先輩は偉い

いまさらそんなことを知ったのかとバカにされそうだが、
日本文化というのは、つまりその「先輩は偉い」ということになるのではないかしら。
先輩は偉い。どんな分野でも先輩を立てなければならない。先輩に逆らうな。
あたまも悪いし、からきしその世界とは無関係なので知ったかぶって放言すると、
どうやら学問の世界では先行研究というのが重視されるらしい。
なにか新発見をしても、いちおう先行研究を参照したふりをしないと認められない。
これは嘘つきの河合隼雄さんが小声で言っていたことだけれど、
ぶっちゃけ先行研究を読むのが面倒だ。
ある発表をしても先行研究をふまえていないと、あーだこーだ言われる。
もしくは礼儀知らずとみなされ、まったく相手にされない。
河合隼雄さんはある時期、宮沢賢治について本格的に論じたかったらしいが、
先行研究がたくさんありすぎるので(心理療法で)時間がない自分は困ると語っていた。
どうせ先行研究なんて読んだところで自分の考えは変わらないのに、とも(ガチだよなあ)。
重要なので繰り返すが、河合さんの場合、結局先行研究を読んでも自分の考えは変わらない。

こんな本当のことを対談とはいえぽろっと言ってしまうから氏はおもしろいのである。
たぶん河合隼雄さんが鎌倉時代のマイナー坊主、
明恵を好きになったのは比較的先行研究が少なかったからではないか。
先行研究(先輩)を重んじろとはどういうことか?
後輩ほど不利になるということである。
後の時代に生まれたものほど上に縛られて窮屈である。
要するに、一番乗りがもっともいい。
勇気を出して未開拓の処女地に分け入るのがなによりも実りがある。
とはいえ、かりにそこでなにかを発見しても、
権威ある先行者がいないためにその価値を認めてもらえない危険性が高い。
確率はとても低いが、運さえよければ自分がその分野の権威になることができることもある。
わたしがストリンドベリや踊り念仏の一遍を好きなのは、
他と比べてまだあまり手垢がついていないからかもしれない。
ちなみに、むかしは新刊好きだったが、いまは古本でも新本でもこだわらない。
妻の過去の男に嫉妬している夫は先輩を敬うという日本文化を忘れた礼儀知らずである。

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