おもしろいこと

人間っておもしろいことのために生きていると思うんですね、いまのところ。
明日には変わるかもしれませんが。
仕事のために生きるのも、家族のために生きるのも、社会のために生きるのも、
それぞれがそれぞれよろしいのではないでしょうか。
おもしろいことのために生きる。
しかし、人によっておもしろいことはさまざまなんですね。
ディズニーランドに行くことがおもしろいと感じる人がいっぱいいるわけでしょう。
けれども、そう感じない人もなかにはおられるかと。
かなり本当のことを申し上げますと、
美食や性交、惰眠、成功、勝利をあまりおもしろいと感じない人がいるのかもしれません。
おもしろいことは、まったく人それぞれではないでしょうか。
他人のことはわかりません。

「なぜ?」を考えてしまうのが人間の宿命のようなものかもしれません。
たとえば、なぜいまわたしはいまのバイト先で働いているのか?
結局、それがおもしろいからなのだと思います。
わたしは根性がないヘタレなのでおもしろくないことは長続きしません。
金曜日。書籍ピッキングの持ち場に
哲学者の中島義道の新刊「東大助手物語」がありました。
暇だったら立ち読みしようとねらっていたのですが、かなりヘビーなところでした。
それでも、わずかな間を見計らって。
結局、中島義道が東大助手時代に
どれほど上役からいじめられたかっていう話なのだと思います。
恨んでいない、むしろ感謝していると言いながら、本当のことはだれにもわかりません。

わたしも、もっと上役からいびられるようなきつい仕事についたほうが
自分のためなのかなあ。だって、あとで恨みを書けるじゃないですか。
いまのバイトはいじめのようなものがなくて逆に驚いているくらいです。
しかし、おもしろいよなあ。
中島義道の新刊が間口にあるとわかってからの
わたしのいんちきハッスルぶりと言ったら。
なーに、有名人を自分の知り合いのように勘違いしているんですかね、あはっ。

ラインの隣は中国人女性の妊婦。
「え、(妊娠しているのに)こんなこと(仕事)をしていいんですか?」
と聞いたら大丈夫とのこと。
ちらちら見たらかなりお腹を気づかってゆっくり丁寧な作業をしていた。
2日連続ラインでこの女性の隣だから言う。
「◯◯さんの横だと本の入れ方が丁寧だから楽」
「ありがとう」と言われた。
聞けば1年以上もここに勤務している先輩らしい。
いままで見たことがなかったような気がするけれども、こういうところもおもしろい。
そう言われたら妊婦さんのにおいが微妙にするのもおもしろい。
新しい子どもをこれから横の人が産むのだと思うとおもしろい。

しかし、間口の出す本がほかよりもかなり多いような気がしたので、
思わずどうしようもなくおもしろくない顔をしてしまった。
間口の書籍量の見方は先輩バイトさんから教えてもらっているのですが、
見たら担当者を恨みそうなのでその日も見なかった。
たぶん不満たっぷりに働いていたのだと思います。
そうしたら、嫌いな入庫にまわされた。
今日にかぎってはピックよりも1時間の入庫のほうがましなのかもしれません。
入庫は相方が仲間ならばいくらでもゆっくりできることを某国籍の人に教わりましたが、
きついピッキングの持ち場はそうは行きませんので。
わたしの入庫の生産性は驚くほど低いので(興味がないのでミスばかり)、
効率を考えたら書籍ピッキングのほうがまだましなのかもしれません。

パートミーティングに呼ばれましたが、おもしろかったなあ。
同席者は書籍ピッキングのパート仲間ばかり。
とすると、いまだそれなりにおもしろいと
思っている書籍ピッキングにまわしてもらえるのでしょうか。
おもしろくて恥ずかしかったのは自分。
みなさん古株の先輩ばかりなのだから、わたしが下座に座らないといけません。
出口にいちばん近い席がわたしの場所であります。
ところが、まったく混乱してしまってまるで席順を守れませんでした。
こういう恥ずかしい自己発見もある意味ではおもしろいですね。
とっても恥ずかしいけれど、まあ人間そんなものかもしれません。

パートミーティングはお通夜のような雰囲気。
内容はみなさんの生活がかかっている企業の秘密ですからとても公開できません。
なるほど、そうなのか、と思ったことがかなりありました。
本の出す順番は、
このバイト先の協力会社(=下請け会社)が決めているのではなかったのですね。
上の会社が圧倒的に強くすべて命令にしたがうしかない。
だとしたら、パートがそれを理由に社員さんを恨むのはおかしい話になります。
間口(持ち場)の不平等も上の会社の意向なのかもしれません。
そうだとしたら、もしかしたら――。
社員さんもパートもみんな仲間といえば仲間であることに気づきました。

マネージャーさんが最後におっしゃっていました。
生産性(スピード)と品質(ミス減少/破損減少)は同時に高めることができると。
生産性をあげて品質もあげることは可能だ。
常識で考えたらこれは矛盾しています。
経験からもわかっていますが、急がせたら急がせるほどミスが増えるのが人間であります。
急がせたら人は失敗する確率が増えるのではないでしょうか。
わたしは正直にそう思ってマネージャーさんの目を見ました。
立場はまったく異なりますが、目と目で会話しあえたような錯覚をいだきました。
もしかしたら生産性と品質を同時にあげることもできるのかもしれません。
生産性と品質は矛盾した価値観ですが、
そういう矛盾を生きるのがロボットならぬ人間だからです。
コンピュータならば生産性と品質をともにあげることは不可能という結論を
出すかもしれませんが、いろいろな矛盾のただなかを生きるわれわれ人間ならば――。

ミーティングでどうしようもなく言いたかったけれど言えなかったことをひとつだけ。
生産性も品質も大事でしょうが、それよりはるかに重いのは人の身体であります。
生産性や品質は取り戻せますが、
ひとりひとりそれぞれ自分の人生を生きる人間の精神的・身体的な健康は
一度壊したら取り返しがつかないところがございます。
わたしはいざとなったら、どちらかを選べと聞かれたら、
生産性も品質も大事でしょうがわれわれ人間のほうを重んじたいと思います。
なにがいちばん大切なのでしょうか?
そういうことを考えられるきっかけを与えてくれたバイトはやはりおもしろいと思います。
おもしろいことをしたい。おもしろいことをしましょう。

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