知らぬが仏

危ない遊びほどわくわくするおもしろいものはなかなかないだろう。
みなさんも子どものころに危ない遊びをした思い出がありませんか?
麻薬的と言ってもいいぞくぞくするほどの愉楽が危ない遊びにはあるのである。
みなさんがいまこうして生きているということは、
少年少女時代の危ない遊びで実際にそれほど危険な目には遭わなかったということである。
危ない遊びをしている子どもは、その遊びが危ないことをよくわかっていないことが多い。
このために危ない遊びをしても実際にはけがをしたりはしていないのだと思う。
危ない遊びをしている子どもたちに大人が「危ない!」と注意してしまったらどうなるか。
事故が生じる危険率は飛躍的に上昇するのではないだろうか。
危ないことを知ってしまったら子どもの心にも不安が生じるから思いきりが悪くなる。
結果として事故率も高まるのではないかと思うのである。

ある人が鼻歌まじりに橋を渡っているとする。
周囲がざわざわしているけれど、男はまったく気にせず橋を渡り終える。
知り合いが彼に近寄ってくる。「あれは危ない橋だったんだぞ」と教えてくれる。
男は顔が真っ青になり、いま渡ってきた橋を振り返ると彼の子どもの姿が見える。
父親を追いかけて子どもが橋を駆け足で渡ってきている。
思わず男は「おい、そこは危ない橋だぞ!」と叫んでしまう。
子どもは父の声を聞いて立ち止まり、つい足もとを見てしまう。
橋はところどころ壊れかかっており、気づいたら子どもは穴に吸い寄せられ落下してしまう。
子どもは川の急な流れに呑み込まれ下流のほうで水死体として発見された。
このとき男はどうすればよかったのか。
子どもが橋を渡り終えるまではハラハラしながらも見守るべきだったのである。
危ない橋であることを教えないほうがよかった。
もちろん、危ない橋であることを教えてうまくいくパターンもあるだろうけれども。

いまは世相として「危ない、危ない」と不安をあおるようなことを言い過ぎる気がする。
どこの公園にも「危ない遊びは禁止」の注意書きが乱立している。
社会の雰囲気としてお互いに「危ない!」
と注意しあって息苦しくなっているようなところがないだろうか。
タバコの煙は危ない。血圧がちょっとでも高いと危ない。中国産は危険、食べるな。
あれも危ない、これも危ない、おっかなびっくり平均ばかり意識して生きている。
タレントがわずかでも危ない火遊びをしようものならこれでもかと叩く。
みんな危ない橋は渡らない。危険率が1%もあれば、それは立派な危ない橋である。
危ないと知らなければ渡りきれるような橋でもすぐに危ないと周囲が教えて引き返させてしまう。
「知らぬが仏」というのは、いまの情報化社会でなお安心を得るための格言ではないか。
「知らぬが仏」は嘲弄対象ではなく、目指すべき安心立命の境地とも言いうるわけだ。
危ない橋を危ない橋だと知ってしまったらまず凡人は渡ることができないのである。
いくら危ない遊びほどおもしろいものはないことを子ども時代に知っていたとしてもだ。
みんなが眉をひそめるような大人になりきれない未熟な男女は、
ときとしてそうとは知らず危ない橋を見事に渡りきってしまうのだからおもしろい。

COMMENT

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02/14 12:57
名無し. テレビ朝日開局55周年記念ドラマ「時は立ちどまらない」(22日後9・00)の
制作発表会見が12日、都内のホテルで行われ、脚本を手掛けた山田太一氏(79)や
主演の中井貴一(52)ら出演者がソチ五輪で活躍する日本選手たちに人生の
先輩としてアドバイスを送った。
 山田氏は「若い時に頂点に行きすぎると、後の人生が辛くなる。次点ぐらいが
いいんじゃないかな。メダル取らなきゃ悲劇みたいに言うのは正確じゃない。
人生はそんなに簡単じゃない。あまり早く勝利しないでください」
Yonda? URL @
02/16 00:15
名無しさんへ. 

山田氏はまた空気の読めないことをおっしゃっていますね。
ドラマ視聴を忘れないようにしようと思いました。
ドラマ録画も、です。
わざわざコメント、ありがとうございます。








 

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