「美しいお経」

「美しいお経」(瀬戸内寂聴/嶋中書店)

→国民的人気作家の瀬戸内寂聴さんが好きなお経の文句や高僧の名言を集めたもの。
本来ならばだれもが自分専用のこういう手帳を持っていたらいいのだろうが、
寂聴さんのファンのような無学なおばさんはなかなかそうもいかないのだろう。
あんまり寂聴さんとは縁がなかったけれど、この人は常識人なのね。
格がおなじくらいの人で比べると河合隼雄さんのようにぶっ飛んだことをぜんぜん言わない。
自殺をしちゃいけない。人も殺してはダメ。命のありがたさを理解しなさい。
暇があったら汗水流して働け。プラス思考は絶対正義。みんなプラス思考になろう。
強く願えばいつか絶対に夢はかなう。本気になればほしいものはかならず手に入る。
まあ、このあたりが国民的人気を得る尼さんたるゆえんだろう。
世間の価値観をまるっきり疑わず全肯定しているところがおばさんに人気なのだと思う。
寂庵の説法の動画を見ると、ぽつんぽつんといるおじさんの肩身が狭そうで笑える。
しかし、カルト僧の一遍のファンである寂聴さんが世間の善悪をまったく疑わず、
そのまま自分の善悪にしてしまうような人だったとは意外である。
変な言い方をすると世間の善悪ほど安定しているものはないから、
悩みを持って寂庵に行くような女性には寂聴さんの安定感が救いになるのだろう。
この人の安定感に救われた人は多いだろうから否定されるべきことではない。
本書から空海さんの言葉を引いておこう。

「心暗きときは、すなわち遇うところことごとく禍(わざわい)なり
眼(まなこ)明らかなれば、途(みち)に触れてみな宝なり」(空海「性霊集」)


心がどんよりしているときは人も邪悪に見えてしまうもの。
明るくしていたら目に入るものみな宝玉のごとくですよ!
じゃあ、どうしたら明るくなれるのか。
たぶんそれぞれ好きな呪文のようなものを集めるしかないのだろう。
まさしく本書で寂聴さんがやったようにである。

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