「それからの冬」

「それからの冬」(山田太一/ラインブックス) *再読

→テレビドラマシナリオ。平成3年放送作品。東芝日曜劇場。
山田太一さんは世間の怖さをよく知っているのである。
一見やさしそうなおばさんに「人目なんて気にしないほうがいいわよ」と言われて、
その発言の裏側を読み取れず世間知らずのあまり、うっかりもし勝手なことをしたら、
陰ではおなじおばさんが「あの人、常識がなさすぎない?」などと
口汚く悪評を触れ回って歩くことになるのをよく知っている。
人間、そんなもんだぞ、
と臆病なまでに用心深く笑顔の裏で他人を警戒しているところがある。
世間ってものは甘くねえぞ。
人間なんてもんは「収入、学歴、ルックス」でしか判断されない。
うっかり甘いことを言ったら、すぐおばさんたちの悪口の餌食になる。
人と違ったことをしたら、世間てえものは袋叩きにしてくるもんだ。
だからこそ、このドラマに出てくるような女性を造形してしまうのだろう。
世間体を気にしない女性だ。死んだ親友の、まさにその夫を愛してしまう。
婚約者らしきものまでいるにもかかわらずである。
妻を亡くしたばかりの男に向かって、こんな気のあるようなことを言って誘う。

「(いまの交際相手は)収入だって、学歴だって、ルックスだって、
ほんとに丁度いいのに、どうして迷っているのか、自分が分らない」(P158)


たぶんこのドラマは高収入、高学歴、高ルックスを超える愛を描いたのだろう。
現実がそうだから、ではなく、おそらく現実にはこんなことがないからだろう。
しつこいが、男というのは「収入、学歴、ルックス」である。
人間は収入よりもたいせつなものがある、なんてきれいごとを言ったら世間様から笑われる。
学歴不問とか言っている一流会社に、ほんとうに高校中退が行ったら、どんなに笑われるか。
この人はルックスで選んだんじゃないの、なんていくら言っても、
あなたがいなくなった瞬間に女連中は男のルックスをバカにするものなのである。
こういう世間をよく知っているから山田太一ドラマはおもしろいのだろう。
世間のきれいごとを真に受け行動したら、
まさにその世間様から後ろ指をさされて嘲笑されるのである。

(関連)「それからの冬」
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