ありがた迷惑

バイト先で本のピッキングをさせていただいていると
(公開募集仕事内容なのに職場でこれに就けない人も多いらしい)、
新卒数年の男性社員さんがいきなり来て、
ドヤ顔で間口(持ち場)の本をわたしの代わりに取って箱に入れていく。
こういうことが何度もあって、どういう意味なのかわからなかった。
正直、人によってそれぞれ変わる本の置き方も無視して荒らしていくので、
ここだけの話になるが来るたびに迷惑していた。
本の置き方というものがそれぞれあって、それを変えられてしまうと直すのが面倒極まりない。
きっと新卒正社員のプライドからコントロール感(支配願望)を満たしたいのだろうと思っていた。
「おれはおまえよりも立場が上だし仕事ができるのを見よ」と言いたいのかとばかり。
ぶっちゃけ、一度その社員さんの誤ピックがわたしのミスになったことがあった。
めったに出ない本だったのでよく覚えていたのである。そのときは、まあ、そんなものかと。
そもそもわたしは誤ピックが多いから一度くらいのミスが増えてもなんでもない、あはっ。

今日3ヶ月の謎がようやく解けたのである。
忙しいピッキングの最中にまた新卒数年の正社員さんが間口(持ち場)に来て、
「おれ仕事ができるもんね自慢(←こちらの誤った主観)」をする。
バイト先では自己主張をしないと決めていたが、
身分を考えずに思っていたことを申し上げてしまう。
社員さんが横にいると見張られているようでかえって数を間違えてしまう。
ふたりでひとつの箱に本を入れるのは混乱の原因であります。
そのときの回答が衝撃的だった。

「なら、もう助けてあげないよ!」

ああ、そうだったのか。あれはこの自信満々の社員さんの親切だったのかあ。
すっかり嫌がらせに近いものだと勘違いしていた。
本当に他人の考えていることはわからない。
しかし、呼吸の合う人もいるのである。
おなじバイト先にすごい好きなベトナム人の若い男の子がいる。
恥ずかしい話だが、一度この子の隣でピッキングをしているとき、
長いあいだ苦しんでいた個人的なトラウマのようなものが消えていくのを感じて
落涙しそうになったことがある。
本のタイトルの一部の「笑顔」を指して「これはなんと読むのか」と聞かれた。
とても笑顔がすてきなベトナム人の男の子だ。
この子がピッキングの隣にいたらなぜか心が通じ合っているから早くできる。
お互いにしてほしいことが言葉を介さずに理解できるのである。
あうんの呼吸で通じ合っているからうまくいくのである。

最初、この子の隣に入ったときはお互い何人だかわからないから、
やたら人懐っこい彼に英語や中国語で応じたものである。
しばらくはわたしのことを中国人だと思っていたようだ。
先日だが深夜、帰宅途中、遠目にその子の姿を見かけたことがある。
道端の葉っぱのにおいをさもめずらしそうにかいでいた。あえて声をかけなかった。
ベトナムからよく知らぬ国に来て日本語を学びながら働いているってどんな気分だろう。
一度、その男の子が自分はこの女の子が好きだと、
おなじ職場のベトナム人の女の子の写真を携帯で見せてくれたことがある。
異論はあると思うが、あらゆる国籍をふくめていまのバイト先でいちばんの美少女であった。

かつてその男の子に「ありがた迷惑」になることを恐れながら、
百円ショップで売っている「紐切りカッター」をプレゼントしたことがある。
負担に感じさせたらと案じていたが、とてもいい笑顔で受け取ってくれた。
「ありがた迷惑」を恐れてはいけないのかもしれない。
Hさんという古参バイト女性がいて、この人のピッキングがとても好きである。
急がせるピピピという音が鳴ってもまったく気にせず自分のペースで仕事をするのである。
もちろん、わたしとおなじでよく知らぬ他人に間口(持ち場)に入られるのを嫌がっている。
この人が隣だとまったく横を気にしないでいいし、
気にされないので(こっちのほうが嬉しい!)楽なことこの上ない。
Hさんから仕事を教わったことは一度もないが(話したこともない)、
あんがいいちばんピッキングとはなんぞやを教えてくれた恩人なのかもしれない。
バイトは明日辞めるかもしれないし、1年続けるかもしれないし、それはわからない。
もちろん、本当にしたいことは書籍出荷のバイトではない。
見知らぬ他人からの助言は「ありがた迷惑」なのでコメント欄での人生指南はご遠慮ください。
ご意見がございましたら実名記入のメールでお願いします。

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