「絶望名人カフカの人生論」

「絶望名人カフカの人生論」(カフカ/頭木弘樹編訳/新潮文庫)

→「山田太一氏、絶賛」(帯)の本をけなしてしまっていいのかどうか迷う。
たとえ動作は小さくても「右にならえ」をするのが世渡りというやつではないか。
本書はカフカの絶望名言集らしい。
カフカのネガティブな言葉が改行ばかりで重々しく引用されているが、
そのどれひとつとしてぼくの胸に響く言葉は正直申し上げるとなかった。
この本をほめている人は、カフカさまハハアと権威に平服しているだけではないか。
繰り返すが、言葉としてそのまま見たらぜんぜん大した言葉ではないのだから。
カフカさまの名言の横に編訳をした著者がもっともらしいコメントをつけているが、
どれもいかにも優等生的で常識人ぶっていてまったくおもしろくない。

しかし、こういうことは言ってはいけないのかもしれない。
なんでも著者は若いころに難病でたいそうお苦しみになったようだ。
そういうお気の毒な方が生きる支えにしたカフカさまのお言葉はありがたいのである。
この本全体が美談のオーラに包まれているようなものだと思う。
美談にケチをつけるのは人でなしだ。
難病を克服した著者のコメントは滋味あふれる真実の言葉だ。
世界的権威のカフカさまの言葉に畏怖しないものは人間としておかしい。
そのうえそのうえ、あの山田太一先生のお墨付きまでもらっているわけだ。
これほど批判できない本はめったにお目にかかれないような気がする。
いくらいま著者の病気が治っていても結婚していても
いっときのベストセラー作家になっていても、さらにさらにあの山田太一先生の
力強い讃辞(解説でも山田太一氏が大絶賛)を得ていても。
あっはい、ぼくもこの本から生きる勇気をもらいましたあ。座右の書にしまっす。
この記事の内容はすべて恵まれた著者への嫉妬から生じていますので、
万が一お目に触れてもお気になさらず。
くうう、ちきしょー、うまいことやったなあ。うらやましいぜ、このこのう。

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