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「恋の火遊び/令嬢ジュリー」

2005/07/19(火) 17:37:33

「恋の火遊び/令嬢ジュリー」(ストリンドベリ/内田富夫訳/中央公論事業出版)

→ストリンドベリはイプセンと同時代のスウェーデンの作家。
戯曲で有名だが、小説や自然研究、錬金術研究などでも活躍した。
日本では大正時代に大ブームがあったが、戦後は完全に忘れられた作家。
いまでも作品をふつうに新刊書店で購入できるイプセンとは対照的。
ストリンドベリとはどんな作家かと一言でいうなら

キチガイ。

この一語につきる。
みずからの狂気との危うい緊張関係を芸術作品として昇華させる、
その腕ときたら人後に落ちない。
まさしく綱渡り的スリル。いまもっとも関心を持つ作家のうちのひとりである。
作品がぜんぶ絶版なため、古書店で掘り出すひそやかな愉しみもこの作家の魅力。

ところがである。今年の一月に新刊としてでてしまった。
それはそれで嬉しくないこともないのだが翻訳者がいささか。
訳者は文芸とはなんの縁もない元駐スウェーデン大使。
「楽しかったスウェーデン勤務の思い出を何かの形で残したいと願い」
と訳した理由を前書きで語る。
で、巻末にはお約束の訳者顔写真と詳細な略歴(もっと略しなさい!)。

まず「恋の火遊び」を読む。とんでもないわけです。
今まで読んできた本の訳者のすごさがようやくわかった。
素人とプロはかくもちがうのか。
戯曲は会話である。
しかしこれは日本語が会話になっていないのだから。
「令嬢ジュリー」を読むのはこれで3度目。
このひどい翻訳でも「令嬢ジュリー」のおもしろさには舌を巻く。

何度読んでも楽しめる戯曲というものがある。
「オイディプス王」「アンティゴネ」「ハムレット」「マクベス」「十二夜」「かもめ」。
これらはどれも3回以上読んでもまだ感動したもの。
いや、感動が深まったというほうが適切か。
今回、「令嬢ジュリー」が仲間入りした。
別の訳で近々再読したい。詳細はそのとき。

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