「曾根崎心中」

「曾根崎心中」(近松門左衛門/信多純一:校注/新潮社) *再読

→読み返してみたら、え? そんなもんで死んじゃうのって話だよな。
それからおっぱいのパワーは偉大ということ。
久しぶりに逢った徳兵衛(25歳)とお初(19歳)のやりとりがおもしろい。
徳兵衛は丁稚あがり、いまでいう新入社員みたいなもの。
お初は遊女。遊女ってホステス? 客と寝るキャバクラ嬢みたいなもんか。
さてさて遊女のお初は、
どうしてこんなに逢いに来てくれなかったのと延々と嘆くのである。
そして、もうさみしくて病気になってしまいそうと言って、
ほら見てちょうだいとお初は徳兵衛の手を取り懐に入れる。
あたしの心臓の音を聞いて、と男の手を自分の胸に当てるのである。
こんなことをされたら男はどうなるか女は知っているのである。

徳兵衛ってやつが弱いんだなあ。ちっとも男らしくない。
親友に急場の金を貸してくれと頼まれ断り切れず、
かならずすぐ返すという文言を信じて会社の金を渡してしまう。
しかし、期限を過ぎても返してくれないのであわてている。
よりによってお初と一緒にいるときに、徳兵衛は金を貸していた親友一行と行きあう。
金をだまし取られたことを知って徳兵衛は怒るが逆にボコボコにされてしまう。
愛する女の目のまえでみっともなくも袋叩きにされるわけである。
挙句、道ばたでわんわん大声をあげて泣くような徳兵衛は弱い男である。
なぜふたりは心中したのか、再読だから注意して読んだら主導者はお初である。
遊女のお初がやたら死にたがっているようなところが見受けられた。

「死ぬる覚悟が聞きたい」(P93)

これは男ではなく女が言っているのである。
強い女に死出の旅に誘われた弱い男はうなずく。
正義を証明して金を取り返そうとするのではなく、弱々しく女と死のうと思う。
徳兵衛の死の覚悟を聞いたお初はこう返す。

「オオそのはずそのはず。いつまで生きても同じこと。
死んで恥をすすがいでは」(P93)


死んじゃえばなにもかも終わりというのは本音過ぎる本音なのである。
いまどんなに苦しくても辛くても寂しくても死んでしまえばすべて終わり。
がんばっている人たちが意地でも認めようとしない人生の究極の真実である。
それにどうせさ、熱愛して結婚したって、そんな愛は数年もすれば冷めるわけだ。
だとしたら、心中というのがいちばんきれいな幕引きなのかもしれない。
いま思ったけれど、「曾根崎心中」ってまんま野島ドラマ「高校教師」だよな~。
「どうせ死んでしまう」や「死ねばすべて終わり」は不謹慎な真実のひとつである。
なんとかみんなそこをうまくごまかして生きているわけだが。
仕事や家族、趣味に生きがいを見いだして、なんやかんやと生きている。
でもさ、男だったらお初みたいな子に誘われたらふっと死にたくなるよねって話。
男らしく強く生きるのってしんどいっちゃあ、しんどいわけだから。
もう男やーめた、人間やーめた、と思いたくもなるさ。
その手があったか! 
ということを芝居を見て思い出し、われわれはまた退屈な日常生活に戻っていく。

(参考記事)過去のどうでもいい感想↓
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