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2005/08/02(火) 11:58:54

「夢の劇」(ストリンドベリ/毛利三彌訳/白水社「現代世界演劇3」)絶版

→ストリンドベリはこの戯曲で悪夢を再現しようと試みた。
夢を見よう夢ではなく、夜に見る夢のほうの。あの目がさめるとほっとする類の悪夢を。
天才(キチガイ)というのはとてつもないことを考えます。
この戯曲に筋(すじ)のようなものはない。だから不条理ですらありえない。
意味不明。支離滅裂。こんな表現をするほかない。読了するのはかなりの労苦。
が、骨折り損のくたびれもうけ、というわけでもないのである。
なんとも形容しがたい重たい不快感がのこる。やりきれなさ。
シュークリームのような童話劇にあふれた現代ではかえって貴重かもしれない。
それはまさに悪夢である。内容は思い出せなくとも衝撃だけは忘れられないのだから。
どんな雰囲気か。引用。

(夫)「共同生活とは責め苦だよ。一方の楽しみは他方の苦しみ」
(妻)「人間ってあわれね」
(夫)「それがわかったか?」


この夫妻は(夢の中ゆえ)また別のものにすがたを変え相互に嘆きつづける。
人間は傷つけあうもの。幸福なんてどこにもないこと。
仮に幸福があるとしても、それは他人の不幸からもたらされる慰めにすぎないこと。

引用をつづける。

(男1)「2かける2は……2。
それを最高の証明方式である類推法で証明してみます。
いいですか……1かける1は1。ゆえに2かける2は2! 
一方にあてはまれば他方にあてはまるからです。」
(筆者注:人間がひとりのときの苦しみと、ふたりのときの苦しみを暗示か?)
(男2)「その証明法は論理学に完全に適応している。しかし答えは誤りだ」


(男3)「そして、きみの不幸の上にぼくの幸福が築かれると思うのかい?」
(男4)「われわれはあわれだ――われわれみんな!」
(全員)「(天に手をさしのべ、不協和音のような苦痛の叫びをあげる)ああ!」
(女2)「永遠なる父よ! この人たちの声を聞いてください!
    人生は苦痛に満ち、人間はあわれです」
(全員)「(前と同様)ああ!」


ストリンドベリの絶叫が聞こえてきませんか。
人生は闘争である! 人間は憎悪しあう、苦しみの連続となろうとも!

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