「居酒屋百名山」

「居酒屋百名山」(太田和彦/新潮文庫)

→いまや居酒屋評論の最高権威となった太田和彦氏の文庫最新刊を酒をのみながら読む。
むかしから著者のファンだったけれども、人は変わるものだとつくづく思う。
居酒屋の紹介の仕方がやけに俗っぽくなっているので好みがわかれるところだろう。
この店は有名文化人のだれそれがひいきにしていたという紹介ばかりなのである。
それもかなりくどく有名文化人の名前を連呼するのは、
読者によってはいろいろ思うところがある人がいてもおかしくない。
居酒屋評論の権威は、彼が評価した店から高級食材が毎年送られてくるという。
なぜなら著者のガイド本で客足が大幅に増加したから、その感謝の表明である。
なにかしてもらったらお礼をするのは庶民の常識だから悪く言いたいわけではない。
著者は居酒屋業界ではもう顔が割れているため特別扱いも多いらしい。
こういう権威になってしまったことにあんがい著者は嫌気が差しているのかもしれない。
いや、そうであってもらいたい。
権威なんかになりたがる人ではないですよね、太田さん?

本書を読んで自分の向上心のなさを深く反省した。
酒は酔えればいいと紙パックの日本酒で満足するのは、
たとえるならば安っぽいテレビドラマに感動するようなもので、
人はやはり古典文学のような高級ブランド日本酒を求めなくてはならないのだろう。
しかし、古典文学は激安だけれど、名高い日本酒はちと値が張りすぎるのではないか。
いや、そうではない。わたしは間違えている。
上質な人間は有名人のひいきにしている店で高級珍味を食らい、
これはどこそこのだね? とピタリ言い当て、さすがお目が高いと言われなければならない。
自分が好きな安いものを飲み食いするのではなく、
せっかく食に恵まれた現代の日本に生まれてきたのなら
ガイド本の舌を信用して日々研鑽を積まなくてどうする? 一流の人間は一流の店に通う。
人間も食べ物も酒も一流、二流、三流がある。学校、会社も一流、二流、三流があるように。
一流の居酒屋エッセイを読み、いたく刺激を受ける。このままではいけない。

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