「チェルカッシ」

「チェルカッシ」(ゴーリキー/上田進・横田瑞穂訳/岩波文庫)

→悪人が善人をバカにする話のようにも読める。
札付きの悪(わる)のおっさんが貧農出身の青年をスカウトして一緒に強盗をやる。
悪事はまんまと成功して大金を獲得したおっさんは笑いがとまらないが、
小心者の青年はビクビクしっぱなしでおしっこをちびりそうな気配。
青年はいかにも小物(こもの)らしく、
この大金があればなあ、
これを元手に自分は村にかえってコツコツまじめに生きていくのになあ、
なんて殊勝なことを口にするので、
悪いおっさんは大物ぶって大金の大半を田舎もんの若者にくれてやる。
青年は涙を流しながら感謝する。
そこでなんだか青年も悪(わる)ぶって、
大金をくれなかったら横取りしてやろうかと思っていた、なんて懺悔をする。
ムカっときたおっさんが若者に殴りかかったら、
勢いで田舎もんは都会の不良おっさんをぶちのめしてしまう。
恩人になんてことをしてしまったんだと自分の罪を反省する青年。
「許す」と言ってください、とか悪(わる)になりきれない田舎もんである。
あたまから血を流しながら、もう行けと青年を追い払うおっさんは格好いいのか?
おっさんの名前はチェルカッシという。

「――おい、どうだい? ――チェルカッシがいいだした。
――お前(めえ)はこれから村へ帰(け)えって、女房もらって、畑を耕し、
麦を撒いて、百姓をやろうというんだろう。
ところが、女房は次から次へと餓鬼を生む、食うものは足りなくなる、
そうしてお前は一生あくせくしているってえことになる……ふん、どうだい?
それでいったい、なんの楽しみがあるってんだ?」(P111)


おれも一か八かの悪いことをバシッと決めて大金を手に入れたいなあ。
でも、実際にそういうチャンスがあっても実行できないんだろうなあ。
悪いことってきっとよいことよりもハラハラどきどきして楽しいんじゃないかい?
善人って要はヘタレということがうっすらわかるモラルがねえ小説だ。
まったく銀行強盗でもやって国外脱出してアジアで酒びたりの生活をしたいぜ。
ひとりじゃできないので相棒希望者がいたらぜひメールをください。
来たら来たで腰を抜かしそうな弱腰なおれさまではあるけれど。

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