもしれない。
なんかものすごい本当のことに気がついてしまったようで自分が怖い。
このへんで筆を置かないと、いやキーボードをとめないと、
なにを書くことになるか恐ろしいので強制終了させていただく。
最後に創価学会豆知識を少々。
北朝鮮のようなマスゲームをして人文字を作る、
世界青年平和文化祭ってなくなったんだってね。
それから勤行(ごんぎょう)が簡素化されたらしい。
むかしは勤行を朝30分晩15分やらなければならなかった。
いまはそれぞれ5分ずつに短縮されたとのこと。まあ、いまはみんな忙しいもんね。
本書はとてもおもしろかった。感想は――。
創価学会は「正しい」し池田大作名誉会長は「偉い」と思いました。

COMMENT

- URL @
04/25 18:01
. もう死んでるとか、影武者がいるとかいう話もありますね。
都市伝説みたいなもんでしょうか。
Yonda? URL @
04/26 08:02
名無しさんへ. 

もう死んでいるが冷凍保存されている状態ではないかとわたしはにらんでいます。いつ死を公開するか信濃町で機を見計らっているところでしょう。いいタイミングで死を出せば「奇跡」を演出できますから。お手並み拝見であります。
上善如水 URL @
04/26 13:44
. 仰る通りだと思います巨大化し過ぎて、大本の様になると思います。出口なおや一族の様な道を進むと思う
- URL @
04/26 19:57
. comment
創価学会というキーワードに反応してよく読まずに影武者とか都市伝説とか書いてしまいましたが、ちゃんと読んだら全部書いてありましたね、申し訳ない!
かなり前、貴方のブログで某先生が学会員と知りショックを受けましたw
当方ミーハーなもんで、ノーベル賞候補のあの先生の本も結構好きだったけど近頃政治に言及なさるようになりがっかりしてます。
Yonda? URL @
05/07 08:04
上善如水さんへ. 

まあ、池田大作さんが死のうが死なまいが、我われの生活にはなんら関係ないんですよね。ああ、お金がほしい。女にもてたい。出世したい。でも、学会で群れるのはいんや。
Yonda? URL @
05/07 08:08
名無しさんへ. 

けっこう他人へ期待することの多い方なのかもしれません。期待すればこそのショックやがっかりですから。他人に期待しなくなる(人間なんて、そんなもの!)とクールに生きられますが、やはり熱く生きるのもまた楽しいのではないかと思います。








 

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