「空海入門」

「空海入門」(ひろさちや/中公文庫)

→歴史上よくわかっていない人ほど
自分を投影して好き勝手なお話を作れるからおもしろいのだろう。
そうではなかったことは証明できないのである。
ひろさちやさんも本書で自由気ままに自分の思想を空海に託して語っている。
空海といえば梅原猛さんが河合隼雄との対談でおもしろいことを言っていた。
空海は密教を中国で恵果から教わったことになっている。
この恵果は密教にいちばん詳しい不空のいちばん弟子である。
梅原さんは、これらすべてを空海による創作だと言い放っていた。
出世するために壮大な嘘をついたと言うのである。

ひろさちやさんも本書で空海を食わせ者だと言っているのがおもしろい。
ひろさんも梅原さんもどことなく食わせ者の香りがするのもさらにおもしろい。
人は空海の思想なら納得するというのなら、
空海のほうを偽造すればいいと考えるのが食わせ者の特徴である。
空海に便乗して(権威を借りて)自分を売りだせばいいのである。
河合隼雄がユングの名義を借りてやったことは、
じつはおおむかしに空海がやったことだったかもしれないのだ。
ひろさんは空海の幸運をこう分析している。空海のなにがよかったか。
あれこれ迷わず運命の流れに任せてしまったところがよかった。
どうしたら空海のように没主体的に任せた姿勢で生きられるか。

「無欲と正直――。この二つの条件がないと没主体的には生きていけない。
そして、空海には、二つの条件が完全にそなわっていた。
そればかりか、彼は「自分は仏陀である」と信じていた。
仏陀になりきって生きていたのだから、彼は仏陀なのだ。
そして、仏陀であれば、すべてがうまくいくはずである。
悪くなりようがないという、決定的な信念が彼にあった。
だから、うまくいったのだ」(P74)


30年以上まえの本だからか、
いまは脱力系ライターのひろさんが自己啓発チックなことを言っているのがおもしろい。
茶化したようだが、うまくいくことを「信じる」というのはたいせつだと思う。
この「信じる」ができないがために、われわれはよけいな心配や不安にとりつかれ、
かえって自滅していくようなところがあるような気がする。
人から見たらゴミのようなものでも、なにかを信じたらなにかが変わるのではないか。

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