「狂いの構造」

「狂いの構造」(春日武彦・平山夢明/扶桑社新書)

→精神科医とその元患者だったらしい(いまも?)ホラー作家の対談である。
ファンだから批判めいたことは言いたくないけれど、
春日武彦氏もけっこういいかげんなところがある。
ほかの著作でもこのエピソードを見かけた記憶があるけれど、
いくら精神科医でもテレビで見ただけでだれかを精神病だと診断するのはいかがなものか。
春日医師は、「笑っていいとも!」でジャック事件を起こした
作家の有吉佐和子を躁病だと決めつけている(P138)。
しかし、小谷野敦氏の本によると、あれはすべてテレビ局の「やらせ」だったらしい。
橋本治氏が番組担当者から聞いた裏事情をエッセイに書いているとのこと。
(以上は小谷野敦氏「友達がいないということ」P47による)

とはいえ、本書で繰り広げられる精神科医の本音は楽しい。
精神科医がおすすめするいちばん楽な自殺方法は練炭とのこと。
あまりにしんどい話を聞いたとき、春日医師は飼っている猫に告白するらしい。
精神が健全な証拠は秘密を保てるかどうかだという。
実際、統合失調症の妄想はどれも秘密をめぐってのものとなる。
精神科領域の病気を「治す」ということにも、春日武彦医師はかなり懐疑的である。
いまから紹介するのは身もふたもない意見だけど、
おそらくこのあたりが長年臨床をやった精神科医の本音なのだろう。
この程度に思っていなかったら、精神科の勤務医なんてやってられないのかもしれない。

「だから、俺なんか、人格障害のヤツなんかを扱ってても、
治そうという気もないし、治ると思ってもないし。
じゃあどうするかって、相手が年取るのを待つわけだから。
その間をまあ、そんなに外さないでくれりゃあいいと思ってるんだけど」(P58)


「(前略)この商売を長くやってると、一応「患者の幸福」をゴールと考えるとさ、
その幸福をどの辺に見定めるかっていうのがものすごく難しくて。
やはり、本人だけでなくて家族単位として考えないとダメだから……。
だいたい、狂人なんてさ、単体だと「これは困った」ってことになるけれど、
家の中に狂人が出たから、ほかの家族がそれに対抗するために結束して
仲がよくなりましたというようなこともあるからね。あるいは
「そういう困ったヤツが出たんで、やっと生き甲斐を見つけました」とかさ。
全体として眺めると、少なくとも多数決でいえばさ、
「こいつはおかしいほうが世のため」
みたいなことがいくらでもあったりするからね」(P79)


いやあ、ガチっすね、春日さん。
よくいままで患者に刺されなかったと運のよさに感心する。
そういえば別の著書で医者の才能は運のよさだと語っておられた記憶がある。

COMMENT









 

TRACKBACK http://yondance.blog25.fc2.com/tb.php/3372-7ade77ec