「母たることは地獄のごとく」

「母たることは地獄のごとく」(早坂暁/大和書房)

→テレビドラマシナリオ。昭和56年放送作品。日本テレビ。
不謹慎な話だが、むかしはドロドロっとした不幸があったからおもしろいよね。
いまとは不幸のレベルがぜんぜん違うわけ。
親に愛されなくて自分が見つからなくてリストカットする女性の不幸はチープすぎる。
そりゃあ、ご本人は苦しいのでしょうけれど。苦しみに高低はないのでしょうけれど。
このドラマのテーマは、戦後の混血児だ。
米軍相手のパンパン(売春婦)が産み落とし捨てた混血児の問題を取り扱っている。
母親から捨てられて孤児院で育った黒人とのハーフとか、きっついんだろうな。
そういう人に比べたら、もういまの人の不幸なんてどれも安っぽくて問題にならない。
いやいや、ふつうの人たちの安っぽいありきたりな悩みにも多様な色彩があって、
たとえば山田太一さんはそういう部分を絶妙にうまく描写するわけだが。
逆にディープな不幸を描くのは、視聴者に共感してもらいやすいから楽という面もあろう。
人間の不幸にも深浅や貴賤はあるのだろうか。
底の深さ浅さに関係なく、どうしようもない悲しみに耐えている人は美しいと思う。
そういう人たちの独特なそれぞれの美しさを描くことでは早坂暁も山田太一もおなじである。

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