「他人の女房」

「他人の女房」(源氏鶏太/集英社文庫)絶版

→死後完全に忘れられた大衆作家のサラリーマン短編小説集を冗談半分で読んでみる。
ウィキペディアで見て驚いたけれど直木賞作家・源氏鶏太の肩書はすごいね。
紫綬褒章のみならず勲三等瑞宝章まで取っているのか、やるなあ。
元大阪大学助教授の小谷野敦博士の悪影響で、
このところ人の肩書にばかり目が行く最低の人間になりつつあるので注意したい。
常務のお古をそうとは知らずに女房にした男が盗み聞きで真相を知ってしまい、
おまえはあいつに仕込まれていたのかと妻に怒りをぶつけるサラリーマンがよかった。
最後はなぜかこれが「人間の業だ」などと仲直りするのだが、
ずいぶん安っぽい「人間の業」だなと思いながらも、
こういう娯楽小説を愛したであろう昭和40年代のサラリーマンに思いをはせ、
いま殺伐とした平成を生きるぼくは微笑ましい気分になった。
上司からの依頼で愛人と別れさせることに成功するものの、
ひいきにされるのではなく、逆に秘密を知られていると疎まれ、
左遷される昭和の独身サラリーマン氏。
彼は「運が悪かったな」とだけ思い、なにも文句を言わずに僻地に飛んでいくのだが、
その自己主張なき雄姿はそれなりに格好いいと思った。
総じて思っていた程度の娯楽であった。
紫綬褒章作家の源氏鶏太は永久によみがえることはないだろう。
絶対に再評価をされない当時の人にのみ売れるものを書けるのもまた才能だと思う。
これは悪口や批判ではない。
本当に読んだという証拠に偉い人の小説から一文を抜いておく。

「サラリーマンなんて、そういう他人の不幸をよろこぶように出来ているんだ」(P134)

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