「三日間」

「三日間」(山田太一/ラインブックス) *再読

→テレビドラマシナリオ。昭和57年放送作品。東芝日曜劇場。
山田太一ドラマの笑いはどこから発生するのだろう。
シナリオを読みながらおかしくて実際に笑い転げているのだから。
このホームドラマではボケかかったおばあさんがいい。
ふだんは自分は絶対にボケてなんていないと言い張っている老女である。
ところが、家族がみんな集まったときに本当のことを言ってしまう。
「かくしてたけどね、この頃、ぼけて来てるんだよ」
実際はちっとも隠されていないのである。
みんなほとんど全員おばあさんのボケが始まっていることに気づいている。
いままでボケを否定していた当人が、「かくしてたけどね、この頃、ぼけて来てるんだよ」。
笑いがとまらないではないか。
みんなは必死でボケた祖母をフォローしようとする。
父「年寄りは多少ぼけるさ」
母「大丈夫です、お母さん。ちっともぼけてなんかいません」
姉「そうよ。全然普通よう」
弟「そういう心配するってことが、ぼけてない証拠だよ。大丈夫。元気出して」

本当と嘘と笑いの関係がじつによく現われているような気がする。
嘘と本当の落差が観客を笑わせるのかもしれない。
世間では本当のことを言ってはいけないことになっている。
だから、世間では嘘が貨幣のように流通しているが、みなそれらは偽札だと気づいている。
たとえ世間から偽札をもらっても庶民は信じないのである。
しかし、仲間内ではこっそり本当を確認する。
ボランティアをやっているって、あいつ食えているのかね。
東大くん、女の子にもてなさそう。
肩書は多いけれど、あの人、高卒でしょう?
しかし、この仲間内に当人が来たらがらりと対応を変えるのである。
当人が本当のことを言ったら大慌てでとめるだろう。
「ボランティアをしてますけど無職で」(人助けは立派じゃない!)
「東大出てますけど、もてません」(そんなことない! もてそう!)
「どうせ僕、高卒ですから」(いまは大学なんて意味ないわよ! 能力次第よ!)
裏表のある人間のおもしろさを山田太一さんはじつによく知っている。
本当のことを言わないことがやさしさであることも。

(関連)「三日間」
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