「お釈迦さまの肩へ」

「お釈迦さまの肩へ」(ひろさちや/光文社カッパブックス)

→宗教ライターのひろさちやさんにとって2000年12月に
1億7千万円の空き巣被害に遭ったのは決定的な人生体験だったのだろう。
たしかにこれ以降、やけくそとも思えるくらい過激な内容の本を書くようになっている。
人の気持はわからないけれど、1億7千万円を一夜にして失うってどんな気分なんだろ。
悟っちゃうレベルの体験だったりするのかも。
ぼくなんかさ、1万円損しただけでも1ヶ月は根に持つから。
その1億7千万倍の失意、落胆、絶望――「こんちくしょっ!」があったに違いない。
秀才だったひろさちやさんは64歳にしてたぶんはじめて、
「明日をも知れぬ」という言葉の意味を身をもって、切実な痛みとともに知ったわけだ。
いいことをしてもいいことはないし、空き巣は1億7千万円を一夜にして得る。
たとえ1億7千万円があったとしても明日にはどうなるかわからない。
うん、これは究極的な宗教体験に近いのではないか。
この空き巣事件を経て、ライターひろ氏の宗教レベルが上がったのは間違いない。
本書は1億7千万事件から1年も経たぬうちに書かれた本だ。
そう考えると以下の引用は体験に裏づけられた真実性が感じられる。

「最近、おばあさんたちの顔がずいぶん変わりました。
かつては、菩薩のような顔をした人が多くいて、
深くて立派なしわには酸いも甘いも刻まれていました。
つまり、「世の中はでたらめである」ということをわかっている人です。
彼女たちは、さまざまな人間模様を長い間見ています。
羽振りがよかったのに末路が哀れだった人。
小学校のときは洟(はな)たれ小僧で成績が悪かったが、出世した人。
大金持ちだが、家庭は不幸だった人。
お金はないけどいつも幸せそうな顔をしている人……。
つまり、努力と幸せはまったく関係ないこと、
また、世の中には絶対的な法則などなく、無秩序な、
しかも思いもよらぬことの連続であることを知っていました」(P21)


ひろさちやさんも64歳にしておなじことを理解してしまったのでしょう。
ならば、1億7千万の空き巣犯人は氏の人生にとって最大の知識(師匠)になるのでは?
なーんて、なるはずないよね、ごめんなさい、ひろ先生!
しかし、「世の中はでたらめである」というのは本当に真実だと同感する。

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