「名医のウソ」

「名医のウソ」(児玉知之/新潮新書)

→そもそも名医にかかりたいという人の気持がわからない。
たとえ99%の患者をよくする名医にかかっても、
自分が1%になってしまったら意味がないではないか。
反対によしんば悪評が高いヤブ医者でも自分が痛苦から解放されたらそれで大満足。
医師の国家資格をお持ちの著者の指摘するように、
たしかにいまは名医にかかるのもヤブにかかるのも同金額で不公平とも言えるが、
名医で悪化する人、ヤブで治る人もいることを考えると、
名医などしょせんは確率統計の問題に過ぎないことがわかり、どうでもよくなる。
むろん本書がダメというのではなく、いい本だからいろいろ考えさせられたということだ。

本書からすると、いまの医者はふたつに分かれるのではないか。
自分の経験を重んじる医師と、エビデンス(統計データ=多数派情報)に従う医師だ。
よく読み込むと著者はどちらもそれぞれいいという立場のようだが、
やはり若いこともあり(わたしと同年齢)エビデンス重視の医師を評価している。
これは意地の悪い見方をすれば、
目のまえの患者よりデータ(統計)を見る医者がいい、と言っているのに近い。
言うまでもなく、優秀な著者は、
現実の患者というものは生ものでエビデンス通りにはいかないことも熟知しているのである。
通常用法とは違うが実際効果のある薬を処方する医師の存在も著者から教わったことだ。
わたしが医者にかかるのならば、エビデンスに盲目的に従うよりも、
多数派はどうでもいいから、こちらの苦痛を取り除いてくれそうな人がいい。
明らかに自分勝手だが、他の99人が治ってもわたしひとりが苦しいままの医者は敬遠する。
医師選択の基準は、好きか嫌いか、ウマが合うかどうかを最上に置こうと思う。
しつこいが、これもまた本書から学んだことである。

「実際の医学は、紋切型に、こうしたら必ずこうなるという世界ではなくて、
個体差、ばらつきをはらむ学問です。確かにどんな病気にもスタンダードな診断、
検査とそれに基づくスタンダードな治療は存在するのですが、確実に、
ある一定の割合でスタンダードからはずれる個人差、個体差が必ず存在します。
経験のある医者ほど、その個人差を目の当たりにしていて、
人間は千差万別なのだと肌身で感じています。
だからいくら自分の診断や、診療がよいものだと信じていても、
ある一定の割合で自分とはウマが合わない患者が出てくるということを、
やはり肌身で知っています」(P120)


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