「同棲時代」

昭和48年(くっくっく、若者はいつだかわからないだろう、へへーん)に放送された
山田太一ドラマ「同棲時代」をジェイコムにて録画視聴する。
山田太一が手がける最後の原作もの(漫画)になったらしい。
山田太一ファンのわたしは、シナリオではかつて二度ほど読んだことがある。
まあ山田太一さんのことだから原作をほとんど改変しているのだと思う。
おおむかしのドラマを見てふと思った。

孤独を克服するのは恋愛ではないか?

ドラマは孤独な男女がさみしさから恋愛関係にいたり同棲、結婚する話である。
リアリストの山田太一は恋愛なるものを疑う視線を当然持ち合わせている。
山田太一は恋愛を信じていながら信じていないところがある。
ふたつの矛盾をそのままに答えを出さぬままでいられる強さを有している。
割合給料のいい旅行会社に非正規で勤めるヒロインの独白(ナレーション)から。

「ろくろく知らない次郎のことが頭から消えないのは、
私が孤独だったからかもしれなかった。
沢山の人とのつき合いがあったら、次郎のことなど忘れているにちがいない。
あんなに小さな出逢いが、これほど忘れられないのは、
私が多分孤独すぎるからなのだろう。
それともこんな気持を恋というのだろうか」


女の人はみんなきれいなのである。
どうせだれも読んでいないブログだから好き勝手に自分のことを書く。
かつていち時期、山田太一の衣鉢を継ぐのはおれしかいない、
と壮大な勘違いをしてシナリオ・コンクールに応募しまくったことがある。
すべて落選してやる気がなくなって、行き詰って落ちぶれて、
なんだか自分でもよくわからないままにいま時給850円の書籍倉庫で働いている。
いや、正しくはご温情でありがたくも雇っていただいている。
百人以上働いている職場なのでずっとだれがだれだかよくわからなかったけれど、
半年が経ってようやく人の顔の区別がつくようになってきた。
ラッキーなのかどうか、女性比率の高い書籍ピッキングに配置されることが多い。
さまざまな年代、国籍の女の人がいるが、みんなきれいなのである。
どの人にもそれぞれの美しさがあって(一部例外あり)、へえといま感心している。
うっかりすると「きれいですね」と不穏なことを言ってしまいかねないところがある。
油断してベトナム人女子ふたりに思わず言ってしまったことさえある。
時給850円のためか、男女ともに専業バイトはあまり自信のない人が多いような気がする。
自信がない人の魅力にひかれて、このバイトを続けているのかもしれない。
ものすごく傲慢な話に聞こえるかもしれないが、
「あなたはきれいなんだからもっと自信を持ってください。
あなたの美しさをわたしは知っています」と声をかけたい人がいくらでもいる。

わたしは恋愛のネガティブな面ばかりに目が行っていたようなところがある。
恋愛は男女がお互いをコントロールしあう不自由なものだ。
いちゃいちゃしているのって周囲に見せつけているみたいで不快だ。
しかし、恋愛にもまたいい面があることを山田太一ドラマ「同棲時代」に教わる。
孤独を乗り越えるのは恋愛なのかもしれない(むろん唯一方法ではない)。
人間を変えられるのは恋愛なのかもしれない(むろん唯一方法ではない)。
孤独は悪いことばかりではないし変化がいいものばかりとはかぎらないが、
ならばおなじ理屈で通俗恋愛もそうバカにするものではないのかもしれない。
極めて通俗的に知り合い寝た男女ふたりの会話をシナリオ雑誌から抜粋する。
イラストレーターを目指す次郎(沢田研二)、旅行会社に勤める今日子(梶芽衣子)――。

◯次郎の部屋
   なるべく裸体に近い姿のラブシーン
   音楽で美しく
   ―O・L―
   事後、二人、動かないで、天井を見ている、
   音楽の余韻、長く尾をひいて、沈黙。
次郎「今日子、この間、もっとぼくに威ばれって言ったよな」
今日子「(息のように)うん」
次郎「自分を小さく思いすぎてるって言ったな」
今日子「(うなずく)」
次郎「その通りだよ」
今日子「ううん、私、次郎みたいに、本当にやりたいことを持ってる人、好き。
 はじめて逢ったわ」
次郎「ぼくは卑屈すぎる時がある。自分で自分がとても嫌な時がある。
 でも、そうしなきゃ生きて行けないなんて思い込んでいたんだ」
今日子「きっとそうなのよ。私は、世の中、知らないから、 
 えらそうなこと言ったんだわ」
次郎「そうじゃない。今日子に言われた時、ドキンとしたんだ」
今日子「はずかしいわ。私も、時々、とても卑屈よ」
次郎「(今日子を見て)そう(ちょっと髪にキスする)」
今日子「――」
次郎「卑屈な気持になったら、今日子を思い出す」
今日子「私も次郎を思い出す」
次郎「(抱きしめる)」


直後、今日子のナレーションで脚本家はこの会話の意味を
知的レベルの低い視聴者のためにわかりやすく説明する。
圧倒的多数派のバカを相手にしていることに作者はむかしから敏感だったのだろう。

「私は、次郎といると、自分が少しずつ成長していくような気がした。
 次郎も、自信が湧くといった」


だれかを世界にたったひとりだけの唯一存在としてお互いに認め合う。
そのことがどれほど自分に自信を持たせるか、成長させるか、伸ばすことになるか。
あなたはもっと威ばってもいい、卑屈になるな。
わたしにはそう伝えたい人がたくさんいるが、これは恋愛なのかどうか。
もうおっさんの身としては若い男女のとりもちくらいできたらという気分だ。
縁談を持ってくるお節介ばばあみたいな中年男性になってしまったようで、
自分で自分が嫌になる。嫌になっちゃうなあ、もう。

COMMENT

URL @
11/11 21:25
通俗恋愛かあ…. comment楽しいだけではダメですか?
Yonda? URL @
11/11 22:48
犬さんへ. 

なんでもいいと思いますよ。
太秦鳴門 URL @
11/12 21:12
. 恋の空騒ぎ!








 

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