「ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない」

「ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない」 (漆原直行/マイナビ新書)

→いま書籍物流倉庫でアルバイトをしているが、
出るのはビジネス書(自己啓発書)ばかりだ。
本書は読みながら何度も笑えるとても軽快なビジネス書批判本だった。
けっこうこの軽い本には考えさせられた。2、3日ストップしてしまったくらいである。
根本的な問いに行き着いてしまった。
どうして日本人は(人間は?)「デキる人」になりたがるのだろうか?
なにゆえわれわれは「デキる人」をついうっかり「偉い」などと勘違いしてしまうのだろう?
社会を俯瞰的(ふかんてき/広く)に見たら、
じつのところデキない人ほどおいしい思いをしているのではないか。
「デキる人」ほどきついポジションを振られているような気がする。
はっきり言ってビジネス書を読んで起業を目標にするなんてきつすぎるでしょう?
そんなわざわざ自分からきついポジションに行かなくてもいいのにと思う。
責任のあるポジションほどきついと言えなくもないのだから。
適当にだらだら生きている使えない人のほうが本当は生きやすいのではないだろうか。

「デキる人」ってしんどいだろうなあ。
わたしのように使えない人間はそれを恥じないとかなり精神の平安を保てる。
バイト先にはわたしよりもはるかに使えない、
日本語をまったくわからない外国人のおばさんが毎晩なにもしないで腕組みして立っている。
なにもしないほうがいいのだが、
そのおばさんは先輩ぶってデキる新入り日本人の間口(持ち場)に干渉するから、
かえって迷惑になっているくらいである。
しかし、そういう日本語も仕事もデキないおばさんのほうがおいしい思いをしているのだ。
わたしの理想はあのポジションかもしれないなあ(冗談ですよ、冗談ですって)。
わたしはかつてその古株外国人おばさんに「日本語がわかりますか?」
とおそらくだれもできないだろうガチンコな質問をしたことがある。
そうしたらようやくよけいなお節介をしなくなった。
あなたは偉そうに腕組みをしてなにもしないで立っているのが仕事なんですよ。
しつこい繰り返しになるが、ああいうデキないポジションはあこがれだなあ。
みんなもっとデキない人を目指してもいいのではありませんか?
もちろん、こっそりと、ひそやかに、えへへとごまかし笑いをしながら。

まったく実生活の役に立たない読書をしてきた結論として、
まあ誤りだろうということを書くと、著者も一部で指摘しているが、
自己啓発書はカーネギーの「人を動かす」「道は開ける」に尽きるのだと思う。
まともな社会人ならかならずやこの2冊に洗脳された経験があるのではないでしょうか。
なかでも「人を動かす」は名著で、そして嘘なのである。
わたしもなんとか自己洗脳しようと「人を動かす」を百回以上読んだことがある。
しかし、あれはどう考えてもリアルでは使えない。
人をうまく使いたい権力者が下のものに読んでほしいのが「人を動かす」だと思う。
優秀な著者はそのことをじつに巧みに表現している。
ここがいちばんよかった。
ビジネス書の古典的名著カーネギーの「人を動かす」は――。

「正直なところ、私ははじめて読んだとき「なるほど、いいことが書いてあるな」
と思う反面、本当にここにあるような人間がいたとしたら、
どこか裏表のありそうな胡散臭いオーラを放っているか、
極端なお人好しのどちらかなのではないかな、
と邪推してしまったことをよく覚えています。
(引用者注:あまりにもやばい本音なので少々中略をお許しください)
自分なりの判断基準や言動の軸を意識したうえで、
確信犯的に本書で推奨されているような対人関係を築くならともかく、
とりあえず真似してみよう、と唯々諾々 ( いいだくだく)
と受け入れてしまうなら、ただの〝御しやすいヤツ”になってしまうような気もして、
どこか危うい印象を抱いてしまいました」(P76)


カーネギーの名著「人を動かす」の正体をここまでうまく表現するとはやるなあ。
「人を動かす」はじつのところ「人に動かされる」マニュアル書だったのである。
わたしはビジネス書をあまり大々的に批判したくない。
ああいう本を読んで「デキる人」を目指している方がいらっしゃるおかげで、
こちらのような使えないダメ人間もなんとか生息できているのだから。
結局のところ「デキる人」がたくさん税金を払ってくれているおかげで、
われわれ(?)しもじもの人間は日本国で生活する恩恵を受けているとも
言えなくもないわけで。
だから、本書はいい本だったが、あまり広く読まれては迷惑になる本とも言える。
本当はデキない人のほうが生きやすいことが熟読するとばれてしまう裏本みたいなもの。
著者がどこまで意識して書いたのかわかりませんけれども。
裏読みしすぎかなあ。



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