「崑崙の玉」

「崑崙の玉」(井上靖/文春文庫)

→貧困家庭出身ながら芥川賞選考委員のみならず
紫綬褒章作家にまで成り上がった大成功者にして大勝利者の宮本輝氏が、
薄っぺらい新刊エッセイ「いのちの姿」で
井上靖の「崑崙の玉」を大絶賛していたので本当かよと思い、
たまたま積ん読していたこともあり読んでみた。
妻や子を亡くした50歳の孤独だが大金持の中国人が、
「崑崙の玉(究極の宝石)」求めて黄河の源泉まで旅をする短編小説である。
井上靖のファンでかなり小説は読み込んでいるほうだが、そこまでおもしろくもない。
というか、むしろ井上靖の小説のなかでは退屈な部類に入ると思う。

どうして創価偉人の宮本輝氏が「崑崙の玉」を絶賛するのか考えてみた。
宮本輝氏は世間的評価のうえでとても偉い人で、
自分のことをとても偉くて正しい人だと思っておられるようだ。
しかし、氏の偉さや正しさを証明する根拠(黄河の源泉!)がないのである。
だから、宮本輝氏はこういうエピソードをでっちあげた。
宮本輝氏は生前の井上靖に逢ったときに、こんな失礼なことを言ったという。
井上靖先生の西域物では「崑崙の玉」がいちばんいい。
「これさえ読めば、(井上靖)氏の他の西域物は読まなくてもいいと思う」
井上靖は怒らず、宮本輝さんがそうおっしゃるのだからきっとそうなのでしょう、
と答えてくれた、とだれも証人はおらず、ただ宮本輝氏だけがそう述懐している。

わたしはこれを嘘だと見破った。
ペエペエの若手作家が当時文壇の大物だった井上靖にそんなことを言えるものか。
本当に言ったのなら、人間として失礼すぎる。
宮本輝大先生に向かって
「先生の小説は『青が散る』さえ読めば、他は読まなくてもいいと思います」
なんて言える人はいないでしょう。わたしだってそんな失礼なことは言えない。
上下関係に厳しい創価学会で鍛えられた宮本輝が、
天下の井上靖にそこまで失礼なことを本当に言ったとはとうてい思えない。
だとしたら、このいんちきエピソードはどういうことか?
宮本輝は自分こそ井上靖の正統の弟子だと主張したかったのである。
井上靖が偉いことは(僭越ながらわたしもふくめ)みな認めている。
宮本輝は権威(偉さ)のご相伴にあずかりたくて、
井上靖の「死人に口なし」をうまく利用して、こういうくだらぬデマを書いたのだと思う。
自分は池田大作先生の弟子であるのみならず、
あの井上靖先生でさえも自分を認めてくれていたのだから、
いいか、いいか、おまえら、我輩は偉いのであ~る。

まったく宮本輝氏はいかにもクソ庶民出身らしいきたねえ手を使うぜ。
井上靖の「崑崙の玉」は絶版だし、読む人は少ないだろう。
いまはそれほどでもないがネット古書世界で超高値がついた時期もあるから、
そういうふうに高額を支払って手に入れたものを
人はなかなかつまらないと言えないのである。
宮本輝氏は骨董が大好きなようだが、
高額の骨董品の価値など目利きと呼ばれる権威者のひと言によっているだけなのである。
権力者の宮本輝氏は石ころに過ぎない井上靖の短編小説「崑崙の玉」を、
まさしく価値のある宝石のように変えてしまった。
それと同時に自分は井上靖のお墨付きなんだという経歴も偽造した。
財産、名声、称賛、権力、妻子孫、
あらゆるものを手に入れた大勝利者の宮本輝氏がいまいちばんほしいのは、
黄河の源泉でしか得られないとされる「崑崙の玉」なのだろう。

COMMENT

mucun URL @
03/22 14:52
. 宮本さんは短編「崑崙の玉」のことだけを言ったのでしょうか?それとも短篇集としての事を言ったのでしょうか?それなら、「永泰公主の頸飾り」や「古い文字」「明妃曲」などは面白かったですけどね。まあ、だからといってこれだけ読めばいいとは思いませんが。
個人的に「これ一冊」なら「異国の星」で決まりです!
Yonda? URL @
03/22 18:09
mucunさんへ. 

どっちなんでしょうかね?
あんな薄い新刊エッセイは立ち読みで済ませましたので、
詳細はわかりません。書き飛ばしです。
たしかに「古い文字」や「明妃曲」はおもしろかったですけれど、
人生観を変えるというかそこまでのパワーはちょっと……。
そもそも「敦煌」より上かって聞かれたら、うーん。
「異国の星」は積ん読しています。
あれ、おもしろいんですか?
パラパラ見たら小説というよりも老人の随想記みたいな。
これもなにかの縁なので近々読んでみるかもしれません。








 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/4047-ab962bb5