うめざわしゅんってだれ?

まえにも書いたが月刊スピリッツに掲載された、
うめざわしゅんの「一匹と九十九匹と」最終話がすごすぎるのである。
漫画にここまで揺さぶられることがあるとは思わなかった。
作者についてネットで検索しまくった。
というのもトイレに漫画を置いているのだが、
毎日「一匹と九十九匹と」最終話を読んでしまうのだから。
これではいつまで経ってもほかの連載が読めないではないか。

「一匹と九十九匹と」最終話は絶望の物語である。
主人公は26歳のアルバイト男性。
高校生のころに6歳の少女に性的暴行しようとした前科がある。
いまはうつ病を発症している。つねに自殺のことを考えている。
性犯罪を起こした自分のせいで両親は離婚をした。いまはアパートで母親とふたり暮らし。
ほんものの一匹である。九十九匹ではなく一匹だ。
男の持って生まれた強い性癖(ロリコン)は変わらないから、
いまでも少女暴行事件を起こしかねないという自覚がある。
これは究極の問題だと思う。自殺はいけないというのはきれいごとではないか。
少女を無理やり犯すような性的嗜好の持ち主は死んだほうがいいのではないか。

うつ病の男のまえに高校の同級生だったというリア充の天然女性が現われる。
彼女に救われるとか、そんな甘っちょろい世界ではない!
かつての同級生にそそのかされて、10年まえ自分が性的悪戯をした少女に謝罪しに行く。
和解なんて甘っちょろいことは起こらない。
いまは高校生になった少女から10年まえのことは決して許さないとにらまれる。
クリスマス直前である。みんな幸福そうである。
イルミネーションを見る前科一般のロリコン男と、同級生のリア充女性――。
女はあっけらかんとして言う。いまあたしたちが見ている光景ってぜんぜん違うんだろうね。
あはっ、あたし、人生ちょー楽しい。これからもきっといいことばかりあるんだろうなあ。
じゃあ、いまからイケメン編集者の彼氏とデートだから、と女は去っていく。

なんの救いもないのだろうか。いな、作者うめざわしゅんは最後に救いを書いている。
少女への性犯罪の前科のある自殺志願者のロリコン男が変わるのだ。
彼の世界の見方が変わるのである。
他人がまざまざとリアルに彼の目に映る。みんなそれぞれなにかを抱えているのではないか。
漫画家うめざわしゅんはクリスマスを生きるあまたの老若男女の顔を
じつに巧みに描写する(一見の価値ありですぞ)。
みんなどこかで絶望しているのである。自分は自分でしかありえないことに。
どうしたって自分という存在は超えられないことに。克己かなわぬことに。
携帯電話が鳴る。母親からだ。男はいまから帰ると告げ九十九匹の一員になる。
だれもが九十九匹ではなく一匹でしかないこと、それは絶望であり同時に希望なのだろう。

※たまたま作者とおなじことを考えていたので驚いた↓
過去ブログ記事「生きていたら」
http://yondance.blog25.fc2.com/blog-entry-3480.html

本当にいい漫画を読んだと思う。
それまで今年(このジャンルには非常に疎い)わたしが読んだ漫画で
いちばんよかったのは村上かつらの「ラッキー」だったが(古くてすんません)、
「一匹と九十九匹と」が最高記録を更新した。
ちなみに文芸評論家の福田恆存に有名な同タイトルのエッセイがある。

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