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2005/08/09(火) 17:35:10

「債鬼」(ストリンドベルク/楠山正雄訳/「近代劇選集3」新潮社)絶版

→またまた読了最古本の記録更新。
大正11年発行の戯曲集である。
この「債鬼」は、ストリンドベリが自身の自然主義戯曲の中での最高峰とみなしたもの。
(わたしは「令嬢ジュリー」が自然主義一幕物の最高傑作と思います。
ストリンドベリだけではなく、いままで読んだ自然主義戯曲のナンバー1)。

国語辞典で調べたら、債鬼(さいき)は借金取りという意味。
その時点でまたかとため息がでる。
人生を幸福と不幸の貸借関係とのみ見るストリンドベリ……。
たしかにそうなんだけど、うーん。
たとえば現代では臓器移植なんて典型的。
だれかが死んだおかげで生き延びるものがいる。
それに、ひとりが臓器移植手術を受けるということは、
その選にもれた患者が多数いるということなのだから。

さてこの「債鬼」である。
登場するのは一組の芸術家夫妻、その妻の元夫の計3人。
女1人、男2人。
貸借関係を清算しようと激しくやりあうのはストリンドベリの他の戯曲とおなじ。
元夫のグスターフはなぜこの夫妻のもとに現れたのか。かれはいう。

「うん、おれはお前(元妻)の盗んだものをとり返しに来たのだ。
お前にやったものを取返しに来たのだ」(P326)


なぜなら――。

「男の愛するといふことは、与へることだ。女の愛するといふのは取ることだ――。
それでわたしは与へて、与へて、与へ尽くしてしまったのだ」(P293)


愛の破産者グスターフの到達した結婚観を聞け! ストリンドベリ、魂の叫びを!

「女房は亭主の子供だからなあ、
それがさうでないと、亭主が女房の子供になってしまふ」(P314)

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