人生指南の嘘

人間の限界は、自分の人生しか知りえないことである。
にもかかわらず、人生で体験したことを普遍的に当てはまることだと錯覚してしまうところだ。
「自分がこうだったんだから、他人もそうだろう」という思い込みから逃れるのは難しい。
どうしてか、そうじゃないかもしれないとはなかなか思えない。
どんなことでも起こりうるということに想像が及ばない。
俗に言うところの成功をおさめた高齢者ほど始末が悪い。
自分は人生をわかったと思ってしまうからである。
本来はだれもわからないはずの人生を、だ。
大成功したもののなかには私財を投げ打ち、
田舎に自分を教祖とする共同体をつくって大勢の若者に説教する先生がおられる。
自分はいいことをしていると思っている。
彼がなによりも好きなのは人生指南(人生相談)だ。
他人の人生をコントロールするのが楽しくて仕方ない。
他人を支配するのは楽しい。他人を指導するのは楽しい。他人に命令するのは楽しい。
なぜなら自分は偉いということが露骨に示せるからだ。
自分は人生の答えがわかったと思っている。
このため自信たっぷりにたとえば北海道で若者に農作業をやらせる。
別解があるとは思えない。
なぜなら自分の出世した人生は正しく、ならば自分は他人を導く使命があると思ってしまう。
おれは間違っていない。おれの言うとおりにしたら間違いはない。
おれはすべてわかっている。人生相談はおれにまかせろ。なんでもおれに聞いてくれ。
説教が大好きな大物脚本家の彼はむかし血縁の少女から芸能界に入りたいと相談された。
果たしてそのときの彼の答えは正しかったのだろうか。
もう余命少ないだろう愛煙家で東大卒の男はこれからも偉そうに説教しつづけるのか。
彼は正直にいまになって人生がわからなくなったと白状しないのだろうか。
ぼくはまだ人生がわからない。最後まで死ぬまでわからないだろう。
死ぬ少しまえまで、こうだったのかという発見があるのではないかと思う。
そうでないかもしれない。わかったと思うときが来るかもしれない。わからない。わからない。

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