「季節の中で」

「季節の中で」(トニー・ブイ脚本/竹内さなみ編訳/角川文庫)

→少しでもベトナムのことを、いやベトナム人のことを知りたいので、
ベトナム映画のノベライズ本を極私的な好奇心から読んでみる。
とはいえ、本書でどれだけベトナム(人)のことがわかるのかも疑わしい。
ベトナム映画「季節の中に」はたしかにベトナムを舞台にした映画で、
監督もベトナム人だがアメリカのにおいがぷんぷんするのである。
監督脚本のトニー・ブイは生まれこそベトナムだが、
わずか2歳のときに一家そろってサイゴン(ホーチミン市)からアメリカに移住している。
このため、トニー・ブイはほとんどアメリカ人と言ってもよいのである。
さらに映画「季節の中で」はアメリカ資本によって製作された作品である。

唯一ベトナムらしさを感じるところは、
編訳の竹内さなみ氏があとがきでばらしていたが映画製作中に
毎日のようにベトナム政府側から厳しい検閲を受けたというところだ。
ここがいちばんベトナムらしい。
日本映画は「売れる/売れない」がもっとも肝心で、
少しはあるだろうが(間接的に)さすがに政府からの厳しい検閲はないだろう。
どうして共産党独裁政権というのは、そういう検閲のようなものをしたがるのだろうか?
きっと「正しい」ものがあると理想を強く信じているからだろう。
宗教に対するような狂信をベトナム要人は共産主義にいだいているのかもしれない。

映画「季節の中で」は、よく知らないが(なら書くなよ!)
むかしの日本のプロレタリア文学(共産主義文学)の
ような香りがする(当方現在鼻風邪あり)。
貧しくても健気に働く若い女性は美しい。
かつての美青年が癩(らい)病(ハンセン病)に侵されてから書く詩こそ美しい。
人間は外見や金ではなく志(こころざし)がいちばん重要だ。
かつての米国兵士がベトナム女性に産ませた娘と再会するシーンで、
庶民や大衆、つまりプロレタリアートは感動すべき、いや感動しなければならない。
底辺のシクロ(自転車タクシー)男性はじつのところ本を読むインテリである。
お金のために富裕層に身体を売る若い女性は「正しい」のだろうか?
貧乏インテリ底辺シクロマンの恋心は通じて、彼は若くて美しい売春婦と結ばれる。

ひとつけっこう強烈な印象に残ったことがある。
われわれはベトナム南北統一などと聞くと、すぐに「良い」ことと思ってしまう。
しかし、実際はそんなかんたんではないことを本書で知った。
北ベトナムが南ベトナムに勝ったとはどういうことか。
南ベトナムの人はそれ以後、冷遇され続けるということである。
どんな知識や能力を持っていてもサイゴン出身というだけで世間から追い払われる。
この映画のトニー・ブイはうまいことサイゴンからアメリカに逃げたのである。
映画監督とわたしの年齢はそう変わりないが、
うまいことコネクションを生かしてベトナム映画を撮影し、いくつも賞を取った。
もしトニー・ブイがあのままサイゴンにいたら、
本当に底辺のシクロ(自転車タクシー)マンになっていたのかもしれないのである。

いま国籍多様な職場でありがたくもアルバイトをさせていただいている。
ベトナムの子に出身を聞くと、どうしてかみんなハノイ近郊出身なのね。
南ベトナムのサイゴン(ホーチミン市)出身の人はおそらくいないのではないか。
ベトナムでは北の人のほうがはるかに社会的身分が高く裕福なのだろう。
ベトナムの人っていったいなにを考えているんだろう。
わからないからそれが魅力になっているようなところがある。
いったいどんな学校教育を受けてきたんだろう。
あの子たちにとってホー・チ・ミンはいったいどういう存在なんだろう。
どうして未知のものはこうも光り輝くのか?
冷戦後の世界でもっとベトナム(人)という存在が注目されてもいいような気がしてならない。

COMMENT

東方不敗 URL @
02/14 20:55
. そういえば、ベトナムにはホンノンボという変わった盆栽があるのを風の噂で聞いたことがある。
Yonda? URL @
02/15 21:26
東方不敗さんへ. 

既婚子持ち正社員のお若い東方不敗さんにはわからない感傷かもしれませんが、バイト先でベトナム女子を見ているとキュンとしてしまうことがございますですね。キュン♪
東方不敗 URL @
02/15 22:14
ときめきメモリアル?. 愛の疾走って感じですね。

分かります。
Yonda? URL @
02/16 09:11
東方不敗さんへ. 

いえ、愛とかそういう生臭いものではなく、若いのに働きながら勉強している異国の子を見ると、自分もがんばらなきゃとキュン♪ と若返ってしまうということです。








 

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